第17話

現地での住み込みでのダンジョン実験ができるとなれば、あとはダンジョンに詳しそうな叔父様も含めてちょっと情報収集を。

「叔父様、叔母様も冒険者の資格をお持ちなのですよね。それでダンジョンにも入ったことがある」

「そうだな。俺たちはそこまでの実力じゃなかったしランクも足りていなかったから潜れるダンジョンには制限があったんだが、それでも最深部で30階層だったかな、ダンジョンの20階までは降りたことがある」

お、最深部で30階層。結構深いのね。

そしてその20階までは潜ったことがあると。それでそこまでの実力じゃないっていう話になるのね。

「30階層というのは深いのですか?」

「いやあ中級の入り口ってところじゃないか。10階から20階層程度ってダンジョンが多いな。その辺が初級。そこから50で中級。それ以上で上級か。100階層を超えるところは数が少なくてな、この国には1つしかない。で、他の国のものも含めて見つかっている最大が300階超えって言われているところだな」

「お二人の冒険者としてのランク?というのは?」

「そっちも中級の入り口ってとこだぞ。冒険者ギルドのランク付けってもんがあって、Fスタートで最高がA。俺たちはCだな。Cまでは所有者も多い。それでA以上と判断されるとそこから先は星印の数で決まる。まあこの国の最高ランクは星1つが2人だけだが」

「ダンジョンが見つかった場合の対応というのは決まっているのですか」

「お、そこを気にするか。考えているなあ。まず見つかった場合には国と冒険者ギルドに報告する義務がある。だいたいの場合は冒険者が見つけるんでそこからギルド、国って順番に伝わるな。そして一端周辺を封鎖してな、調査が入るんだ。このときも初心者を入れるわけにはいかないからな。CかBで経験者から募ることになる。そこからは状況しだいだ。難易度が高いって話になればAランクを募るか国から誰か派遣してもらうかだ」

うーん。

そうすると最初は中級を想定して20階くらいで作るのがいいのかな。叔母様が住み込みしてくれるのなら確認も簡単だし。

ダンジョンコアまではたどり着けない形にはしたいけれど難易度を上げすぎると人の入りも悪くなるしね。

「あとはダンジョンの中のこともお聞きしたいのですけれど、実際ダンジョンてどんな感じなのでしょう」

「あー、この家がダンジョンなんだっけか。こんなの見たことも聞いたこともないな。ダンジョンていうとな、石組みか素掘りかって言われているな」

石組みか素掘り。なんてわかりやすい2択。よくある石ブロックを組み合わせたやつと洞窟よね。

「石組みの方は通路と小部屋の組み合わせでな、下の階層に降りるのも階段だ。どう見ても人工物なんだが出てくるのは魔物ばかりってな具合でな。素掘りの方はそのまま洞窟だ。こっちは階段はあったりなかったりで構造がわかりにくいことが多い」

「罠とか宝箱とかはどうです?」

「どっちも聞かないな。いや無いってわけじゃないぞ。罠っていっても落とし穴だとか踏むと毒液が飛び出す板だとかは見たことがある。だが少ないな。少ないからこそ引っかかりやすいってことはあるんだが、いかんせん少ないせいでそこまで注意はしない。で、宝箱か、こっちはもっと聞かないぞ。というよりも俺は見たことがないし聞いたこともない」

おろ、そうなのか。宝箱に珍しいものを入れて人寄せにするのは駄目?

「あれは?積み上げた石の下から見つかったことがあったじゃない」

「あー、そうか。あれも言わば宝か。俺たちが見つけたのは宝石だったか。あれは結構な額になったんだよな」

おっと、そういう形でならあると。

でも考えるの面倒そうよね。一つ一つ仕込んでいかないとじゃない。宝箱なら管理が簡単だと思うのよね。あれ、でも。

「もっと聞かないということは存在自体はあることはある?」

「ああ、記録はある。どこだったかは忘れたが箱が見つかって開けたら中から剣だったかが見つかったって資料を読んだよ」

おー、良かった。その路線で行こう。

あとは階層の変化って付けた方がいいかどうかかな。

「木が生えているとか水が流れているとかっていう環境の変化ってあるのですか?」

「俺は見たことがない。が、洞窟ダンジョンの方だが意外と水はあるって話だ。水たまりだとかな。それとこれも資料で読んだだけだが、石の代わりに木が使われているダンジョンだとか、広い空間に木が生えていて鳥が飛んでいるだとか、どう見ても城壁に城門のある場所だっただとか、記録があることはあるぞ」

「本で読んでこんな感じなのかなとか想像していたものとはやっぱり違いますね」

「ん?本か?。あれか、どこか別の世界からやってきたとかいう勇者が世界中を旅してまわる」

「そうですそうです。あれ面白いですよね」

「まあな。まさに冒険て感じで憧れるやつは多いよ。それで本人が言ったとかいう、ここに書かれている出来事は実際に体験したことだって言葉を信じているやつも多い。そして当然のように冒険者ギルドにはその本が山と積んである」

うん。うんうん。

やっぱり冒険よね。ダンジョンだものね。危険をかいくぐってお宝ゲットしてってそうよ忘れるところだったわ。

「あの、そもそもの話なのですけれど、ダンジョンに人が集まるのはどういう理由なのでしょう?宝箱とかではないのですよね?」

「資源と素材だよ。ダンジョンで採れる希少な鉱石だとか魔物の素材、あとは魔石だ。鉱山で掘れるもの、動物から採れるものとはまったく違う独自のもので物によっていろいろな特性があってな、それがよく売れるんだよ」

「魔物の素材って倒して採るんですか?」

「そうだな。魔物ってのは体内に魔石を持っていてな。それを破壊されると消滅する。ステラが見せてくれただろう、さっきの葉が消えるやつだ。あんな感じだよ。で、魔石を壊さずに倒すと死体が残るから、そこから使える部分を取るわけだ。解体スキル持ちが必ず必要だっていわれる所以だな」

なるほど。

稼げるダンジョンにしようと思ったらバランスをよく考えないといけないわね。いいものが採れるけれど強すぎたら駄目だし、弱い魔物はやっぱり稼げないっぽいし。どこかに一覧表になっていないかしら。魔物と採れる素材と魔石の価格。

「さすがに浅い階層だとな、出てくる魔物もスライムとかゴブリンとかだろう、倒したところで素材としては何も得られないから稼ぎにはならなくてな。いやゴブリンなら持っていた棍棒だとかは落とすんだが正直たき火で燃やすくらいにしかならなくてな。魔石は得られるからそれでどうにか食えるくらいか。中層に入るころに一気に質が上がるんだよ。それで初心者は浅層で経験を積んで、ある程度の実力が付いたら中層に入るって流れになるんだ」

うーん、勉強になります。

わたしが作るところも最初は初心者、途中から中級者を相手にするような形にして、それより下は不思議階層を作る方向にしようかな。うんうん。


「一端話はここまでにしてお茶にしましょう。私は何だか頭がいっぱいになって疲れてしまったわよ。ステラはさっきからニコニコしているし、本当にもう」

おっとそんなに顔に出ていましたか。

頬をもみもみしながらお母様を見る。本当にお疲れな様子なのでお話はここまでにしましょう。

おおよその方針も決まったし、あとは追々ね。

「ねえ、ダンジョンを作ったら実験をするのだよね。それは僕も入れるのかい?」

おやお兄様、興味津々なようすで話を聞いていると思ったら入ってみたかったのですね。

そういえば剣術系のスキルを持っていて、叔父様から技とかも教わっていて、そこで冒険の話も聞いたのかな。


───いやいや、ダンジョンに入るには資格が必要で

───でもステラが管理して

───いやいやいや、ダンジョンには魔物がいて戦闘の経験だとか探索の経験だとかも絶対に必要で

───だいたいベルナルドがそんな話ばかりするから

───待ってくれ、そもそも兄さんが俺に鍛えてやってくれと言って


別によろしいのではないでしょうか。

最初は敵性の魔物も置かずに中を見るくらいだから危険も無いしね。わたしとしては是非とも楽しみにしていてほしいですよ。

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