第27話 中川校長の備忘録①


 中川校長は考える。何故か異世界転移した今後の学校の生活の事を。


 生徒や若い先生達の言う異世界小説やアニメとかのヒントやらをベースに試行錯誤をして来たが今のところは上手く回っている。


 我が高の工業高校という特性を活かし食料を得る為に商品を作って売るという行為が無事に軌道に乗って来ているからだ。鋭意、農園も拡大して開拓中である。


 食料を他国(学校の敷地以外は他国との認定だ)に依存する程、何処かの国の政治家程、私は能天気では無い、今は近隣住民との友好関係を築けているが、いつ誰が牙を剥いてくるかは、分からない。異世界と呼ばれる場所で我等は孤立無縁なのだ。


 武装化が簡単に受け入れられたのも敵性生物に囲まれた環境もあるだろう。


 


 先ずは異世界で生き抜く為の商品、我が高の売り物の紹介からだ。


 硝子製品各種類の品質の良さは高い技術格差からくる物だ。当分の間は技術で抜かれる事は無いだろう。


 足踏み式機織り機、足踏み式籾摺機、足踏み式脱穀機などの機械類、コレは自動化でのモーター駆動の案も当然の様に有るのだが、どのみち解析されて真似もされ類似品も出るだろう。


 この異世界では特許の概念は無い様なのだ。


 真似されても便利な物と認識されれば良いのだ。工作精度では圧倒的なアドバンテージがある。普及すればモーターを使った駆動方法で売り出せば良い。


 現時点での動力化案には水力、魔石、化石燃料等を使っても売り単価が高くなるので今は時期尚早だと思う。また既得権益を持つ者への配慮も必要である。急激な近代化には反発を生むというのも頷ける。


 酒はブランデー、ワイン、エール、ウィスキーが主力商品だが、仕入れた物を加工して付加価値を高めた物だ。


 仕入れもしているので反発も少ないし、高級品としての棲み分けも出来ている。錬成による速成発酵で我が高独自の物が出来る日も近い。


 また文化的にも『冷やして飲む』という現代では当たり前の文化だが、異世界には根付いていない。氷の魔法が有るのなら魔石食品冷蔵庫ぐらいありそうなモノだが、超高級品だそうだ。


 コレは魔道具ギルドが有るのかどうかを調べてみたが、各工房が有るだけでギルド形態にはなって無い様だった。王都のような大都市でもないと工房は無いらしい。


 辺境のこの地では我が高の一人勝ちだろう。一般庶民に安い物(普及品)と貴族や大富豪用に高い物(高級品)で棲み分けの販売戦略も必要だろう。


 エールを冷やして飲むのは冒険者達とカーク商会を中心に拡がりを見せている。

特に冒険者達には魔法使いが多いし、一定数での氷の魔法使いがいるからだ。


 今度カーク商会から新しい商売の提案があった、保冷箱をエールと共に降ろすのだ。氷は氷魔法が使える者が飲み屋に氷を補充すれば良い。


 発酵品などでは各種チーズも売りに出している。バターも良質な物が出来ている。

後は様々な植物オイルも圧搾機を使って作っている。


 我が高の圧搾機はモーター駆動のステンレス製だが木製の手動圧搾機をカークの実家に貸し出している。具合が良ければ、多分、村単位で貸し出しするだろうとの事。


 現金収入の少ない村に最初はメンテナンス込みでの貸し出しで商売するというのは実家が農家ならではのカークの発想だろう。


 後、忘れてはならないのが我が高謹製の馬車で有る。車軸を鉄製に変えて荷重に耐えられる様にして、ベアリングで摩擦抵抗を減らし、板バネとゴム代わりのスライムゼリーを車輪に巻いた物でショックを吸収して積載量とスピードを上げる。


 上がるスピードにはブレーキで対応し、この異世界に流通革命を起こしつつ有る。


 何れは魔石モーター駆動になる日も近いが、まぁ、もう自動車だな、先に馬車を売り込めと生徒に言われた。どうも技術革新を大人は直ぐに広めようとするが、まったく生徒達の方が商魂が逞しい。


 それと服飾品で有る。コレは高校内ではモーター駆動の機織り機で布を作りミシンで縫っている作業着や下着類とかだ。デザイン科の子供達がデザインしたこの異世界風な服飾品もいずれ出回るであろうが、先ずは私達の物から揃えよう。


 次に冒険に使う武器や防具などでは、ポリカーボネイトの盾とか威力の有るボーガン、鎧、手甲(グローブ)と足甲(グリーブ)等に使用したアラミド繊維で防刃性と防弾性を高めている。


 トレッキングシューズ、バックパック、刀、ナイフ、大バールなども全て受注生産方式にした。冒険者ギルドで注文を受け付けることにした。


 それで冒険者ギルドなのだがギルドの受け付けに我が高の女子生徒が受け付け業務のアルバイトに交代で行っている。隣りのビアビンゴ村の冒険者ギルドだ。


 何故か受け付けには綺麗なお姉さんが居ないといけないらしい。

 男子生徒の圧倒的な要望だったのだ。


 受け付け嬢のアルバイトには我が高から送り迎え付きになっている。

早速、注文票やら受注票とかで文書管理と経理に革命を起こしているらしい。

これはカーク商会でも興味を惹いてるとか、なんとかだった。


 彼女達のアルバイトグループは色々な情報収集も兼ねている。

 それと佐々木希養護教諭を筆頭とする癒し手のグループだ。交代制で冒険者ギルドに詰めて怪我人などの手当てを無償で行なっている。


 無償なのは異世界の医療事情が不明だからだ。一応は見習いの修行の為ということにしている。コレも情報収集組だ。異世界の薬事情とか医学の事情の情報収集だ。


 癒し手の魔法も現代医学で人体の仕組みを知っている為か、我が高の人間の方が治療効率が良いようだ。


 それに綺麗な水で傷口を洗うなどの行為も傷の治りの早さや腫れによる熱や膿とかの発生の低減にもなる。後は傷を塞ぐ抗菌用のパッド、所謂、バン◯エイドだな。

傷は主にポーションで治すし癒しの魔法が有る為に医学は相当に遅れているらしい。


 それと鉄道計画が有る。川からの石材や石英などの鉱物資源や魚や川海老や蟹などの食材と森林資源の輸送の為に用水路沿いにミニ鉄道を作る計画が有る。


 何時迄も本田組の8tトラック頼みでは、いずれ消耗する。修理部品も我が高では製作可能なんだが、新しい取り組みとして現地の資源流用も考えねば、地産地消だ。


 


 鉄道は電動モーターと雷属性の魔石の組み合わせになる予定だ。何は隣り村にも繋げたいモノだ。子供達では無いが夢は膨らむ。


 

 




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