第19話
帰りのホームルームが終わり、皆が帰り出している。
ハクは荷物を片づけたら、ぼちぼち教室を出ようと考えていた。
「見て弥生。あれ菱川先輩じゃない?」
「―――!」
しかし横から思いもしない言葉が聞こえてきて、思わず目を見張った。
慌てて教室の外を見る。
教室の外には、すみれがいた。誰かを待ち伏せているように、教室前の廊下に一人立っている。学年が違うからか、それとも彼女が異様に目を引く外見をしているからか。ほかの生徒たちからも少し注目が集めている。
横に視線を移すと、白石は自分を見ていた。
「………」
白石は何を考えているのかわからない、とても曖昧な表情をしていた。
それにどう反応していいかわからず、再び机にある荷物を片づけるのを再開し始める。
彼女を待たせてはいけない。
先にそのことが頭に思い浮かんできた。
ようやく荷物をバッグの中にしまうと、ハクはすぐさますみれの元へと向かう。
「すみれさん……」ハクは言った。
「終わった?」
「なんで、わざわざ迎えに……」
「一緒に行こうって思って。……もしかして気に障った?」
「別にそういうわけじゃないですけど……」
ハクは教室を見る。やはり弥生たちがこっちを見ていた。
「行きましょう」と、ハク。
「……?」
率先して足を運ぶ。
すみれも、その後に続こうとした。
けれどその瞬間、自分を見ている二人の女子生徒が偶然視界に入ってきた。彼女たちは特に反応せず、ただただその場を去ってゆく自分の姿を、視界から消えるその瞬間までまじまじと見つめていた。
「今度からは、昇降口の方で待つね」すみれは言った。
そしてすみれは、ハクの隣に並んだ。
〈さっきのこと、気に掛かったんだろうか。
少し自分の言動を見直すべきかも。
思ったことがすぐに言動に出るのは、悪い癖。
それが事実であれ、たとえ誤解だったとしてもよくない。
集団で行動する以上、できるだけ他人の迷惑にならないように慎まないと〉
的を得ていたわけではないが、自分を顧みて改善していくことはプラスなことである。何かと神経質なハクにとっては、むしろこのような誤解をした方がよかったのかもしれない。
公園までの道中、ハクは自転車を押しながらたわいない話をする中で、とあること尋ねた。
昼休み何をしていたか、と。
そしたら予想していた通り、やはりすみれは一人であの三年生と直接会いにクラスへ顔を出していた。
「ハクはちゃんと自分の役目をまっとうしてるよ」
大方、そう言われることを予想していた。
しかし実際、言われてみれば少し安心してしまう。
だからこそ、ハクはすぐにそんな自分を戒める。
「一番悪いのは、自分を追い込んで全部自分のせいにしようとすることだから。ハク、今ちょっと無理してない?」
「無理してないです」
「そう。なら良かった」
「………」
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