第7話 武装化計画

 

 会議は続く


 生徒武装化計画は『生徒に武器を持たすなんて』という教育者としてどうなのかというジレンマを教師側にもたらしたが、今まさに、そこに或る脅威が優先された。

 

 ここでボーガンについて解説する。

 クロスボウ『crossbow』は西洋で用いられた洋弓銃で板ばねに張った弦に引っ掛けた矢を、引き金を引いて発射する形状の装置のことである。

 日本ではボウガン『bowgun』とも呼称されるが、これは和製英語で海外ではクロスボウ『crossbow』が一般的だ。ここではボーガンで統一する。


 現代のボーガンは本体(銃部分)が主にプラスチックやアルミニウム、チタンなどの軽量素材で製造されており、リム、弓の部分は概ねグラスファイバー製である。

  ボルト矢はアルミニウムや炭素繊維強化プラスチックなどで作られる。


 尚、素材システム科安倍晋太郎45歳学年主任より提案が有った。

ペットボトル等のプラ廃材でポリエステル繊維を作れるということである。

原材料はペットボトルと同じ、ポリエチレンテレフタレートという化学物質との事。


 この物質を高温で融解し、長い繊維に紡ぎあげたものがポリエステルになる。

コレはボーガンの弦に最適ではないかと、ワイヤーでも良いが廃材から作れるし、その廃材は校内に大量に存在していると。実は授業でリサイクルシステムの一環として小型のプラントが稼働してるとの事。しかも授業で使う分として大量のペットボトルゴミを校内に集積してあるという事である。


 「それに、コレからも大量に出るでしょ、災害備蓄用の飲料水のペットボトル」

との事であった。この提案は即座に採用され量産体制が作られる。


 機械科も大賛成で有る。ボーガンは現代競技では木材部品は少ないが先祖返りというか木材使用も鉄剤の使用も減らす為にエコ設計であった。


 又、矢にも一工夫を凝らして練習用と一般用には木のシャフト(矢の本体)で、高級品としてカーボンシャフトを素材システム科、アルミシャフトを機械科で作る事も決まった。引き金部分などの絡繰りは機械科で鏃と共に実習棟の鋳造施設(何とこんな物まで揃っている) フライス盤で加工して作る事が決まった。


 尚、設計の詳細なデータは情報技術科が提供する事になる。


 作られたボーガンは弓道部を中心に配られる事になる。直ぐに量産体制が作れるだろうが、それまでは古来よりの弓となる。


 ボーガンが量産されれば希望者にも配られる。

ボーガンの利点は弓ほど習熟が必要無い事である。


  剣道部も武装化され有段の希望者には刀を鋳造することとなった。

それと鍔付きの鉄の棒も作られる。コレは作業員の一人が異世界の魔物の来襲時に手近に有った大バール(大きな釘抜きね)を使用して撃退したからである。


 それでもっと大きな鉄棒を手の保護の為に鍔付きで作れないかと太田組の作業員から問い合わせが有り刃物より自傷が少ないだろうと採用された。


 武器ばかりでなく防具も検討されたイメージはアメフト部の防具である。

コレを炭素繊維素材で作ろうという話しである、防刃性能に優れた物になるだろう。


 手甲と膝当て、首周りとレガース(脛当て)などを開発して希望者に希望部分を装備することで決まった。


 武装化も議題は進み、それから学校の周囲の堀の話しになる。

幅3m深さ2mの堀だが掘るだけなら一週間も掛からないとの事だった。

 後は掘った土をどう盛り上げるかだけだった。フェンスやブロック塀を芯にして土を盛り上げる案とフェンスやブロックの反対側に盛り土をするかで話しが別れた。


 ブロックは対岸側でフェンスはフェンス自体を埋め込み強化する方法で纏まった。

要所、要所で射場兼見張り台として建築用足場材でこの簡易な櫓を設置する事になった。見張り台上部は万が一ゴブリンアーチャーなどの弓を使う種族が現れる場合もあるので弓避け用の盾を装備する事となる、コレら提案は麻生君と監督の有栖川さんが中心に纏めることとなった。


 学校の周囲の堀が終わったら、Ikm先の川から用水路を引く事が決定した。

それと同時に森林探索と木材資源調達と食材探しとなる。


 いつ前の世界に帰れるのか帰れ無いのか、この異世界で生活出来るのか不安を抱えながらも前向きに進んで行こうと議論は白熱していった。

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