第13話 第二回目の商談①


 カークが再びマイスター村を訪れたのは2週間後のことだった。

街道から原野だった部分にも今では立派な道に整備されている。


 前回、草原に立ち入った場所から隠し通路の様にジグザグに道が作ってある。確かに街道からだと草で分かり難い。ジグザグが終わると真っ直ぐな街道より立派な道に仕上がっている。2週間でコレを仕上げたのか?


 そして街道より4km入った所に新たな門が作っていた。工事中の人間が内へ入れと誘導してくれる。作業中の人間以外に警備にあたってる人間が居るが皆、若い。


 偶然に見つけた、要塞の様な村、3階建ての立派な建物が並ぶ村。

その建物には壁一面にふんだんに硝子の窓が使われている程、豊かだった。


いつ出来たかも分からない隠れた村、マイスター村と呼ばれる硝子産業の村。


 助手のレグスが『あれっ?親方なんか建物がありますよ』と言った時には俄に信じられなかった。だが、彼は目が良い。


 ほぼ満載の荷馬車だが大き目のに買い替えた際に2頭立ての馬車にした。大きな投資だったが草原で轍を取られる事も無く吉と出たようだ。


 そしてマイスター村という謎の多い村に出会った。

村を見つけたレグスには特別に賞与を出してやった、村の場所の口止めも含めて。


 謎の多い村であるが上手く付き合えば、旅商人の私でも大店を出すのを夢では無い


 一括で商品を卸した商会とは彼の希望通りの金貨32枚の商いになった。


 そしてそれは次の注文へと繋がった。受け付けた注文の購入資金は硝子製品を降ろした商人から借りた。15日で1割という高利だが、街の高利貸しよりかは安い。


 仲間に声を掛けるという方法も有るが、儲けを独り占めしたかった。

だから身内で人を雇った、彼は貧乏農家の次男坊だった。家を出て冒険者にでもなるかという三男坊を雇い、叔父さん一家が去年の冷害で税を払えず隣り村から実家に逃げて来ていた。叔父さんとその息子2人を雇った。取り敢えず叔母さんと姪は親父に幾許かの金を渡し新たな家が見つかるまで面倒を見て貰う事にした。


 合計6名で荷馬車4台のコンボイだった。先頭と最後尾に2名づつ助手席の者にはボーガンを持たせてある。


 頼まれた商品を集める為に拠点とした村から街道を通り約16km程だった。

今回は荷物が多いので冒険者を4名雇った。各車に1名づつだ。

 道中を無事に過ごし跳ね橋のある門を潜った時にはホッとして長い溜息を吐いた。


 初めて来た三男坊と叔父さんとその息子達と冒険者達は吃驚していた。

彼等にしてみれば3階建ての硝子窓の建物など王宮でも見られ無い物だった。


 それに砦と言って良い幅広の水堀と高い塀、それと高い櫓の見張り。

彼等からすれば要塞だった。


 確かに魔物の多いこの未開の草原ならば、それぐらいの備えが必要だろう。


 今回は商品以外にも仕入れに金貨を100枚ほど持って来た。

全部、硝子製品を仕入れる為だったが、カークは又、驚愕の商品に出会うのだった。


 先ずは荷馬車の荷物だ、今回のカークの荷車はコンボイだ。小麦が2台、大麦が1台、エールとワインで1台の計4台で来てる。それだけの儲けと信用を硝子製品の取り引きで得ていた。

 

 各種の種や芋類と豆類は各荷馬車の隙間に詰めている。

 荷馬車4台で約金貨40枚の売り上げになった。

 合わせて金貨140枚の仕入れが出来る。


 荷物を降ろしている間に荷馬車の横に机(木造のをわざわざ作った)を置いて商品を並べている。


 板硝子とグラスもあるがグラスは種類が増えている。

前はタンブラー型だったが、新しく透明なチューリップ型の繊細なグラスがある。

そして硝子のボトルに琥珀色に輝く液体が入っている。硝子製品だけでは無いのか?


 そして中川村長が不思議な物を手に持っていた。

長方形の枠に小さなコマの様な物が付いている。枠は二つに仕切られ上下にコマが心棒を通して収められている、上に一つで下に五つのコマだった。とても精密に作られている。


 そしてコレは計算器だという。計算器という聞き慣れない言葉。

カークは操作方法を教わり、説明書と共に見本として10個程預けられた。


 自分で使うも良し、売るも良し、値段も好きにつけてくれ。との事。

そしてボトルに入った琥珀色に輝く液体は酒だという。


 試飲を進められた。冒険者達も含めて全員にチューリップ状のグラスに注いで進められた。酒精が強いので気を付けて下さいと注意される。一口呑んでみた。


 『‼︎っ、言葉にならない。こんな酒など呑んだこと無い‼︎』

 「そっ‼︎ 村長これはっ‼︎」(カーク


  冒険者も含めて商体全員が吃驚している。口々に『ウメ〜‼︎』と言っている。


 「ブランデーと言います。お気に召しましたか?」(中川村長

 「素晴らしいお酒です。コレは高いのですよね」(カーク

 「カークさんなら、お安くしときますよ」(中川村長

 「おいくらですか?」(カーク

 「カークさんがコレからも専属での契約をしてくれるのなら…」中川村長

 「なら?」(カーク


 「カークさんにはこれからもお世話になりますから一瓶、大銀貨1枚で良いですよ」


 と中川村長こと中川校長は言った。もっと高くしても良いのだが、仕入れたワインを蒸留しただけの酒である。元々のワインの質が良くないのでコレでも中川校長は高いと思っているのだが、この異世界での初めてのブランデーだろうから先ずは普及と価格を抑えた。卸値から売値をどれだけ高くするかはカーク任せである。


 「何本用意出来ます?」(カーク

 「取り敢えず本日は10本ほどで、評判が良ければ次回はもっと用意します」(中川村長


 本当はもっと有るのだが、後は教職員と本田組とか大人組の楽しみだ。




 









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