第20話 ママには甘やかしたい時があるの

 私の名前は館母美穂、同級生であるしんちゃんの前世の母親よ。


 私は前世の子供に出会った以外はどこにでもいる女の子なんだけど、今の私はとある衝動に悩まされているわ。


「めちゃくちゃしんちゃんを甘やかしたい……ナデナデして膝枕しながら耳掃除してあげたい」


 どうしましょう。この衝動は食欲や睡眠欲のような根源的な欲求のような気がするわ。あの可愛いしんちゃんを思いっきり甘やかしてあげたい……同い年だけど、何なら誕生日はしんちゃんの方が早いけれどそれでも甘やかしまくりたい。母性本能が疼いて疼いて仕方ないわ。


 と言うわけで私はしんちゃんと由良江ちゃんの家にやってきたわ。インターホンを押すとパカーちゃんの声が聞こえてくる。


「あっ、ご母堂様っすか」


「突然来てごめんなさいパカーちゃん、しんちゃんいるかしら?」 


「ああ、すいませんっす。今旦那さんは姉さんに拉致されて孤島に連行されてるんす」


「あらそうなの」


 ざーんねん。


「なんでも自分たち以外いない孤島でこの土日を過ごし、開かれた大自然と解放感と他に頼れる人がいないことからくる吊り橋効果を使って手を出させるのが狙いらしいっす」


「ってことはしんちゃんは月曜日までいないのね」


「そうなるっす」


 孤島だとスマホも通じないだろうし、仮に通じてもヤンデレ由良江ちゃんがあたしにしんちゃんを甘やかせるために帰ってきてくれるとは思えないわね………残念。


「それでご母堂様はどんな用っすか?」


「ああ、しんちゃんを甘やかしたかっただけだから気にしないで……じゃあまたね」


「はい、お気をつけて」


 どうしましょう……うずうずしてるこの母性をどう発散すればいいかしら?これじゃあ身体に悪いこと間違いないわ。


 はぁ、甘やかしたい甘やかしたい甘やかしたい甘やかしたい甘やかしたい甘やかしたい甘やかしたい甘やかしたい甘やかしたい甘やかしたい甘やかしたい甘やかしたい甘やかしたい甘やかしたい甘やかしたい甘やかしたい甘やかしたい。


 この子宮の奥から湧いてくる衝動………どうすればいいのよ。


「あれ?館母さん?奇遇だね」


「あら伊織君奇遇ね……」


 彼を見ると母性がブルブルと震える。あたしと魂レベルのつながりのあるしんちゃんを除けば伊織君は世界で一番可愛い子だと思う………


 よし、これは天佑ね。


「えいっ」


 伊織君を私は抱きしめた。私の胸は人よりもずっと大きいし二つ合わせれば彼の小さな顔よりも大きい。だから彼の顔がグイグイと胸の中に入ってくる。


「ふぎゅっ!!ぶはっ。

 館母さん急にどうしたの?」


「急にごめんなさい」


 これをすると大抵の男の子は鼻の下を長くして胸をじっと見つめてくるんだけれども伊織君は無邪気で不思議な顔をしてくる。しんちゃんとは別の意味で年頃の男子高生とは思えない子よね。


 可愛い。


「ただ今しんちゃんに会えてなくって甘やかしたい気持ちが抑えられなかったの……ねぇ伊織君、時間があれば私と遊んでくれないかしら?」


「いいよ。ただ僕買い物しないといけないんだけど」


「分かったわ、じゃあ一緒に買いに行きましょう……それで、何を買うつもりなのかしら?」


「えっとね」


 もじもじとして少し照れた様子がなんとも初々しい。乙葉ちゃんが夢中になるのも分かる小動物系の愛くるしさね、


「この前お給料が入ったでしょ……お姉ちゃんが喜びものを買いたいんだけど何をすればいいのか実は悩んでて…見ながら決めようと思ってたんだけど館母さんも選ぶのを手伝ってもらっていい?」


「もちろんよ。同じ女の子同士だし大船に乗ったつもりでいてちょうだい」


「ありがとう!!」


「じゃあ行きましょう」


 伊織君の手をぎゅっと握って私はほくほく顔でショッピングモールに向かった。手のひらを通して彼の純真な真心が伝わってくるようでとても心地が良い。


「あっ」


「ん?どうしたのかしら?」


 伊織君の視線の先を見るとたこ焼き屋さんがあった。


「食べたいのかしら?」


「うん……でもお金は全部プレゼントに使いたいし……我慢する」


 キュンッ


 ああ、なんなのかしらこの子………可愛いわ。私今なら母乳が出るような気がする、栄養と愛情満点の母乳が出るような気がするわ。


「じゃあ私が奢ってあげるわ」


「え?そんなの悪いよ」


「友達兼同僚なのよ、そんな遠慮なんていらないわよ。気にしているなら今度私に何か奢ってちょうだい」


「……そっか、じゃあお言葉に甘えるね。ありがとう館母さん」


「どういたしまして、そしてありがとね」


「え?なんで?」


「うふふ、伊織君、人はね人に何かをあげることでも嬉しくなるものでしょ。

 赤ちゃんにおっぱいをあげるお母さんも幸せなみたいにね」


「へー、そうなんだ。でも確かにそうだね」


 すごーい、おっぱいの話が出たのに思春期の男の子とは思えないほど無邪気な態度。


「さ、一緒にたこ焼きを食べよう。

 すいません激辛たこ焼きネギマシマシマヨネーズましましたれマシマシでお願いします。伊織君は何がいい?」


「僕は普通ので」


「そういうことでお願いします」


 椅子に座って激辛たこ焼きを食べながら伊織君を眺める。まだ暑いのかたこ焼きをフーフーしている様は心を穏やかにしてくれるわ。


「一つ食べていいかしら?」


「いいよ。はいどうぞ」


「ありがと」


 もぐもぐ……なるほどこれはなかなかね。


「伊織君も私のたこ焼きいるかしら?」


「うーん……激辛なんだよね……でも激辛の方が男っぽい気がするし……うん。ちょうだい」


「ふふふ、その気合カッコいいわよ。はいあーん」


「あーん」


 つまようじにたこ焼きを刺して伊織君の口の中に入れた。たこ焼きが口に当たった瞬間、伊織君の顔が真っ赤になるわ。


「あつあつあつ、からかからから!!!」


「お水あるわよ」


 一生懸命水を喉に流し込んだ。ゴクゴクと喉を通る音が心地よい。


「まだ口の中が熱いし……胃の中で熱い感覚が凄いね……館母さんよく普通に食べられるね」


「うふふ、私タフなのよ」


 穏やかで優しい時間……子供ができたらこんな感じなのかしら。


「うふふ♡♡♡」


 幸せね。




 一方孤島では


「新悟、いいのよ。ここにはあたしとあんたしかいない……欲望をさらけ出しなさい」


「いや……その言葉はあっているのかどうか微妙なところですね」


 新悟の周りは少女でいっぱいになっていた。全てが由良江の顔とスタイルを持っている……要するに由良江の分身である。


「あたしハーレムを」

「思う存分」

「あんたの好きなように」

「あんたの欲望に任せて」

「あたしを愛して愛して愛して」

「そして美味しく」

「召♡し♡上♡が♡れ♡」


 次の瞬間、無数の女体が新悟に襲い掛かったのであった。


「何人いるんですかぁぁ!!!!!!!!!」


「取り合えず30人。最大1億人まで増やせるわ」


 今日も新悟と由良江は元気である。

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