第11話 商談


 錬金術師でスキル鑑定持ちは複数いるが、その内で一番レベルが高いのは機械科の菅野翠と電気科の東麗羅だった。で二人が呼ばれた。


 二人は魔物討伐でトップスコアを誇りレベル10に達していて錬金術と鑑定を得ていた。商談に鑑定も有用であろうと中川校長は考えて呼んだ。


 佐々木教諭はカーク達から見え無い様にしてiPhoneのメールで二人を呼び出した。佐々木教諭に頼んだのは生徒の能力のデータベース作りで彼女が生徒の能力に一番詳しかったからだ。


 「荷馬車の商品全部では、いかほどの金額になりますか?」(中川校長

 突然の破格な申し出にビックリしながらも暗算で計算をするカークだった。


 カークが暗算をしている様子で『そろばん』も作ったら売れるかな?と考える中川校長だった。


 「え〜と、全部となると金貨11枚程になりますが?」(カーク

 「ほう、例えばこの硝子板とコップは幾らで引き取れます?」売れそうな商品として中川校長は急遽、持って来させた品物を見せる。


 機械科と電気科と素材システム科合同で創らせた板硝子と硝子のコップだった。


 一枚の大きさが45cm角の平板硝子と様々な色の硝子コップだった。

コレは今、建築中の宿舎群に取り付ける予定の板硝子と生活用品のコップだった。


 板硝子はフロート法という方法で作った。


 電気科が電気溶融炉(ようゆうろ)を作り、溶融炉から真っ赤に溶けた硝子は平らな板になりながら、だんだん冷えて透明になり一直線に進んでいく。


 溶融炉から溶けた硝子が最初に流れこむのは、機械科製作のフロートバス(メタルバス)には、金属のすずが底一面に溶けていて、その上をとけたガラスが浮かびながら流れていき、板硝子を平らに作る工程だった。珪砂・ソーダ灰・石灰などの素材集めは素材システム科と錬金術師の鑑定持ちが協力をした。


 魔法と工業の融合作品である。


 生活用のグラスなども作ってあり、それも持ってきて貰っていた。

廻吹き型(抜き型)という工法で有り抜き型さえ作れば量産は簡単だ。勿論、金属金型の製作は機械科だ。

 

 その硝子製品を見てカークは唸り出した。

こんな透明で歪みの無い板硝子など見た事が無い、歪みの無い硝子のグラスに至っては透明以外でも青色、緑色、赤色の綺麗な色で染まっていた。


 とてもじゃ無いが一般に出回る品では無いが、貴族や大商会になら売れるだろう。

売れるとして金貨幾らだ。幾らで売れる。

 

 青色、緑色、赤色、透明のグラスをペアでワンセット金貨4枚以上で売れるだろう。透明なコップも凄いが、こんな綺麗な色付きグラスは見たことが無い。

 問題は幾らで仕入れられるかだ!


 板硝子はどうだ、一枚の大きさもだが、アレだけ歪みの無い透明な板硝子だ、幾らの価値になるだろうか。金貨幾らで売れるだろうか?


 商人カークの頭は目紛しく働く、商品全部を引き渡しても金貨11枚分、手持ちの全財産が金貨5枚と大銀貨3枚と銀貨が8枚で銅貨が20枚に鉄貨が50枚ぐらいか、全財産を叩いても足らないなぁ。仕入れられるだけ仕入れるか?


 とカークが頭を巡らしていると村長と思しき中川という人物から提案があった。

 「急な話しで、其方の都合もあるでしょう。今回はこのグラス4種類と2個づつと板硝子を4枚と交換で如何ですか?」(中川校長


 「それでは荷物全部と金貨5枚を足してお渡しします。グラス各種を2個づつと板硝子を4枚交換でよろしくお願いします。」『グラス1個、金貨1枚で板硝子を金貨2枚で仕入れられれば大儲けだ』(カーク


 「それではそれで。今後共も良い付き合いが出来るでしょう」とにやりと笑う中川校長。校長のiPhoneには翠と麗羅から幾らで売れるか鑑定結果の大雑把な値段がメールで送られていた。異世界鑑定は物の売り買いの標準価格も鑑定出来た様だった。


 彼はグラス一個の仕入れ値を金貨1枚で売値が金貨2枚、板硝子が仕入れ値が金貨2枚、売値が金貨4枚と知ったのだ。


 コレはカークの読みと一致した事になる、異世界鑑定、恐るべし。


 

 そこで中川村長からカークに依頼が入る。


 「そちらの都合が付き次第また食料が欲しいのですが」(中川校長

 「以下程、お入り用ですか?」(カーク

 「この馬車の何台分でも結構ですよ。まだ硝子製品は一杯あります」(中川校長

 「それでは用意が出来次第また、こちらに参ります」(カーク


 「では互いの友好の証にコレをお持ち下さい。次回、お酒も大量に有れば嬉しいのですが、後、金貨分の支払いを各種硬貨でお願いできますか?」(中川校長


 「その件ならば問題ありません」なんとなく黒髪に黒目のこの地方には居ない人種が集団で居る事の事情を察した様にカークは答えた。


 実際にはカークの勘違いなのだが、この建物毎、異世界転移をして来たとは想像の埒外であろう。頻繁にそんな事が起これば理解もするだろうが。


 「それとゴブリンの魔石とか売れますかぁ?」と東麗羅が訪ねる。

 「ホーンラビットの魔石と毛皮と角も有りますよう」と菅野翠が言うと、


 「今回は私の手持ちが全然足りません。次回で宜しいですか?」カークが答える。


 「次回には野菜の種なども欲しいです」と佐々木教諭が言う


 その間にも運動部の連中が集まって来て食糧関連をワサワサと食堂へ運んでゆく。


 中川校長は一番安いボーガンを二つと安い矢を持って来させた。

「コレはウチで魔物討伐用に作った武器でしてね。どうぞ使ってみて下さい」

とボーガンと矢を手渡す。ちょっとビックリした人もいるが、友好の証として手渡された事には誰も苦情を言わなかった。


 「こっ、これは?」(カーク

 「こうやって使うのですよ」中川校長は矢を一本番えて試射をした。


 カークはその簡便な弓矢の様な物に感心した。矢も歪み無く真っ直ぐだ。

全体の工作精度も素晴らしい。価格は幾らだ!幾らになる⁈


 カークは武器は取り扱わ無いので詳しくは分からない。


 これなら簡単にレグスでも使えるし、弓より簡単で命中率も高い。

数回の試射でカークはこの武器の素晴らしさを感じた。


 

「まぁ、ウチは女性と子供が多いのでね。使い易さが一番なんですよ」

「それと備えにもね」「道中の安全を願って贈ります」


 中川校長の笑顔がちょっと怖いと感じたのはカークだけだったのだろうか?


 

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