第24話 悟っていても男子高校生なのです
あたしの名前は東雲由良江、世界が誇る美少女にして新悟の将来のお嫁さんよ。
そんなあたしは今最低最悪なほどに混乱をしている。
「……何で何で何で…………」
新悟のことが見えないし、聞こえない……千里眼も地獄耳も何故か新悟に対して使えなくなってる………どうしてなの?
なんで?今試しにパカーに視線を変えてみたけれど山盛りおっぱいの美穂と見覚えのないロリと一緒に風呂に入っているのは確認できた。
『おっきいって良いですわね。もちもちふわふわ幸せですわ』
『でも困ることもあるのよ……肩が凝るしどんなに大きくても母乳には変わらないし』
『そうなんですの?でも欲しいですわ。
あーあ、私の創造でおっぱいも作れればいいのに』
声も聞こえる……乙葉でも試してみましょう。
えっと……見える見える、岩場を飛び回る乙葉の姿がありありと見えるわ。
『伊織ラブ、伊織ラブ、伊織ラブ、伊織ラブ、伊織ラブ、伊織ラブ!!!!!!』
にしても乙葉ったら何やってんのかしら?因幡の白兎ごっこ?それとも忍者遊び?
ああそういえばこの前伊織が『忍者ってかっこいいね』とか言ってたっけ……まぁどうでもいいわ。今は新悟に能力が使えなくなっているのが問題……
「あぁぁぁぁ!!!!!!!!????????どうなってるのよ!!!!!」
いつものように新悟を観察していたら突然シャットダウンしたように何も感じなくなったのだ。まるでぶつ切りにされたビデオみたいに……
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」
ヤバい……異世界から戻ってきてからずっと新悟を感じていたのに………急にそれが途切れるだなんて…新悟成分が足りなくてどうにかなりそう。
「苦しい…し………死ぬ…………」
新悟は………新悟は………今どうなっているのよ。
「しぃぃぃぃんごぉぉぉおぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」
禁断症状による慟哭が地獄にまで響き渡った。
~~~~~~~~~~~~
そのころの新悟
「ねぇ新悟……大切な話があるの」
「えっ?改まってどうしたんですか?」
巫女子ちゃんはあたりを見回した後に僕の手を握り締め、グイグイと前に向かっていきます。
「ここじゃ人が多すぎるからどこか二人きりになれるところに行こう」
「ちょっと、本当にどうしたんですか?さっき再会したばっかりなのに大切な話って……」
その時僕は握り締めれた手のひらから心臓の甘い鼓動が響いていることに気づきました。
はっ………まさか…………これは………まさか………まさかまさか……
告白……??
いえいえいえ、そんな馬鹿な。巫女子ちゃんは僕の幼馴染兼親友であってあっちはそんな感情少しも抱いていないはずです。それに再会したばかりなんですよ………なのに
「さっきの新悟見て思ったの。カッコいいなって、あたしが想像していたよりもずっとずっと凄くなっていたなって」
カッコいいですって!?それじゃあ本当に……いえいえいえいえいえ、ないないないない。
「で、悟ったの新悟はあたしが求めていた人だって」
……そ、それはつまり、理想の人間ってことでしょうか……やはり告白……いえいえいえ、僕みたいな男を好きになるなんて巫女子ちゃんに限ってそんなこと………
ああ、何を考えているんですか僕は!!!悟りが足りませんよ。自分に都合のいい考えは止めるんです。
そう考えていると不意に巫女子ちゃんが止まりました。ほとんど巫女子ちゃんに動きを任せていた僕は彼女の背中に顔をぶつけます。
「あっ、ごめんね。痛くない?」
いい匂い……じゃないです。しっかりしろ、僕。
「大丈夫です。それよりまたまた急にどうしたんですか?」
「いや、冷静に考えたらあたしここに来たばっかりで二人きりになれる場所って分かんないなって思って。
新悟、良いところない?」
「なるほど……そうですね」
不意にこの前行ったラブホテルが頭に浮かんできました。それを思いっきり脳内新悟を生み出してボコボコにします。
「あっそうだ、新悟の部屋とか「それだけは絶対にダメです!!」ええ、そんな勢いよく否定する?」
女の子を僕の部屋に招くなんてことしたら由良江が何をするか分かったもんじゃありません……最悪(90パーセント以上の確率で)殺人事件が起こってしまいます。
と言うか、そう考えればなんで今この状況で由良江が登場してきていないんでしょう……
「ねぇねぇ、どう?あれだったらあたしの部屋でもいいんだけど」
それはそれで不味いです。僕が女の子の部屋に行くなんて最悪(今度は70パーセント以上の確率で)殺人事件がやはり起こってしまいます。
「そうだ、良いところがあります。ついてきてください」
「お願いね」
こんな会話をした後でも僕たちの手のひらは重なったままでした。放そうという感情が湧いてこなかったのです。
僕がたびたび滝行をしている滝の近くまでやってきました。ここならベンチもありますし、人も滅多に来ないのです。
「ほほぉ、なかなかいいところだね。穴場って感じがする」
「そうなんですよ。川の流れもそれなりに早いですし、舗装なんてまるでされてないのでここで遊ぼうという人もほとんどいないので二人きりになるにはいいと思って」
僕は滝を指さします。
「あそこで滝行をするのが僕の趣味なんです、心を落ち着かせ自分の精神力を上げるために日々精進しているんですよ」
「ほほぉ、そいつは良いこと聞いた。じゃあ今度一緒に滝行しようね」
「良いですよ。
それで、話ってなんなんですか?」
不意に巫女子ちゃんの空気が変わりました。
「………それはね………こんなこと言うと変な女の子だと思われるかもしれないけど」
「安心してください、おかしな女の子には慣れてますから」
由良江とか小鳥遊さんとか乙葉さんとか館母さんとか、あと由良江とかやっぱり由良江とかさらに由良江とかどこまでも由良江とか筆頭として由良江とかのおかげで。
「それはフォローしているつもりかな?」
「いらない発言でしたね……まぁとにかくよほど突飛じゃなければ平気ですよ。
巫女子ちゃんほど信じられる人はいませんからね」
「っ……そういうことをさらっと言うんだから……
まぁそう言うことなら言うね………」
しっかりと僕の目を見据え、昔のような情熱的で実直な瞳をぶつけてきます。
「あのさ新悟……あたしと」
恥ずかしそうに一瞬うつむいたその様が何だか愛らしいです。
「………巫女子ちゃんと?」
ドキドキドキドキドキドキドキ
「あたしと………あたしと…………」
意を決した色が瞳に交じります。
「一緒に世界を救って!!!!」
「……………はい???」
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