第5話 雪女と青鬼

4月最後の土曜日。

華里奈は、愛沢家を訪れていた。

由香子に課された『花嫁修行』の内容は、各兄弟と仕事に出向くこと。

今日は、瀬廉の仕事に着いていくことになっている。

「おはよう、瀬廉ちゃん」

「おはようございます、華里奈さん。準備はよろしいですか」

「うん!……と言っても、持ち物なんて特にないけどね」

「心の準備は大事ですよ」

瀬廉はそう微笑んでパチンと指を鳴らした。

彼女の周りに風が吹くと同時に、纏う服が変わる。

「……瀬廉ちゃんって何でもできるよね」

「狼や狐に化けるのに比べたら簡単ですよ」

いつか見た通り、瀬廉は白い着物を着ていた。歩くたびにカランコロンと下駄が鳴る。

華里奈は、ふと首を傾げた。

「……着物にピアス……?」

瀬廉の長髪の隙間から、蒼いピアスが覗いていた。

「それ、サファイア?」

「……妖界で採れる鉱石なので、サファイアではないと思いますけど……。あっちでも、相当貴重な鉱石らしいですね」

瀬廉は自分の耳を触りながらそう言った。

「4年前の誕生日に知り合いの善妖がくれたものなので、詳しいことは分かりません」

「へ、ぇ……知り合いの善妖」

華里奈はぼんやりと頷いた。


瀬廉の話だと、妖というのは善妖と悪妖に分かれているらしい。

悪妖には比較的短命で知能が低いものが多く、善妖には長命で知能が高いものが多いとのことだ。

もちろん例外もあるらしく、あまりはっきりとした区切りも見分け方もないらしい。

「フィーリングで分かる」とのことだが、生憎華里奈には分かりそうになかった。


とりあえず、妖に種類があるらしいことは分かった。

「これから仕事で行くのは、その知り合い……青鬼の元ですよ。……これ着けてないと、彼奴五月蝿いので」

瀬廉は遠い目で呟いた後、華里奈にネックレスを差し出した。

桃色のリボンのチャームが可愛らしいが、少し子供っぽいネックレスだった。

「これは?」

「即席の御守りのようなものですね。香論から借りたものなので子供っぽいですが許してください。私の妖気を込めているので、多少周りへの牽制になるはずです」

「へぇ……」

華里奈がネックレスを身に付けたのを確認して、瀬廉は微笑んだ。

「では行きましょうか」

そう言った瀬廉が案内してくれたのは、何故か愛沢家の地下だった。

「わぁ……」

どうやら、地下はいくつもの小さな部屋に分かれているらしい。

そのうちの一つの前で、瀬廉は止まった。

扉に掛けられたルームプレートには、『縹山』と書かれている。

「……まず、この地下室のシステムについて説明しましょうか」

「はい」

華里奈がピンと姿勢を伸ばすと、瀬廉は微笑した。

「ここにある部屋は、それぞれ妖界の別の場所に繋がっています。ほら、ゲームや漫画にも転送システムがあるでしょう?あれと同じです」

「……じゃあ、私達が今から行くのは……この…………読めません」

縹山はなだやま、ですね」

「はなだやま、に行くの?」

「そういうことです。別にこのシステムを使わなくても行けることは行けますけど、今回は安全重視ということで」

言い終わるや否や、瀬廉は扉をバンと開け放った。

途端、扉の向こうから眩い光が溢れ出し、視界が真っ白に染まった。



「……すごい……」

視界が晴れると、華里奈は大自然の中にいた。

燦々と太陽が照り、木々が青々と茂る山の中。

細い小道の上に、華里奈と瀬廉は佇んでいた。

「……ここが、縹山?」

「そうですね。かなり大きい山ですよ。私の知り合いの住処でもあります」

瀬廉は上の方を見上げた。

「基本頂上の館にいるので、私達も今から向かいます」

「え」

華里奈は思わず変な声を上げた。

「……登るの?」

ある程度道は整備されているようだが、頂上はとてつもなく高いのではなかろうか。

「そんなことをしたら華里奈さんが死んでしまいますね」

瀬廉は他人事のように言った。

(……それって、瀬廉ちゃんは平気ってことだよね)

瀬廉はふと華里奈に近づいたかと思うと───

「ヒャッ」

華里奈を軽々と抱き上げた。お姫様抱っこである。

「……華里奈さん、軽いですね」

(瀬廉ちゃんイケメン!)

女でも見惚れるような美貌が間近に見え、華里奈はドギマギした。

(……亜乱君の方がカッコよかったけど)

あの時は化け物に襲われて、ドキドキする暇なんてなかった。

「では、飛ばしますのでお気をつけて」

「ひゃいっ⁈」

瀬廉は勢いよく飛び上がった。

あっという間に木々の上空にたどり着く。

「とととと飛んでるっ⁈」

あまりの恐怖に、華里奈は瀬廉の首に抱きついた。

「……この前も飛んでみせたと思いますが」

「い、いやだって、見るのと自分が空を飛ぶのとは話が違います……」

「……もしかして華里奈さん、高い場所が苦手ですか?」

「……」

「図星ですね。大丈夫ですよ、落としませんから」

瀬廉はものすごいスピードで頂上へと飛んでいく。

(怖い怖い怖い……)

華里奈はギュッと目を瞑ったまま瀬廉に抱きついていた。

「……?」

ふと、何か妙な、金属を叩くような音が聞こえて、華里奈は薄目を開いた。

「……何の音?」

「さあ、刀でも作ってるんじゃないですか」

(……瀬廉ちゃんも冗談とか言うんだなぁ……)

刀なんて、触ったこともなければ見たこともない。


「さ、見えてきましたよ。『青鬼』の里です」


瀬廉の声に、華里奈は恐る恐る下に目をやった。

「青鬼……?」

青鬼というから、てっきりもっとゴツくて青い肌の巨人を想像したのだが。

「……想像と違う」

まるで、普通の人が営む里の暮らしのようだった。

和装建築の家や畑がある。

そして何より。

「……ねぇ、なんか皆美人じゃない?」

「……見慣れているので何とも」

皆、普通の人と変わらぬ容姿をしていた。全員が全員美人ではあるが、街ですれ違っても違和感は仕事をしないだろう。

ただ、全員青系統の色をした『角』を生やしていることが、人との明確な違いだろうか。

「降りましょうか」

トンっと瀬廉が地に舞い降り、華里奈も降ろしてもらう。

すると、一人の青年が駆け寄ってきた。

一旦華里奈にも視線を送ったが、とりあえずといった感じで青年は瀬廉に近づく。

「よォ、瀬廉。逢いたかったぜ」

(はわわ……)

華里奈は思わず口に手を当てた。

青年が、いきなり瀬廉の髪を掬って口付けようとしたのだ。

それはもう、姫君を前にした王子様のように。

「五月蝿い刹邪。髪を触るな」

だが、瀬廉は王子様の手を強く払いのけていた。バシッと音が鳴っていたが、互いに痛くはないのだろうか。

「相変わらず冷てェな。傷つくぜ?」

「今ので傷つくような奴なら、とっくの昔に殺してる」

瀬廉は呆れた風に青年を睨みつけた。

「依頼があるっていうから、わざわざ来たんだよ。何の用?」

「ま、それは後ででいいだろ。まずは、自己紹介とでもいくか」

青年はニッと華里奈に笑いかけた。

「俺は青鬼の刹邪。よろしくな、お嬢さん」

「よ、よろしくお願いします」

刹邪と名乗った青年は、改めて見てもとてつもない美青年だった。

一本に結わえた長い黒髪と、紺色の着物に映える白い肌。そして何より特徴的なのは、サファイアのように輝く深い蒼色の瞳だろう。

(……瀬廉ちゃんのピアスとおんなじ色だ)

この人が、贈り主なのだろう。

「わ、私は……坂口華里奈です。よろしくです」

「あぁ」

刹邪はしばらく華里奈の額の辺りを見つめていたが、クイッと手招きした。

「とりあえず、詳しい依頼内容は親父に聞いてくれ」

「分かった。……行きましょう、華里奈さん」

刹邪が案内してくれたのは、里の中でも一際大きな館だった。

「おっきい……」

「ま、色んな職人がいるからな」

刹邪はサラリと言う。

「職人?」

「瀬廉が何処まで説明してるのかは知らねェが、青鬼っていうのは器用な種族だからな。妖達御用達の、何でも屋ってところだよ。椅子や机みたいな生活用品だったり、腕輪や簪みたいな装飾品だったり、刀や槍みたいな武具を作れる奴もいる。俺は基本装飾品しか作らねェけど」

(……さっきの冗談じゃなかったんだ)

刀を使う妖もいるということなのだろう。

……怖い。

「……じゃあ、瀬廉ちゃんのピアスも、刹邪さんが作ったんですか?」

そう問うと、刹邪は不思議そうに首を傾げた。

「ピアス……?」

瀬廉が、髪を耳に掛けながら返す。

「耳飾りのことだよ。華里奈さんが言ってるのは、4年前にくれたこれのこと」

「ヘェ、ピアスって言うんだな」

華里奈がキョトンとしていると、瀬廉が教えてくれた。

「華里奈さん、ここでは基本英語も和製英語も伝わりません」

「そうなの?」

「はい。里の人間知識は、たぶん300年前くらいで止まっていたはずです。……まあ、鬼は記憶力が高いので、一回聞いた言葉はすぐ覚えますけど」

「へぇ……」

華里奈は、ふと疑問に思って尋ねた。

「そういえば、鬼って何種類くらいいるの?」

「何種類……?」

瀬廉は指を折りながら数え始めた。

「……まず、鬼というのは彩鬼さいきかそれ以外に分かれていまして」

早くも、華里奈は質問したことを後悔した。

「彩鬼というのは、名前に『色』を冠する鬼の総称ですね。赤鬼、青鬼、黄鬼、緑鬼、白鬼……まあ、挙げればキリがないですけど、角の色で種族が分かります。後、彩鬼というのは全て炎を扱う鬼ですね」

「炎?」

「赤鬼なら紅炎、青鬼なら蒼炎、黄鬼なら黄炎、みたいな感じですね。種族名と角の色と炎の色は対応しているんです」

華里奈が曖昧に頷くと、刹邪が話を引き継いだ。

「彩鬼じゃない鬼っていうと、吸血鬼か酒呑童子しゅてんどうじ辺りが有名どころか?目一鬼、牛鬼辺りは知らないか」

知らない言葉がポンポン出てきて、華里奈は目を白黒させた。

「……刹邪、あまり華里奈さんを虐めるな」

「そんなことしてないだろ」

(……瀬廉ちゃん、刹邪さんと仲良いんだな)

なんとなくだが、とても楽しそうである。

そうこうしているうちに、3人は館の最奥の部屋にたどり着いた。

(……愛沢家の時も思ったけど)

外観以上に、中が広く感じる。

刹邪がバンッと扉を開けると、そこには───

「親父、連れてきたぞ。瀬廉と連れのお嬢さん」

「助かるよ」

(若っ⁈)

刹邪の見た目が二十弱なら、父親の見た目は三十弱、といったところだった。

そして。

「……金平かねひらさん、相変わらず整理整頓下手ですね」

「ははあ、瀬廉様は相変わらず辛辣だなぁ」

床には、木材や金属といった素材や、よく分からない機材が散乱していた。

木材や金属を加工するのに使いそうだが、イマイチ使い方は分からない。

「万が一でも華里奈さんに傷が付いたらどうするんです?」

瀬廉はそう言いながら、素材を拾い上げていた。

「……こんな汚い部屋で、よくあんな素晴らしい作品が作れますよね」

「……それは褒めているのかい?」

「貶してます。ちゃんと片付けもしてください」

瀬廉はピシャリと言って、部屋の奥の棚に素材を仕舞っていく。

華里奈は、扉の横でそれを呆然と見つめることしか出来ない。

「……手慣れてるね、瀬廉ちゃん」

「いつもやってますからね」

あっという間に、瀬廉は片付けを進めていく。

「……これで足の踏み場くらいはできたか」

ポツリと呟いて、瀬廉は華里奈を部屋に招き入れた。

「お邪魔します」

金平は、部屋の隅から椅子を何個か引っ張ってきてくれた。

「どうぞ、座って」

全員が座ったのを見て、金平は瀬廉に言った。

「忙しいのに来てもらって悪いね、瀬廉様」

「いえ、それが私達の仕事なので。用件は?」

金平は一呼吸置いて答えた。


「喧嘩の仲裁を頼みたいんだ」


瀬廉は眉を顰めた。

「そんなこと、刹邪なら解決できるでしょう?この里に、刹邪より強い奴はいないんだから」

金平は首を横に振った。

「青鬼同士の喧嘩じゃないさ。もうちょっと複雑でね。桃鬼の群れと紫鬼の群れが縹山に侵入してきてる。今は若い連中が足止めして、三竦み状態だけどね。それを何とかして欲しい」

「……へぇ」

瀬廉は口角を上げた。

「桃鬼と紫鬼が両方となると、偶然にしては出来過ぎてますね」

「そうなんだよ。裏で何かあるかもしれない」

「分かりました、依頼を受けましょう」

瀬廉は立ち上がって優雅に礼をした。

「とりあえず、その現場に行きましょうか。刹邪、連れていって───っ⁈」

瀬廉が息を呑んだ一拍後。


ガッシャーーーーン!


爆発音のような、何かが割れるような、甲高い音が辺りに響き渡った。

「な、何っ⁈」

「心配せずとも、華里奈さんに危険はありませんよ。ここには、私と刹邪がいますから」

瀬廉は障子窓を開けて部屋から飛び出した。刹邪も続く。

(え……私も窓から出なきゃなの?)

一階なので死ぬことはないだろうが、少し抵抗がある。

かといって、この広い館から正規ルートで出るのも時間が掛かる。

窓の前で呆然としていると、金平が穏やかに言った。

「さて、千里眼のお嬢さん、僕達も行こうか」

窓を閉めて金平は言った。

「瀬廉様の話だと、君は『花嫁修行』の最中なんだろう?僕達が着く頃には全部終わっていそうだけど、一応、見に行った方が良いよね」

「あ、はい、お願いします!」

華里奈が頭を下げると、金平は薄く微笑んだ。



一方その頃。館の外では。

「な、何が起きたんだ⁈」

「森の向こうで何かが爆発したのよ‼︎」

「この氷の円屋根は何だ⁈」

青鬼達が驚き叫んでいた。

負けじと瀬廉は声を張り上げる。


「……皆様、落ち着いてください!愛沢家次女・愛沢瀬廉です!ここに、『四季』の夏と冬が揃った以上、皆様を危険な目には遭わせません‼︎」


その言葉に、青鬼達の喚声はピタリと止まった。


「私と刹邪が、爆発の原因を突き止めます。皆様は、このドーム……円屋根の中で大人しくしていてください。この里の安寧は、必ず守ります」


瀬廉はそう言って、刹邪と共に里の端へと駆け出した。

「お前……本当に妖気探知上手いよな。───俺は、爆発するまで反応できなかったのに」

「……私の得意分野だからね」

瀬廉は淡々と答えた。

先程瀬廉が何をしたかというと、爆発で里が吹き飛ぶ前に、里を幾重もの氷壁で包んだのである。

表面の数枚は割れてしまったが、里を守るには充分だった。

「たぶん、妖の気配を察知する能力は、兄弟の中でも突出してるはず」

瀬廉は氷壁の一部を溶かして里の外に出た後、また壁を修復した。

外に出た刹邪は、辺りを見回してからりと笑った。

「一面火の海じゃねェか。桃と紫と青……なかなか綺麗な絵面だな」

桃色と紫色と青色の炎が、互いの色を喰おうとするかのように燃え広がっていた。

「笑い事じゃない」

瀬廉はバッサリそう切って天に手を翳した。

「凍れ」

その言葉と共に、空に氷の塊が出現する。

次に、瀬廉はパチンと指を鳴らした。

「───溶けろ」

その途端、氷塊がドロリと溶け出して、水となって滝のように森に降り注いだ。

あっという間に火が消え失せる。

「……あーァ、せっかく綺麗な炎だったのに」

「五月蝿い。もっと綺麗なものなんていくらでもある」

「例えば?」

瀬廉は、チラリと刹邪の顔を見てすぐ背けた。

「知らない。自分で見つけて」

「つまんねェ奴」

刹邪はふわりと飛び上がり、妖気が強い方へ向かう。それに瀬廉も続いた。

(さあ、仕事に入ろうか)



瀬廉と刹邪は、色とりどりの角を生やした鬼達の元に降り立った。

山を覆っていた炎を消された鬼達は、困惑して固まっている。

(……ここは、高慢に威圧的に、彼等に恐怖を与えるように)

瀬廉は口角を上げた。

「さあ、『四季』の冬、愛沢瀬廉のお通りだ」

周りに、フワフワと氷刃を浮かび上がらせる。


「───死ぬか、ひれ伏すか、選べ」


周囲の鬼は、本能的にひれ伏した。


『彼女の言葉は脅しじゃない、命令を拒めば殺される』


皆がそう強く恐怖した。瀬廉は薄く笑う。

「さあ、何があったか、洗いざらい聞かせろ。……まずは、桃鬼の……お前、話せ」

指名された桃鬼は、ピクリと肩を震わせて顔を上げた。



わ、私達は、石竹山せきちくやまに住んでおります。

ある日から、私達の里から行方不明者が出るようになりました。

ですが、先日全員帰ってきたのです。

……いえ、帰ってきたのではありません。

彼らは、悪妖が───黒鬼が───化けた姿だったのです。

里は襲われ、半数近くが殺されました。

私達は逃げるために……縹山まで来たんです。



瀬廉を窺いながら話し切った桃鬼は、脱力して座り込んだ。

相当精神をやられたらしい。

「……次、紫鬼のお前だ。さっさと話せ」

瀬廉が顎をしゃくって促すと、指名された紫鬼はビクッと身体を起こした。



俺、いや、我々は、楝山おうちやまに住んでいます。

その……桃鬼の里と同じで、我々の里でも、行方不明者が出るようになったんです。

同じように、ある日全員が帰ってきたかと思えば、それは黒鬼が化けた姿でした。

こちらも、半数近くが殺されました。

我々も、逃げるようにして縹山の方まで逃げてきたんです。



話し終えた紫鬼は、桃鬼と同じように座り込んだ。

「……そうか。大体は察した」

瀬廉はそう言って、周りを見渡した。

「お前等は、どちらも青鬼に助けを求めるつもりだった。だが、近くで遭遇した互いを『黒鬼の化けた姿』だと誤解したお前等は戦闘を始めた。それに青鬼が来たは良いが、混乱で青鬼にも手を出したんだろう。そして、青鬼側からは敵だと認識された」

瀬廉は手を雑に振った。

「この私が断言する。ここに悪妖はいない。善妖同士で殺し合うのはやめろ」

「「はいぃぃぃ‼︎」」

全員が頷いたのを見て、瀬廉は微笑んだ。

「……さあ、金平さん……いえ、青鬼の里の里長よ、彼等の処遇はどうする?」

瀬廉がそう問うと、側の茂みがガサガサ動いた。

「───いやあ、瀬廉様にはお見通しかぁ……」

はははと笑いながら、金平は茂みから出た。華里奈もひょっこり顔を出す。

「うーん。まあ、皆無事みたいだからねぇ。桃鬼と紫鬼は、しばらくうちで保護しようか」

鬼の群れから歓声が上がる。

こうして、鬼の里侵略事件は幕を閉じた。

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