ある晴れた日に異世界転移は突然に起こる。なんで工業高校が転移するの。

奇譚亭狂介

第1話 現代の神隠し? 高校消失事件

 此処は極東の日本、中国地方と呼ばれる地域の瀬戸内地方の高台には県立の工業高等学校がある。対岸には神の島とも呼ばれる有名な島が在る。


 そして怪異は始まる。



 事件の起こる前に対岸の神の島と呼ばれる島の山、弥山(みせん)で怪異が有ったとその島の古老は語る。


「弥山の松明(たいまつ)って言うてのぅ。弥山に火が揺れて見えることがあるんじゃ。守護神の火とも言われとるんよのぅ。人が持つ松明より大きうて赤い火でのぅ。松林の中を飛び交うんじゃ。それがのあの事件が起こる前の晩じゃ。物凄い数の松明が見えたと言うのじゃ」


 「それと弥山の拍子木(ひょうしぎ)じゃ、誰もおらん山ん中で真夜中に拍子木の音が聞こえるいう言い伝えが有るんじゃ。天狗のしわざじゃろうてぇ、いう話じゃが、昨日の晩には狂った様に鳴らされる音がしたと言う話じゃ」


 「んっ? 確認はせなんだかって言われてものうぉ、マスコミさんはそない言うが、ワシらぁ、神鴉(おがらす)さんの祟りかもしれん思うて、あの日の晩に山に登って確かめた者はおらんよ」


「ただ夜中に光が見え、音が聞こえたっちゅう話じゃ。アンタらで山ぁ、登って確かめたらいいがぁ」


 とその古老は地方局のTVアナウンサーに答えた。

これは事件解明に何ら目処の立たない現場に一層の混乱を加えた。


 

 2025年の初夏の陽射しが少しキツくなる季節の放課後、突然その学校の在る場所に天空より眩い光が瞬いた。


 下校途中で事件に巻き込まれ無かった生徒(オタク?)はまるで天空より光る魔法陣が舞い降りてきて異世界転移だと言い、ある生徒は空から眩しい光が降りてきたとか様々な証言をした。


 異世界転移と言った彼は『畜生、俺も転移したかったぜぇー‼︎』と叫んだが、その部分は放送では見事にカットされていたという。


 そして光が収まった時には学校の姿は何処にも無く、其処に有るのは唯、望洋と広がる草原と其処に住まう攻撃的な奇妙な生物達だけであった。


 その生物達の姿は攻撃的な性格と同様で異質だった。


 一見、兎の様な姿をしているが頭に角が生え、とても筋肉質な体型をしていて可愛いさなどカケラも無い兎の様な生物。


 又、或る生物は身長150cmぐらいの小鬼の様な姿で緑色の皮膚を持っていた。腰に薄汚れたボロ布を巻き手には棍棒とか錆びたボロボロの剣を持っていて、下校途中の生徒や眩しい光に何事かと家から出て来た学校の近隣住民達を襲ってきた。


 その生物は異世界の物語と言えば定番中の定番と言われる生物達だった。

小鬼の様な生き物はゴブリンと角兎はホーンラビットなどと呼ばれる生物達だ。

所謂、ラノベ等で魔物と呼ばれる生物達である。


 通報により警察官がやって来て拳銃により異生物を射殺し殱滅するまで重症者を含む多数の怪我人を出した。


 意外と下校途中の生徒達には重症者は少なかった。事件に巻き込まれた数は一般住民よりは多かったのだが、流石というべきか現代日本の学生達、すぐさま其れ等の生物達が異世界物では、お馴染みの魔物達であると直感しすぐさまに逃走や防御行動を取ったからである。


 学校の周りをランニングしていた柔道部の部員達の活躍による事も大きかったと言われる。彼等はゴブリンに襲われそうになっていた女生徒を見るとすぐさま救援に向かったという。


 そのおかげで、その女生徒は薄い本などに描かれる様な事態には陥らなかった模様である『いやその実は…』とか暫くの間にネットを賑わせた。


 最終的には自衛隊が学校の有った場所の草原を封鎖したその後も、その混乱は続いた。立ち入り禁止区域に指定された其処は厳重にフェンスで覆われてから異世界生物の掃討作戦が自衛隊の手で行われた。


 尚、掃討された異生物達は徹底したCBR対策の元に各研究施設へと送られた。


 その後にK市に駐屯する自衛隊の第13特殊武器防護隊による徹底した科学防護、放射線調査やら地磁気調査を行なってから自衛隊員の護衛の元に科学者達の現地調査が始まった。


 長閑な瀬戸内の高校を襲った怪事件! 連日マスコミの加熱する報道は続くが…

誰も正解などには辿り付けない。


 それよりも日本の何処にこんなに異世界専門家と称する評論家達がいた事に驚きの声が視聴者より上がる。


 連日、『ああでもない、こうでもない』と各論が交わされるが、何も証明やら解決などには結び付かない。


 その中でも異才を放つ理論を構築したのが山◯某というWeb小説家であった。

『放射線とかを調べても何も解らない。竜脈を調べなされ』と高圧的に司会者に詰め寄ったという。


 その後、盛大に持論を展開する彼は不思議とTVでは見られ無くなる。

後はコメンテーターと称する何の役にも立たない者達ばかりであった。


 高校消失事件と呼ばれる工業高等学校行方不明事件は何も手掛かりの無いままに月日ばかりが経ってゆく。





 生徒、教員等関係者657名の行方は今日も分からない。




 


 

 

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