第4話 誰が言ったのか。
少女はぽつりぽつりと語る。
明らかに避けられている。特に何かした覚えは無い。だが、嫌味は言われている。
だから苦しい。どうしたらいいかわからない。
教師は真剣だった。類を見ない、一人一人人間を大事にする人だった。それこそ自分を顧みず、離婚までしてしまったくらい、生徒をよく見る人。
少女のことも、この人は見つけた。
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あまり笑わない少女、いつも握りしめてる拠れた小説。その小説を国語の教師は褒めたが勿論そんなのは逆効果だ。また「いいこちゃん」扱いされてしまうだけだ。
そして夏の暑いとある日。少女は遊びに誘われてとある男性の部屋に行くことになった。少女は単純だったのだ。素直にそれを喜んでいた。男女10人は居ただろうか。そして中心には卑猥な写真集を眺めているクラスメイト。それを少女に見せつけ汚い笑みを見せつけてくる。確かに少女も年頃では合ったし、なんなら人並み以上じゃないかとは気付いていた。
しかし、気持ち悪かった。
そして思わず声に出してしまった。またあの台詞が繰り返される。
「いいこちゃんぶりやがって」
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教師は怒鳴った。学年全員呼び出し、声を荒らげた。お前らはこれが合っていると思っているのか?人が傷ついてるのをただ黙って見ているのが間違ってないと言えるのか。言ってみろ。声を出せ。間違ってるなら間違っていると言ってみろ。
声も出せない癖に、人のことは無視ができる。
そんな恥ずかしい奴ここにいるなんて信じられない。
教師は騒音を鳴らす。それと同時に誰かが泣いた。
それからは、多少過ごしやすくはなった。それでも、居心地がいいとは言えないため小説は手離したくなかった。あの家には相変わらず怪物が住み着いている。
授業参観は顔の整った父。ざわめく女たち。鼻が高くも少し恥ずかしいと少女は思っていたのと同時に。
また怪物が優先された。
あの女は怪物の味方なのだ。少女の言葉はいつも怪物の映像に掻き消された。
少女の成績は、かつての優等生とは到底言えるものではなかった。
そして女は言う。
お前に家庭教師を付ける。
付けるならそうだ。絶対に女。男は有り得ない。そんなんじゃ録な場所に行けもしない。感謝しろ。
そもそも、少女の部屋にはいつも怪物が好んだ映像の音が鳴り続けているのが聞こえる。その状態じゃ、と言っても少女の声は届かない。
家庭教師が来てこの騒音では成績が下がって当たり前だ、と言うと直ぐに対応がされた。
少女の言葉は届かなかった。
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