第6話 事実

少女は高校生となった。

真新しい、スーツのような見た目の制服。一つだけ、少女は愚痴をこぼした。女性として見られたくないから、スカートを履きたくない。そう伝えたのだが、女は


そんなの、おかしいから買わない。


スラックスも用意されている。校則で履いていいとなっていたのに、"普通"に潰されて少女の声はいつも届かない。少女は可愛いと言われるのを嫌っていた。それは女性らしいと言われているのと同義だからだ。


少女はいつの間にか、少年のように振舞った。


口調は強まり、荒々しい表現をする。確かに活発であるのだが、決して健全ではなかった。人を威嚇し、怯えた猫のそれだった。


制服は気崩さない。教師に目を付けられるのは余計な手間だから。洒落た格好など、一ミリも興味もない。髪は若干癖毛で、コンプレックスだし取り繕うにも頭髪は女に管理され、ロングは許されずショートのみで、ストレートヘアにする施術など以ての外だった。


その中で、顔を出さずにできる対人ゲームを少女は得意としていた。


プレイヤー層は圧倒的に男性が多く、9.5割は男性という体感だった。少女はあまり女性らしい名前を付けず、男性とも女性ともとれる名前を好んで使った。


男性の中でも圧倒するくらい、少女は強かった。


父に誘われるがまま、銃を手に取りいつの間にか父より上手くなり、拗ねた父と遊べなくなっていたがまた遊び相手を手に入れた。


クラスメイトと通話を付けて、すごいなと言われるととても嬉しくなる少女。漸く友達を手に入れたのだと喜びに満ちた。これなら、他にも友人ができるのではないか、と考え少女はクラスメイト以外とも遊び回ることにした。そして気づく。


通話を繋げた瞬間、相手の態度が変わることに。


少女を女として歓迎する気持ち悪い人間に。


突然送られるプレゼント。課金をしなければ手に入らない物。なぜそれを自分に?と問いかけてもいつも仲良くしてくれてるから、と通話越しでもわかる男の声。


気持ち悪い。


プレゼントは基本的に返すことができない仕様だった。受け取るしかない。一応お礼は言うが、その後はその男とは遊ばずまた別のところへ行く。


今度はボイスチェンジャーを使って遊んだ。一人称は俺で通すも、声が聞き取りづらいからそのノイズを取ってほしいと言われ仕方なく取る。


女じゃん。


そしてまた変わる態度。


気持ち悪い。


また場所を変える。


個別通話が飛んできてなんだろうと思うと、男性のある写真。


気持ち悪い。


可愛いね


気持ち悪い。


写真送れないの?


気持ち悪い。


気持ち悪い。


気持ち悪い。


少女はどうしたら自分を只の人として見てもらえるだろうか、と考えた。

ああ、そうだ。元は自分は男性でひょんなことから女性になってしまった。そんな風に考えてしまえばいいか。


女としての自分を楽しむことにした。


少女に罅が入った。

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