第22話 JK昇格す


 冒険者ギルドの裏手に納品の為に馬車を回したよ。裏手は倉庫になっていて馬車でそのまま乗り入れられる様になっていた。


 菅野翠こと私は結構、機能的に作られているんだなぁと思う。


 裏手の倉庫は解体場としての機能も備えているようで、血の匂いとか色々な匂いがする、ちょ〜っと臭いし。


 マーガレットさんが奥に居るガタイの良いおじさんに声を掛けた。


 「ウィスパー、納品だ」おじさんはウィスパーというらしい。

 「マーガレット、また大量なのかい?」

 「ああ、今日も大量だぜ」とマーガレットさんが答える。

 「毎度、毎度、大量なんだなぁ」とウィスパーおじさん。ちょっと遠い目かな?


 「毎度大量に狩をして納品を頼んでいるのが彼等さ」と紹介してくれた。


 「「「「こんちわ〜」」」」と皆で挨拶をする。

 「おお、どうも見慣れない顔じゃと思ったの」とウィスパーおじさん。


 「は〜い、今日は〜冒険者登録に〜来ました〜」東麗羅が例の語尾を伸ばす独特の話し方でニコっと笑って答える。

 

 麗羅の必殺技、おじさん殺しの笑顔なんだし、その笑顔にウィスパーおじさんは良い情報をくれる。

 

 「こんだけ納品数がありゃ、昇給試験を受ければすぐに昇給さね」


 「ほんと〜 ですか〜ぁ〜」と、こてんと麗羅が首を傾げ笑を溢す。彼女が無敵な所はコレを地でやっていて作って無い所作だということだ。


 我が友ながら無敵で罪作りな親父殺しだと思う菅野翠だった。


 「ウィスパーは相変わらず若い娘にはサービス良いさね」

とマーガレットさんが此処ぞとばかりに揶揄うが、是非も無しと翠は思うのだ。

異世界でもJKの笑顔は無敵だし。


 そのうちに麗羅のスキルにおじさん殺しとか芽生えたりして。


 納品を済ませて、納品数を書いた紙を受付に持って行く。コレで換金だ。


 マーガレットさんが受付のおじさんに声を掛ける。

 「シャーウッド、この子達の昇格試験を頼むよ」

 受付のおじさんはシャーウッドさんと言うらしい。


 「なるほどのぉ、何時もこの数を狩っているのか?」

 「なら昇格試験を受けるか?」

 「ゴンザレス!試験だ」と受付のおじさんは言う。


 「おうよ」と返事をするのが、コレまたガタイの良いおじさんだった。

 『うん、ここはおじさんしか居ないのね』と翠は思った。


 手で付いて来いと合図するゴンザレスおじさんに付いていくと塀に囲まれた広い広場に着いた。訓練場だということだ。


 「さてと、得意な得物を持ってかかって来な」

渋い声でゴンザレスおじさんが木製の得物の入った箱を示して言う。


 「では、私から」一番手はおじさん殺しの麗羅が行くようだ。


 「準備が出来たらいつでもかかってこい!」

とゴンザレスおじさんが言った瞬間には麗羅が動いていた。


 ぴたりと剣先が喉元で止まっている。

さっすが〜麗羅だ、瞬殺だ。物理的にもおじさん殺しだ。


 「どうですか?」と静かに麗羅が問うと喉仏がゴクリと動き、

 「ご、ごうかく…」とちょっと顔色が青いおじさんが答える。 


 「次よろしいでしょうか?」と剣士の林先輩が問う。

なんと次の林先輩、香川先輩、律都君と連続して圧勝だったよ。


 私こと菅野翠の場合はボーガンはやめてナイフ使いとして短剣にしたがコレも圧勝だし、異世界に来てからの身体能力の上がり方は現地の人より上を行くみたい。


 短剣使い若しくはナイフ使いなのはボーガンで接近戦を挑まれた場合の為に麗羅に特訓を受けてた甲斐があったね。


 ゴンザレスのおじさんはもう涙目だし、体育の山本先生は手抜きをして暫く打ち合っていたけど、結局は一本勝ちだった。


 佐々木先生は癒し手なので格闘実技は無しでボーガンでの的当てだったよ。

10連射でハズレ無しだもん、さすが我が高校特製のボーガンだよ。


 なんとゴンザレスさんは元C級冒険者なので、C級に圧勝したから私達もC級かとも思ったんだけど、結局は全員が昇格でサクッとD級になった、登録日初日での昇格にはこれで限度だって〜 まぁ、いっか〜なぁって感じだし。


 2階級飛び越えて特進なのか? って、普通だと死んでるわ。


 因みにアルテミスの涙とザクスンの牙の皆さんはB級の冒険者だ。


 彼等の装備も我々との付き合い以降、変わって来ているのよ。


 先ずは足元、この世界ではサンダルか、凄く硬く履き辛い革靴なんだ。


 サンダルは足の保護という面でどうかと思うし、固い皮は防護の面では良いかもしれないが足が痛くなるし使用感が非常に悪い。皮膚の保護の為に靴下を重ねて履けば蒸れるし水虫になるわで良い所は無いよね。


 それが現代知識を詰め込んだ足首まで覆う柔らか素材のトレッキングシューズに変わっている。足先には保護というより武器として鉄板が貼ってあるし、足裏には保護の為にアラミド繊維を織り込んで足裏を保護してる。勿論、素材システム化が大活躍なんだよ。


 あと防具関係も格安で支給しているよ。


 鎧は従来から有る革鎧に防刃防弾使用で軽いアラミド繊維製を貼り付けている。

手甲(グローブ)と足甲(グリーブ)にもアラミド繊維は使用している。


 あとは盾だね、ポリカーボネイト製、強化プラスチックにアルミを積層した複合装甲盾。軽いし凄く丈夫な盾になった。


 それと頑丈な麻製のバックパック鞄。背負う為に咄嗟の時に両手が使えると評判なんだ。手に持つより量も運べるしね。


 この異世界には片側掛けの背負い袋しか無いんだよなぁ。

あると便利だよね、バックパック!


 


 


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