第2話 その時、彼女達は

 

 菅野翠(すがのみどり)は放課後の部活の為に武道場の横にあるクラブハウスで道着に着替えて弓道部の射場へと向かっていた。


 翠は今年17歳になる県立の工業高等学校の機械科に通う高校2年生の女子学生だ。機械科で女子と思うかもしれないが、機械科では機械加工の基礎基本から先端技術のコンピュータを利用した設計・加工(CAD/CAM)までの知識と技術を習得するのである。昔の油塗れの職場とは違っている。


 そもそも機械技術は、あらゆる産業の基盤、基礎になっており、その役割はますます重要になっている。また、近年のICT(情報通信技術)を用いた技術の発展により、これらの知識、技術も必要になっている。


 これまでの、機械加工の基礎である旋盤、鋳造、溶接だけでなくICTを用いた2次元・3次元CADやレーザー加工機、マシニングセンター、NC旋盤などの先端技術の知識・技術の習得を得られるので理系加工(もの作り好き)女子には人気なのだ。


 実際に彼女の実家は自動車メーカーの部品下請け工場だ。部品下請けとはいえ独自の技術で世界的な特許も持っており『ただ上の言う通りに物を作ってるだけじゃ、イカンけん。』『自分等だけの技術が必要じゃ』と語る祖父の影響が大きいのだろう。


 技術者としては祖父、経営者としては父親の背中を見てきた彼女が工業高等学校の機械科に進学したのは祖父の血が色濃く出たものと思われる。


 父親は普通科→大学工学部か商業科で家業を継いで貰いたかったようだが、

工業高等学校に進んだ。尚、息子は居なくて翠の下には妹が二人いる。


 翠は所謂、JKであるのだが、友人達からはちょっと『変態』と言われる女の子だ。JKなのに『変態』とは、コレ如何に⁈


 別にイヤラシ意味では無く彼女は鋼命(はがねいのち)の女の子なのなのである。


 かなりの美少女の部類なのだが鉄について熱く語る時の彼女の、によによ笑いはカナリ引くモノがあると友人達は語る。

 

 彼女に言わせると『鋼の光沢とこの硬さが堪らにゃい』のだという。

 

 放課後、クラブ活動に行く前に他科の男子生徒から愛の告白を受けかけたのだが、愛を語ろうとするインテリアデザイン科の麻生律都(あそうりつと)君の愛の告白を遮り、滔々と鉄に対しての愛を語り、見事に彼の意思を圧し折った。


 彼の告白も入学以来15戦15敗なので、周りも温い目でしか見ない。


 彼女の部活の弓道の腕は個人で県大会の上位に入るという中々の腕前である。

 部活の為に武道場に向かう途中で友人の東麗羅(あずまれいら)と合流する。

 

 彼女は剣道部に所属してい女子で学科は電気科だった。実家は様々なバッテリーや発電プラントを製造している工場だった。跡取り息子は居るが、彼女も家業が大好きだった。


 学科も部活も違うが彼女達は中学校時代からの仲の良い友人だ。

二人共、実家の家業を継ぐかは分からないが進学にあたって家業が影響しているのは間違いないだろう。


 「なぁに、又も麻生君を振ったのぉ〜」緩〜く語尾を伸ばし麗羅が訪ねる。


 「いやいや、愛を語ろうと麻生っちが言ってきたから鋼愛を語っただけじゃい」

 「そしたらの麻生っちが突然項垂れて去って行きおっんじゃ」

と首をコテンと傾けて彼女は語る、その姿はカナリ可愛いらしい。


 彼女は鋼への偏愛と共に天然という二族性をお持ちのようだ。


 そんな彼女に麗羅は呆れた様なため息を吐きながら

「まぁ、アイツも懲りない奴よねぇ〜」と15戦全敗の同級生を評する。


 そんな女子高生達が連れだって、武闘館に続く渡り廊下を歩き出した時に、突然それは怒った。


 上の方より突然、眩い光が煌めき、そうまるで魔法陣の模様の様な紋様を形作る。



 そして、その紋様は辺り一面に煌めいた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る