第28話

鳥はスズメ、カッコウ、ハト、ツグミが確認された。山と森だけど人里が近いからか大型のものは少なそう。時間と場所をかければもっと増えるだろうね。

ウサギはノッテモリウサギ、ネズミはノッテモリネズミっていう安直な名前が付けられていた。正式名称があるのならきっと違う名前が付くのだろうけれど、この国の今の文明ではそこまで細かい分類はなさそう。


それよりもモリウサギもモリネズミも食用可と出た。スズメとかツグミとかって食べられるはずと思って確認すれば当然のように食用可。

ということは食べられる野生動物が多くいるということで狩猟者が立ち入るのではと思ったのだけれど、どうもこのノッテの森というのは好まれていないらしくて、叔母様に聞いてもこの森で獲った獣が流通しているという話は聞いたことがないということだった。

ただ、今後わたしはこの森を支配する予定で、そしてわたし自身の強化計画の中には動物の解体というものも入っていて、これは練習に良いのではと持ちかけているところ。

探索ついでに動物を罠で捕まえて、解体して、調理してということね。

聞いてみると狩猟者の人たちっていうのは商工業ギルドに登録して許可を得て、所有者、要するに州政府か地主かの許可を得た森だとかに入っているのだそうで、そしてそういう人たちはだいたい弓術とか狩猟術とかいうスキルを持っているんだって。

そして当然のように解体は解体スキル持ち、調理は調理スキル持ちっていう役割分担が染みついているらしい。

じゃあ叔母様は料理ができないのかといったらそんなことはないみたいで、実際に調理スキルを使うのではない料理だったらできるという認識みたいだった。

でもさあ、現代日本には罠猟でシカとかイノシシとか捕ってさ、解体してジビエ料理にしたりするわけじゃない。

それってスキルなんてなくても技術さえ身につければできるっていうことなのでは。ということで今後の森探索計画の中に盛り込みます。決定。


その決定もあったし実際に外で活動してみてわかったこととして、わたしに重装備は無理だし軽装備だって大変だってこととか、剣は邪魔としか思えないってこととかね。色々思うところが出てきて、装備を見直すことにした。

世の中には布装備というものはあるらしくて、要するに魔法使いとか僧侶のローブね、あんな感じのものとか、革の代わりに強度の強い糸を使ったり金属片を織り交ぜたりとかっていう発想はあるらしくて、装備品の種類はちょっと調べてもらっている。

武器も剣ではなくて棒とか棍とか短杖とかどうだろうかと検討中。個人的にはいわゆるクラブ、棍棒がいいんじゃないかなと思って。


で、刃物は解体用と調理用の包丁、それから鉈ね。これでいいんじゃないかな。どうだろうとこれも相談中。包丁が難しいかも。調理用のナイフならあるって。やっぱり個人的には包丁かなあと町の鍛冶屋さんに頼むか勝手に用意するかも考えている。

キャンプ用品はどんなものがあるのか聞いてみたけれど、まあ普通のテントとか持ち込む寝具とか調理道具だとかあるにはあった。ただしかなり嵩張る。

やっぱりこの時代のキャンプは軍隊の訓練を想定したものみたいで、そうするとトランスポーター、輜重兵がいるわけで、大荷物になっても大丈夫ということらしい。

ひとまずテントは置いておいて、森の中ということでタープとハンモック、あとは蚊帳が欲しいね。それから焚き火台とグリルパン、金串もあるといいね。どうよ、用意してわたしの荷物に突っ込んで、いけそうじゃない?

広い開放された場所だったら、あの、何だっけ、折りたたみ式の低床ベッド。それからメッシュのテントとか普通のテントに寝袋でもいいや。

あとはマットレスか。空気で含ませるのとか無かったっけ。ああいうのがコンパクトでいいよね。

うむ。妄想は広がるのです。そしてわたしの知識を利用してコアちゃん2号ちゃんが頑張ってくれるとあら不思議、物置に新しい道具が増えるのですね。


問題は湯を沸かすことだった。水源を見つけたら煮沸消毒すれば飲めるじゃない。

でも水の持ち運びはね。水筒は革袋だし、金属製のものが無いのよ。

ただ筒状の入れ物というのはある。陶器とかガラスだね。だからさ、ステンレスボトルの表面だけごまかせばいけないかな。だめかな?いけない?個人的に使うだけだからさ。これは要検討になった。

やかん、というかケトルかな、それはいけるかも。薬師や錬金術師の道具にそういうものがあると聞いた。薬草を煮出すのに使うらしいよ。わたしは湯を沸かすのに使いたいのだけれどね。

楽しいね。人には見せられないような道具が物置に増えていくけれど、いつかきっと出番があるよ。楽しいことを考えるのって本当に楽しいよね。


冒険者として野営の経験もある叔母様と、学校の実習で冒険者を呼んでのキャンプ体験があるお兄様に教えてもらいながらの道具の用意に取りかかってみる。

ダンジョンなら壁も天井もあるから天候を気にする必要はないけれど、今回は森だからね、屋外でのキャンプを想定。それもあまり人の手の入っていない森なのよね。

まず叔母様は屋外でのキャンプ経験はそれほど無かった。

地面が平らなところとか落ち葉を集めてクッションを作ってとかしてからマットを敷いて寝るくらいで、天気次第では布、要するにタープを張るかもという程度。たき火も地面に穴を掘って作るらしい。で、虫対策に夜通し熾火をして、翌日埋める。地面が濡れていたら諦める。おーいっていう感じよね。


お兄様が体験したキャンプは学校から大型テントとかタープとかを持って行って、一泊してきたって。冒険者の人たちが火の管理とか見張りとかしてくれるから、そこまでいろいろなことを気にする必要もなかったし、自分たちは薪を集めたり、鍋でお湯を沸かしたり、鉄板で肉とか野菜とか焼いたりしたってさ。バーベキューかよ。いやでもそんなものか。

さて、一通りお話を聞いたところで考えておいた道具を見てもらうことに。こういうのならあるよっていう話ならいいけれど、無いものは扱いを考えるそうな。

「まずは焚き火台ですね。こう脚を広げて、上に薄く広げた鉄板を乗せる。窪んだ形が作れるのでここに薪を置いて火を付けます。それで脚の部分に金串を置いたり、金網を置いたり、鉄板を置けばそれで調理もできます。ヤカンも乗るのでお湯も沸かせますね。少人数ならこれで充分だと思うのです。地面でたき火をするよりも高い位置になるので調理も楽なのですよ。後始末の時だけ、こちらの折りたたみスコップで穴を掘って埋める、と」

「焚き火台ってこんなに華奢でも大丈夫なのかしら。もっと大きくて重いものなら見たことがあるけれど。だから普通は穴を掘ったり石でかまどを作ったりするのよ」

なるほど。大きなものはあると。もしかしたら小さいものもあるかもですね。

さ、次々。

「そしてハンモックです。こう木と木の間に、ってここだとどうしましょう。あ、テラスの柱で大丈夫そうですね、結んで、結んで、ほら、宙に浮いた状態で安定するでしょう。ここに寝るのです。雨が心配な場合はこの上を覆えるように布を張ることになりますね。それで虫対策ですが、蚊帳です。この細かい網目の布で覆う形を作ります。ハンモックよりちょっとだけ上に吊って、ハンモックの下で縛る。一カ所めくれるようにしておいて、そこから中に入る。よっと。どうでしょう」

「‥‥安定しているようには見えないのだけれど。でも蚊帳?これはいいわね」

「見た目よりもずっと安定していて快適ですよ。森の中で虫対策だと地面の上は怖いじゃないですか。それで少し浮いた状態を作れないかなということでこうなりました。蚊帳は要するに高級なベッドの周りについている薄手のカーテンですね」

ちょっと代わってと言われて叔母様と交代。さっそくハンモックに乗ろうとしてぐらぐらしている。特に蚊帳をめくって素早くは苦戦しそう。

「乗る時にはこつがいるけれど、なるほどねえ、乗ってしまえば安定するのね。揺れるのが意外と心地よいわ」

お兄様が僕も僕もというのでもう一つを別の柱に結んで、こちらは蚊帳無しで体験。低い位置にしたので座って作業もできるよ。

「森の中は木があるので良いのですが、普段使いには足場が必要なのが難点ですね」

「でもいいよ、これ。部屋に欲しいな。足場か、何か考えようよ」

ハンモックは好評ですね。叔母様まだ寝ているし。これも蚊帳も含めても小さくできるのが良いところなので持って行くことに決定かな。

あとは持ち手の付いた金網とか鉄板とか、武器として売っているらしき金串とか、小型のヤカンとか。素材がごまかせるのなら空気で膨らませるクッションとかマットとかを用意したいところなのだけれど、今回は無しで。

問題は保存食。まずは乾パン。それから乾燥させた野菜が大根とニンジン、キャベツ。燻製として牛と鶏のジャーキー、個人的な好みとして鮭とば。酢漬けのキュウリ、塩漬けのキャベツ、最後にドライフルーツ。ピクルスとザワークラウトが許されたら乾燥野菜はいらないかな。

うん、大好評でしたとさ。特にジャーキーとドライフルーツは高評価。乾燥野菜は食べ方が問題っぽい。お湯を沸かして野菜放り込んで味付けしないとで、時間もかかるし大変だねという話になった。

その点ピクルスとザワークラウトは肉を焼いて一緒に食べる。ジャーキーかじって、一緒に食べるができるからね。でもちょっと容器が重いね。香辛料のことを一切気にしなければどれも使って問題はなさそう。鮭とばはそもそもの鮭がよくわからないみたい。ニシンとかサバ、イワシだったらどうだろう。もっと言うとスルメイカとかゲソとかは有りなのかどうか。まあ今回はいいか。わたしがこっそりかじる分には許されるでしょう。


今日はお兄様がお泊まり。なんかハンモックで寝てみたいみたい。まあ蚊帳もあるし、ここは2号ちゃんの支配領域だし安全面でも大丈夫でしょう。

そして明日はなんと、ミルトの冒険者ギルドへ解体の見学に行けることになりました。

うん。森でウサギとかネズミとか捕れるっていうし、くくり罠を持って行って試してみる予定なの。それで捕れたら捌いて焼いて食べてみようかって、すごいでしょう。

そんなわけで解体を見ておきたかったのよね。叔母様も解体スキルは持っていないって言うし、いい経験になるでしょう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る