第15話 二回目の商談③


 スライム液の採集依頼は冒険者ギルドを通さなければならないのでカークが代理で請け負う事になった。隣りのビアビンゴ村で依頼を出すことにした。


 スライム液の採集以外で冒険者指導という依頼もあった。

 要は魔物の種類と危険性と狩り方といった初歩講座であった。


 これは冒険者『ザクスンの牙』が一旦、帰りの護衛が終わってから請け負う事となった。彼等には冒険者指導に来た時に余った馬車の回収も頼む事にした。


 馬車の回収時にスライム液採集用容器を渡すとのことだった。


 荷物の積み込みが始まった。

 板硝子は10枚づつ木枠でクッションを挟み込んで梱包されている。

 タンブラー型のグラスはペアで仕切られて綺麗な木の小箱に入っている。

 細かな装飾の彫刻で飾られ、何かの塗料で綺麗に塗られている。


 チューリップ型のグラスは5脚づつ箱に入れてあり、中の仕切りで動かない様に脚を固定されている。

 

 これも同様に装飾されており、コレだけで結構な値段が付きそうだ。

 箱だけで大銀貨の1枚や2枚はいきそうな程の見事な小箱だ。


 至れり尽くせりとはこの事だ。次回からは全てこの梱包が付くとの事。


 さて今回は冒険者が来たので魔物の魔石とか牙とか毛皮を冒険者ギルドへの持ち込みを依頼される事になった。


 魔石は売れるけど魔道具のエネルギー源にもなるよ、と言うと研究してみると返事が返って来た。売るのは角と牙と毛皮になった。


 代金は後日来た時で良いと言われ手数料として2割を収めてくれ、と言われた。


 中川村長はカークとザクスンの牙とは専属契約を結ぶ事にした。

 何せ、高額商品の輸送だ。度々、商人や冒険者が変わるより同じ信頼の於る商人や冒険者が望ましいとのことだった。


 そりゃ、これだけの技術の高い村だ。秘密にしたい事もあるだろう。

 秘匿度の高さは街道入り口のジグザグ路にも現れている。


 信頼の於ける冒険者チームをもう1~2チーム程を紹介してくれとウィンザーに頼んでいた。

 

 ウィンザーは二つ返事で受けた。多分、ブランデーに釣られたのかな?


 ギルドに納品するだけで2割だ数料がハンパ無いだけに良い商売になるだろう。


 提出されたのはホーンラビットの毛皮と角が各100づつ、まとめて出しても迷惑だろうとの事で、毛皮は綺麗に鞣されていた。


 ホーンラビットの毛皮は状態良なのでたぶん銀貨5枚だろうとの事で金貨5枚分。

 ホーンラビットの角、銀貨1枚。金貨1枚。

 運ぶだけで金貨6枚の2割で金貨1枚と大銀貨2枚、美味しい仕事だと思う。


 肉は自分達で? と、聞くと加工食品にしたとの事。


 エールを出しますから、ちょっと酒のツマミにどうぞと持ってきて奨められた。

ホーンラビットは兎の魔物だが野生の兎より魔力のせいなのか、ねっりとした旨味がある肉だ。


 その兎肉の干し肉と腸詰肉が持ってこられた。

干し肉は普段、我々が食べている干し肉と違い肉質がソフトに仕上げられている。 

 

 味も塩辛く無くて、スモーキーな香りがした。何かのハーブが旨味を増している。


 茹でてある腸詰肉はプリプリの歯応えが堪らない、腸詰肉にもハーブが使ってあってとても美味しかった。


 極め付けはエールだった。

 すっきりとした味わいで、所謂、雑味が無い。

 何故こんなに旨いんだ。と聞けば巧みの技ですと中川村長は笑って答えた。


 『何のことは無い樽詰めのエールを学校で良く濾して、大麦のクズなどのゴミを 丁寧に取り出し、オリゴ糖、アミノ酸、有機酸、ミネラル、タンニンなどをバラン ス良く素材システム科で調整して味付け直した物だったのだ。作業は生徒だが味見 は先生だ(笑)』


 それにエールは常温が良いとされるが、そこは日本人、6°cに冷やしてある。


 瓶に詰め直されたエールをグラスに注ぐと初めて呑む冷えたエールを皆んな旨いとぐびぐびと呑んでる。


 冷えたエールでタンブラーに水滴が旨そうに流れる。

何もかも、初めて尽くしにカーク達は酔った。酔い醒ましにお茶を出された。


 大麦から簡単に作れるという、良く水洗いした大麦を良く乾燥させてからフライパンで炒った物を煮出すだけだという。


 麦茶と言うらしい、お袋に教えてみるか。


 次からの取引も楽しみだ。色々な商品があるが勿論、1番は硝子商品だ。

馬車は月に3台づつなら金貨20枚で販売可能との事だった。


 積載量は⒈5倍になる優れ物だ、先にウチに販売して貰う事になった。


 重量が重くなった分、ブレーキの重要性が増すが手動式じゃ無く足踏み式というのが操作性が良い事が利点だった。


 慣れは必要だが両手が空いてるのが緊急時にとても都合が良い事にも気が付いた。


 コレの荷馬車でコンボイを組めば4台で6台分の荷物が運べる。乗り心地も抜群で揺れも少ない、荷物の痛みも少なくて済む。 


 これから時代はこの荷馬車だ。物流革命が起こるとは言い過ぎだろうか?

次の帰りには新しい荷馬車が3台になる。次回に回収する1台はザクスンの牙に売る事になった。コレで次は彼等だけで魔物の取り引きが出来るだろう。


 彼等も定期的にマイスター村との付き合いが出来た訳だから都合が良かったみたいだ。何といってもエールとブランデーに惹かれたのだろう。


 我等と彼等はエールとブランデーを10ℓの小樽で分けて貰えた。瓶詰めだとその分、高いからと言われエールが大銀貨1枚、ブランデーが金貨1枚という安さだった。


 ホーンラビットの干し肉と腸詰め肉はお試し品として1kgづつ貰えた。

1週間以内に食べてと言われた。干し肉はもっと塩辛くすれば日持ちがするらしい。



 我々は後ろ髪を引かれる想いでマイスター村を後にした。



 


 

 

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