第4話 「目的(ゴール)」と「手段(過程)」



 人の感情の中で、もっとも単純に引き出せるものは何でしょうか?

 なんていうのをどこかで見かけたような気がしないでもありませんが、答えは単純で「怒り」の感情なんだろうけどねー。まぁ、持論なのですが。


 芸人さんは、人を楽しませる「笑い」という感情を引き出す才能を持っている方が人気があるように、逆に「不快」という感情を引き出す芸人さんは消えやすい。

 料理人は当然「美味い」料理を作れなければならないので、「不味い」だと失格の烙印を押されます。そもそも料理すんなって話になりますし。(食材に謝れ)


 「好き」の反対(対義語)は「無関心」であり「嫌い」ではないというのは、ここ数年で当たり前の常識となってますね。

 でもマザーテレサが「愛」の反対は「無関心」って言ってたのが元だったかな……。

 でも「嫌い」の反対の感情は?案外こちらの方はほぼ見かけません。

 まぁ、同じく「無関心」なんだそうですけどね。


 創作している方や、それを読む方の多くは「楽しさ」を求めています。

 その「楽しさ」をどうやって引き出すのか。

 なんせ文章なので、料理やマンガにある映像的な「目で見る楽しさ」という手法は使えません。

 文章で惹き付けるテクニックを、創作論や評論なんかで色々教えているようですけれど、結局は人間の「興味」を手っ取り早く引き出す「感情」が何であるかが判っていればいいような気がします。

 文章が多少読み難くても「楽しさ」があれば読み続けられます。

 文章が美しく綺麗で読み易くても「楽しさ」がなければ、読み続けられません。

 これらは共通して読者に「興味」を持って貰うことが前提ですが。


 料理であれば「匂い」ですね。

 きっと誰もが経験したことがある、帰宅途中に、各家庭(またはお店)から漂う夕食(昼食でもいいです)の匂い。

 どこかでカレーを作っているなと気付き、そうして自分のお腹がそのカレーの匂いに刺激されて「今日はカレーが食べたいな」って思ったりするのに似ています。

 目で見なくても料理は「匂い」で、人の興味や関心を惹き付け、そして「カレーが食べたい」という気持ちを誘発します。

 実際に食べるかどうかは関係ありません。


 創作論でも言われているし、ここ数年の間でラノベ作品タイトルの長さが指摘されていますが、「キャッチコピー」がその興味を抱かせるもっとも単純で有効な手段であるように思います。ラノベのタイトルって、既に「キャッチコピー」のように変わってきてますよね。良い悪いではなく、最早これは文化です。

 私も自分の作品をUPする際、ここが一番悩みました。

 本当は既に仕上がっている作品であるにも拘らず、「キャッチコピー」と作品のタイトルを考えるだけで、一月近く掛かりました。

 なんでそんなに時間がかかったんだって話なのですけど、小説を創作している間中ずっと考えているのに決まらなくて、ある程度内容を書き終わるまでずーっと、悩み続けました。

 未だに「これで良かったのか?」と、悩む原因でもあります。


 この作品で何を表現したいのか。

 興味を引くにはどうすればいいのか。

 タイトルを見ただけで、判りやすく端的に内容を把握させるためには?

 短いタイトルに拘る方もいますし、横文字の方がカッコいいと考える方も多いと思われますが。

 見て判ればいいんです。

 カレー屋さんでカレーじゃなくてスイーツを出さない限り。

 「羊頭を掲げて狗肉を売る」でなければね。


 お店を掲げる店主であれば、その看板に意味を持たせたいじゃないですか。

 集客は大事です。読者がいてこその、公開作品ですから。

 お代は「❤」であり、「★」であり、PVでございます。


 一般に作品を公開している創作主様にとって、好きでもなく、嫌いでもない、興味を持たれない「無関心」でスルーされるのが、一番辛いのではないでしょうか?

 心を籠めて考えたネタですしね。自己満足で終わるのは、公開する前まで。

 読んで貰えなくても、好きに書いたから別にいいだなんて、それだったらPCの中で眠らせておけばいいのです。

 自分で作って、自分だけ読む。それならwebにUPしなくてもいいんです。

 でも読んでもらいたかったんですよね?私もそうですよ。

 読んで貰えなくてもいいやって作品は、PCの中でただの文字の羅列として眠っております。おそらくこれから先も、一度たりとも日の目を見ないでしょう。

 グッバイ、うん十万字の文字の羅列達よ……。


 冒頭でも書いておりますが、持論として人の感情を引き出すのに一番簡単なのが「怒り」であると発言しておりますけれども。

 ラノベの人気作品の多くが、最初は「怒り」の感情を読者に共有または、共感させる内容が多くなっているような気がしましたもので。

 ジャンルでは「異世界ファンタジー」であり「ラブコメ」であり、「現代ファンタジー」等々あるでしょうけれど。

 「ニーズ」というもので分けると「人気のタグ」であり、そこには「ざまぁ」「NTR」「成り上がり」「復讐」「悪役○○」「実は最強」等々―――まぁ、大部分が不幸だった(された)主人公が、華麗に転身(報われる)したりする作品が多いかな?って思いました。

 見ただけで判りますでしょう?きっと最初は不幸な生い立ちだったり、過小評価されている主人公なのだろうな……と。


 これらは最終的には爽快感を得られる展開が必ずある。

 なければ読者は「怒り」で攻撃してくるかもしれませんしね。

 「怒り」で興味を引いておきながら、「怒り」で持って攻撃されるなんて、逆に面白いですけれど。



「楽しさ」というものは、人によって様々です。

 何もかもを奪われ報われない主人公が、イケメンや美女や美少女に溺愛されることによって見る側に「楽しさ」を与えますし。醍醐味でもありますね。

 出だしが不幸であっても、困難や不満を解消してくれる展開であれば、いずれ「楽しさ」に変化します。応援したくなりますし。

 しかしそれがどういった「手段かてい」であるかは問われません。

 「目的ゴール」さえはっきりしていればね。

 ただこの「目的」が明確でなければ、エタる原因になりますが。

 手段と目的が入れ替わっている作品ほど、エタっているような気がします。


 例えるならば、本来創作者が表現したかった「目的」は別にあったにも拘らず、興味を引く「手段」として設定したが目的となり、落としどころが判らなくなる―――みたいな。

 副次的なものがメインになってしまうのは、書き手にとっては痛手です。ゴールが見えなくなりますので。

 しかも創作者が「楽しくない」と思ってしまった瞬間、その作品は読み手にも伝わっちゃうんですよね。

 これって不思議なもので、どういうわけかバレてしまうもんなんですよ。

 バレずに書き続けられる創作者は、詐欺の才能が有ります。(褒めてる)


 料理で例えるなら、「カレー」を頼んだお客様に、目の前で料理をしていながら、途中で調味料を変えて「シチュー」にしてしまうようなものでしょうか?(肉じゃがでもいいです)


 私も手段としての「楽しさ」を追求し過ぎて、目的(ゴール)を忘れないようにしなければなぁと、抱えている食材(ネタ)を見ながら、それらを適切に使うタイミングを図っております。




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