第18話
「――あぁわかった。じゃあこれ、印を押して生徒会に届けておくから」
「ありがとうございます、先生」
職員室中では季節違いのエアコンが吹いている。もうすっかり秋になりつつあるこの時期、ハクには少し肌寒いと感じた。
ハクは今、部活の申請書を担任の先生に渡しに職員室へと来ていた。
『活動場所』の欄を空白にしておいたから、もし演奏部の活動場所がなかったらどうしようかと二度や三度頭を悩ませた。
が、担任にその話をすると、「ちょうど、どこも使ってなかった場所がある」と担任はやや上機嫌気味に話し始め、意外にもその問題はあっさりと解決した。
(……よかった。無事に通って)
職員室を出たその直後、思わず安堵した。
今まで、右も左もわからないまま不安だけが募っていた。これで少しは、安心できる余裕も生まれそうなものである。
担任からは生徒会の承認をもらえ次第、その部屋自体は自由に使っていいとのことだった。しかしどうやら、演奏部が必要とするアンプなどの機材類を発注する場合には、それなりに時間がかかる可能性があるらしい。
すぐさまこのことをほかのメンバーにも報告せねばと、早急にすみれにメールをした。すぐに返信が返ってくる。
『うんわかった。ありがとね、届けてくれて』
『ハク。今日放課後時間ある?』
続けて、そんなことが送られてきた。
(放課後か……)
『あります』
『今日、またみんなで集まることになって』
『この前と同じ公園でって話だけど、大丈夫?』
(何するんだろう? また集まって)
とにかく、ここは行く以外の選択肢はないので二つ返事で承諾しておく。
(ていうか、結局すみれさんがまた全部やってくれてるし……)
完全にサボり呆けていた。
(何やってんだ、この怠け者)
あの人は自らが行動し、今こうして面会の場を設けようとしている。
それに比べ、自分は本当に何もしていない。
「おれもすみれさんを見習わないと」
図書室に向かう途中、ハクは誰もいない廊下でひとりごとを呟いた。
▽▽ ▽
「見て弥生。あれ菱川先輩じゃない?」
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