【実話】夜中の二時に凸られた

 専門学校に通いながら、一人暮らしをしていた時の話です。


 当時は、軽量鉄骨のアパートの二階に住んでいました。

 小綺麗でしたが結構壁が薄くて、隣の部屋の音も、外で話している近所の人の声も聞こえる様な安普請やすぶしん

 ちなみに家賃もお安かったです。


 その日は友達が遊びに来ていて、夕方、友達を送りがてら買い物に行こうと、二人でアパートを出ました。


 アパートを出たところで、二階の端の部屋から声がしました。


「ねぇ、ダメだってば……」

「良いじゃん……」


 友達と二人、「ん?」と振り向いて見上げると、パチッと電気が消えました。

 まあ、要するにそういう事です。


「うわ、気まず」

 私は思わず言いました。

「気まずいねえ」

 友達もやんわりと言います。


 そんなに大きな声では無かったのですが、二階の声が聞こえる様な安普請ですから、どうやら、こちらの声も聞こえていた様です。


 その日の深夜二時頃、物凄い轟音がしました。

 何事かと思いましたが、どうやらどこかの部屋のドアを全力で叩きながら、

「開けろ!開けやがれ!ゴルァ!」

 と男の人が叫んでいます。


 私はまだぼーっとしていましたが、結構音が近そうです。


 ん?私ん家かな?


 ドアをガンガンされている。男の人が怒鳴っている。

 ああ、さっきエッチしてた人かなあ……振られたんかなあ……私のせいか?

 いや、八つ当たりだろ流石に……


 とりあえず翌日も学校でしたし、正直眠いし、面倒だったのでそのまま放っておいて寝てしまいました。

 通報くらいするべきかも知れませんが、十代の学生でしたからあんまり深く考えず、「まあいいや」

 みたいな感じです。


 今にして思えば、真夜中に一人暮らしの女の部屋をガンガン蹴りながら大声で怒鳴る男性はちょっと怖い様な気がしますね。


 ちなみにそのアパートはその後更に癖の強い住人が引っ越して来まして、彼はその方とのバトルに負けて引っ越してしまいました。

 何せ安普請。夜中に騒いでいたアルコール中毒のおばさんに彼が凸り、十倍くらい怒鳴られて、すごすご帰って行ったのも、よく聞こえたものでした。




公式自主企画「怖そうで怖くない少し怖いカクヨム百物語」

に向けて書かせていただいたものを再録致しました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る