【10000PV突破!!!】自分と付き合わないなら死ぬと言ったヤンデレな超絶美少女が本当に死んだと思ったら蘇って再び告白してきましたが、それでも付き合うつもりはありません
第27話 女の子の裸も秘密も覗き見る変態さん
第27話 女の子の裸も秘密も覗き見る変態さん
最近暑くなってきたなぁ。夏くんも少しばかり手加減してくれればいいのに、可愛くて小さくか弱い伊織が熱中症になったらどうしてくれるの。
「ふぅ……」
私の名前は百目鬼乙葉、お父さんが趣味で集めていた(使ったことは一度もない)トレーニング器具で筋トレをしているブラコンの少女だ。
「そろそろ終わりにしよっと。木葉が遊びに来るし」
50キロのバーベルをゆっくりと地面に置き、プロテインを喉に通した後に私はお風呂に向かった。トレーニング後のプロテインとシャワーほど気持ちの良いものはない。自分自身を磨くのももちろん筋トレの目的ではあるが、最近はこっちの方が主な目的になっている気がする。
冷たいシャワーが私の身体から汗を落としていく。心がゆったりとしてきて、高ぶっていた気持ちが緩やかなになっていく。
「そろそろトレーニング強度上げようかな……伊織と海に行くまでに腹筋もうちょっとクッキリさせたいし」
伊織ったら私の鍛え上げた肉体見たらどんな顔するかなぁ……また羨望の目で見てくれるかな?伊織と一緒にトレーニングして一緒にシャワー浴びたい。
「はぁ……伊織と結婚したい………子供作りたい」
「近親婚は違法だろ」
にわかに鏡に知らない男の姿が映った。かなり整った顔であるが少したりとも可愛らしさがない。
「誰?変態さん?」
シャワーを止めて身体を反転させる。私よりも少し身長が高く、服の上からではあるがなかなか鍛え上げられている身体だと言うことが分かる。
「なんだ?素っ裸を見られているのに隠さないのか?」
「隠したら手が使えなくて不利になるじゃん。別に伊織以外に裸見られても大した恥はないし………まぁ不快感はガンガンあるけれどね」
さてどうしよう………今は両親も伊織もいない………ここで叫んでも誰にも聞こえないだろう。逃げようにも入り口に近いのはあっちだ。
「思っていたより随分ぶっ飛んだ女だな」
「私のこと知ってるの?……って当然か、裸を見るためか、それよりもっと凄いことをするためか知らないけれど不法侵入するような人だもんね………ってことで」
ノーモーションで思いっきり金的を食らわした。したり顔をしていた男の顔が一瞬で青くなる。その隙に私は風呂から飛び出し、タオルだけを手に持ってできるだけ男から離れた。こうなっては仕方ない、多少ご近所さんの目が気になる格好ではあるけれど人が冷え切った今の時代はお隣さんでも遥か遠くに住んでいる誰かと同じようなもの、気にしないことにしよう。
と言うわけで近くの窓から飛び出し、大声を出そう。そう心に決めた瞬間、私の目の前に先ほどの男が現れた。
「うわぁっ!!」
「お前……やってくれたな………男の痛みを知らない女め」
「見ず知らずの男に裸を見られた女の子の痛みを知らないくせに……って言うかどうやって」
「貴様に説明する義理はない……ただ、これから先起こる絶望だけを感じろ、俺を恨むなよ、強いていうなら東雲由良江を恨むんだな」
………ああ、そういうこと。この人、東雲さんや神楽坂くんが言ってた魔王様四天王の一人ってことか。
「俺は『憑依』のスタープ!!貴様を俺の手ごまにしてやるよ!!!」
そう高らかに宣言された後、花火よりも眩しく、ドブのように汚い光が私の目前でピカリと光った。
「へぇ」
~~~~~~~~~~~~
俺の名はスタープ、魔王軍四天王にして妹であるクレアのことを愛する男である。
俺たちの怨敵である東雲由良江を弑し、その実績をもってクレアを必ず魔王にのし上げて見せる。
俺では力も運も才能も何もかもが足りていないが……クレアなら魔王になる器を持っている。俺たちの最高位は魔王なんだ。今はまだクレアも乗り気ではないが、将来は必ず俺に感謝するはずだ。
そのために俺は今百目鬼乙葉の精神世界の中にいる……そう、俺の能力である『憑依』でな。
憑依を使って由良江に近しい存在であるこの百目鬼乙葉という女を俺が奪う……そして由良江の隙を狙い、由良江に憑依をしてやる。そうすればいかなることも思うがままが。
「ふふふ」
悔しいが正攻法ではあの女に勝てる手段はない。しかし軍師としても名をはせた俺の知略の前にひれ伏すのだ。
「にしても………随分と整理された精神だな」
まるで図書館のように整然とした精神だ。普通はもっとごちゃごちゃとしており自分の好きなものや嫌いなものの記憶が特にその存在を主張しているのが常なのだが……性格の問題なのだろうか。
「顕現しているのは本にDVDにトレーニング器具……なんともまぁ健全的なことだな」
精神世界ではなんでも顕現する、何かに集中しているとき、例えば読書をしているときはその本や食事シーンを読んでいればその食事がイメージ通りに顕現されるのだ。特にその人物が強い思い入れを持っているものはほとんど四六時中顕現している。
無論、本人はそんなこと自覚していない、全ては無意識化に行っていることであり、それを知覚できるのは憑依により精神世界に入り込んだ俺だけである。
「まぁいい、浸食を始めるぞ」
俺の力でこの精神世界を乗っ取るこの音はいつ聞いても心地よい……クレアが魔王になるためのプレリュードが鳴り始めたぜ。
ふと俺の目に妙なものが映った。
「なんだあの扉は?」
やたらと可愛らしい扉がそこにあった。その可愛らしいデザインとは裏腹に来るものを阻むような重厚な扉は開けることも苦労しそうだ。
俺は直感した。この扉の先こそ百目鬼乙葉という女にとって最も大切な場所だと言うことを、だとすれば俺はこの扉の向こうに行く必要がある。憑依を終わらせても大切なことを知らないまま由良江に接触すればバレてしまう恐れがあるからな。
「あの女のことだ。例え友人の身体であろうと容赦なく消し飛ばすだろう」
力を入れて扉を押すがなかなか開かない。腕をまくり、渾身の力で押すと微かに開いていった。
ギギギ、ギギギギギギ
少しづつ開いていく………そして俺は何とか扉を全開にして扉の奥に進んだ。
「………なんだここは?」
デカい……なんとういう広大な空間だ。地平線が見えない……これほどの規模のものは初めて見たぞ……
精神世界の広さはその者の器のデカさを表している……なんという女だ。
「にしても、ここには何が……なっ!!??」
無数の小さな少年の姿が映る。これは百目鬼乙葉の双子の弟である伊織だ。その伊織の姿がそこかしこに存在している。赤子の頃から、直近のものと思われるものまでいくらでもある。夜空で輝く無数の星よりも多く、そして輝いている弟の姿だ。
バタンッ
不意に後ろで扉が閉じた音がする。
「あーらら、こんなところに居たんだ。変態さん」
「貴様は」
「やれやれ、覗き見が好きな人なんだね。まぁいいよ、ここは私にとって一番大切な空間だけれど見せて恥ずかしいものは何一つない。
私は同担問題ないから思う存分伊織を堪能して、伊織のファンになってちょうだいね」
「何故お前がここにいる?」
「これはこれは変なことを聞くね」
女はニヤリと笑った。
「例え貴方と言う闖入者に侵略されつつあるとしても、ここは私の精神世界、主である私がこれないわけがないじゃない」
その百目鬼乙葉の不敵な笑みに、俺は背筋を凍ったウジ虫でなぞられたような悪寒を覚えた。
…………俺が俺の能力を使い、この女をコマにしようとしているこの状況……どう考えても俺の方が優位なはずだ…そもそもこいつは力もないただの人間……なのに………なんなんだ。
「とはいえ、堪能してもらうのは後になるけど」
なぜこんなに恐ろしいのだ!!??
「女の子の裸も秘密も覗き見る悪い子はお仕置きしないとだからね」
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