5 転校生
宵町くん、有明くんとは途中から少し離れて登校した。
シェアメイトとは言っても、さすがにちょっと気まずいと言うか、変な目で見られるのが嫌と言うか。
そこは2人とわかってくれたみたい。
それにしても、何で2人はうちのシェアハウスに来たのかなぁ。
芸能人とか子役とか何か?
それとも、ご両親の関係?
また今度聞いてみよう。
下駄箱で上履きに履き替える。
「おはよ、瑠愛」
横から声をかけてきたのはシュウ、こと
小学生の頃から仲良くしてくれる、とても話しやすくて優しい、物静かな性格。
気がつけばお互い下の名前で呼び合うようになっていた仲だ。
「おはよう、シュウ」
私が答えると、メガネの奥の少し眠たげで切れ長の瞳が少し見開いた。
朝だから眠いのかな?
「あ、そうだ。シュウの新作、読んだよ!」
シュウは少し呆れた表情になる。
「知ってる。投稿した瞬間通知が来たから。相変わらず速いね、気づくの」
のんびりした声で話すシュウ。
こっちまで眠くなるからちょっとアレだけど。
「えへへ。続きを早く読めるように通知はオンにしているんだ」
「へえ。俺は他の通知がうっといからオフにしてるわ」
シュウはとあるサイトのネット作家。
週間ランキングにも載るくらい人気で、設定も表現も全部すごいんだ。
ちなみに、魔法バトル系の小説を書いているて、私は必ず読むようにしている。
シュウは1日に1話は必ず書くから毎日続きが楽しみなんだ。
「そういえば、転校生が来るの知ってる?」
「え、転校生?」
「うん。うちのクラスと、隣の1組に来るらしいよ」
……そ、それって、宵町くんと有明くんのこと、だよね。
思わずぎくっとする。
「へ、へえぇ、そうなんだっ!ど、どんな子なんだろうね〜」
しまった、声が上ずった。
そんな私の様子を不思議そうにシュウは見ている。
あ、あ、あ……目が完全に怪しんでる。
シュウはこういうところ鋭いからなぁ。
「そ、そうだ!私職員室に用があるんだった!また後でね!」
「あ、あー……うん……?」
早歩きで職員室に向かう。
危なかった……怪しまれたけど、バレてないよね?
シュウが近くにいないことを確認したら歩くスピードを緩めて、遠回りで教室に向かう。
そっか、宵町くんと有明くんの2人のどちらかが同じクラスになるんだ。
どっちなんだろう。
宵町くんはしっかり者で、話しやすいし、シェアハウスにも慣れたみたいだ。
有明くんはまだ人見知りが抜けていなくて、まだまともに話せてない。
卵焼きは美味しいって言ってくれたけど。
教室に入ると、朝にも関わらず何だか賑やかだった。
少し耳を澄ませると、転校生の話題だった。
視線を走らせると、シュウは1人で席に座り、静かに読書をしている。
シュウは集団より、1人の方が好きだって言ってたな、そういえば。
でも、フレンドリーだから基本誰とでも仲が良いんだ。
「おっはよー、瑠愛!」
「わっ、おはよう、心菜!」
鞄を机にかけ、椅子に座ろうとしたとき話しかけてくれたのは親友の
心菜とは幼稚園の頃からの仲で、サラツヤロングが似合っている。
「ねえ、W2の新曲聴いたっ?めちゃくちゃカッコ良すぎて生きてる心地なかった!」
W2(ダブルツー)。
Wild Wolfの愛称名だ。
大手事務所のオーディションで結成されたゴリゴリ系爆イケの新人ボーイズグループ。
ラップはダークで早口だし、ダンスも速くて激しい。
でも普段は愛嬌たっぷりで可愛くて、そのギャップに落ちるファンが多い。
心菜はW2の大ファンで、私も心菜に教えてもらって、W2ファンになった。
メンバーというより、曲が好きなんだ。
「聴いたよ。カイトくんのパートすごく良かったよね!」
「それな!わかる!顔も良すぎるし、あれで同い年とか信じられない……」
「あはは、たしかに!」
心菜と話していると、他のクラスメイトもやってきて、一緒におしゃべりタイム。
こうやって休み時間はアイドルの話や、テレビ、新作スイーツの話をしているんだ。
数分が経って、チャイムが鳴る。
また後でねーと言いながら席に座ると、担任の先生がやってきた。
うちのクラスの担任は
いつもなら先生が来たらしん、と静まり返るのに今日はざわついている。
「あの子誰?」
「ちょっとカッコよくない?」
「なんか可愛い」
隣の席でずっと1人で読書をしていたシュウがようやく顔を上げて、教卓を見た。
「転校生だっ!しかも男子!」
私の前の席の心菜が振り向いて、きゃっきゃ喜んでいる。
先生の横に立つのはふんわりとやわらかそうな髪に、まるっこいメガネをかけた男子。
顔が緊張で少し強張っている。
……うちのクラスの転校生は有明北斗くんだ。
ということは、1組が宵町くんだ。
みんなざわざわ騒いでいるのに対して、私は不安でいっぱいだった。
「はい、静かに。今日からこのクラスに来た有明北斗くんだ」
串本先生が黒板に名前を書いた。
「……えっと、有明北斗です。これからよろしくお願いします」
緊張で震えた声で自己紹介をした。
やっぱり緊張するよね。
それでもクラスメイトは笑顔で拍手をしていた。
「そうだな、席はあそこ。黒崎の後ろだ」
「……へっ?」
私の席は後ろから2番目の窓側の一番端っこ。
人数の関係で一番後ろは空いていたんだけど、そこに有明くんが座るの!?
余計気まずいんだけど!?!?
「一番後ろだが、視力とかは大丈夫か?」
「あ、はい。大丈夫です」
何事もないように指示された席に向かう有明くん。
クラスメイトはみんな興味津々の目で有明くんを見たり、羨望の目で私を見てくる。
えええええっ、どうしよう!?
星輝く丘に 陽菜花 @hn0612
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