第15話

ステータス画面の言語設定はこちらの言語に換えてあるので見えるはず。

見えているよね?

何だかみなさん反応が無くて不安になりますよ?

お?お?と思って周囲を見渡す。

一様にわたしの方を見つめる視線。その先にはステータス画面があると思う。

「まず、キャリアとギフトは恐らくわたしがこちらに生まれ変わった経緯に関係があるのでしょう。特に意味はないので今は必要ありません。そのほかの2つ、クラスのダンジョンマスターというのが実際にわたしができることで、そしてスキルにあるコアマスタリというものに含まれる機能を使うことでダンジョンマスターとしての仕事ができると、そんな感じなようです」

どうでしょう。

たぶん誰にとっても初めてのことで理解できるかどうか不安ではあるのだけれど、説明としては以上でも以下でもないこれがすべてというような状態なのよね。

どうかな、どうだろ。

「‥‥、あなたがたまに妙に物わかりが良かったり、物覚えが良かったりしたのは、その生まれ変わりということがあったから、なのね?」

「そうですね、そうなのだろうと思います」

「生まれ変わったというくらいなのだし、その、別の人間として生まれて生きて、大人になって、亡くなった?」

「たぶん、としか。わたしもはっきりそうだとは言えない感じなのですよね。たまにポツポツとこれってそうなのかなというような記憶があるくらいで、神様ともっとちゃんと話ができていればはっきりしたのかもですが」

お母様はどちらかというと生まれ変わりの方が気になる様子。

「俺が会った人は転生という言い方をしていたな。確か特別なギフトを賜ったとかなんとか。転生前の記憶もしっかり持っているという話を聞いたことがある」

そうするとわたしのダンジョンマスターも本来はギフトのところに載るのかな?その辺りのことはよくわからん。

でも転生者か。この国にも普通にいるってことはやっぱりそれなりの人数がいるんだろうね。あのときわたしの後からも何人も来ていたけれど、あの人たちもそう変わらないタイミングで転移だか転生だかしているわよね。

「まあな、実際この国だけでも何人もいるくらいだ。ステラもそうだとしてもそう不思議な話ではないが、しかし神もそんな送り出し方をしなくともな。そうすればこんな顔をつきあわせてああだこうだもしなくともすんだろうに」

「私はさ、兄さんたちみたいに会ったことはないけれど、転移者も転生者もいるってのは聞いたことがあるわ。そっちの感想としてはステラも珍しい生まれ方をしたわねってくらいね」

あ、そんなものなんですね。

そして問題はそっちではない方なんですね。まあそうですよね。

「結局、教会やギルドでの鑑定では、ステラにはギフトやスキルは無いという判定を受けるだろうということで良いのかい?」

「そうですね。どこで調べても一緒ではないかと思います」

「それで、そうではない形になる条件というのは何だい?」

「わたしの支配するダンジョンの中かどうか、です」

お父様はここで固まる。

何を聞いたらいいのかわからなくなると思う。

先ほど確かにステータス画面を見た。でもここは自宅であってダンジョンではない。そこで思考が止まる。それはそうだろうね。意味わからないわよね。

「待ってくれ。さっきのステータス画面?の話だよな?あれこれ書いてあったが、あれが見られるのがダンジョンの中だけということか?いや、ここは‥‥」

「ここはダンジョン、セルバ家本家邸宅といいます」

は?という形で叔父様が固まる。

まあね、そうだよね、意味わからないわよね。

「ここ、ここって私の実家なんだけど。ずっとここにあって、私もここで育ったんだけど」

叔母様の頭を抱えるようなつぶやきが聞こえる。

「わたしが生まれてからこれまで5年。時間はあったのです。言ったじゃないですか、いろいろと試してみたって。結果、ダンジョンが作れたのです」

ずっとひたすら聞くだけに徹していたお兄様がすごく興味がありますという顔でこちらを見ている。

つい先ほどで固まっていた叔父様も半身になりながらすごく興味がありそうな顔でこちらを見ている。

男の人ってこれだから、と思ったけれど叔母様も興味がありますっていう顔をしている。これだから冒険者気質の人たちは。


「急にここはダンジョンですと言われても意味がわからないでしょうし、少し説明しますね。えっと、わたしのスキルにはダンジョンの作成というものがあってですね、それを使うとダンジョンコアというものが作れます。そしてそのコアを設置するとダンジョンが誕生するのです」

「ダンジョンコアか、最深部にあるという話は聞いたことがあるな。俺はそこまで潜ったことがないからお目にかかったことはないが、破壊すればダンジョンが消滅すると」

「あ、よそのダンジョンにもあるのですね。だとするとコアを設置することでダンジョンになるというのはこの世界に共通の機能なのでしょうか。わたしはこの部屋に設置してみたのですが、結果としてこの家がダンジョンになりました」

「‥‥、待ってくれ。この部屋にダンジョンコアがあるのか?」

「はい。そこの、人形の中にあります」

みんなが一斉に部屋の壁際に置かれた人形を見る。わたしが抱きかかえられる程度の大きさの赤い洋服を着たかわいらしい人形。

ふっふ。1号ちゃん、注目されていますよ。

恐る恐るという様子で叔母様が近づき人形を手に取って眺める。

ぐるぐる回しているけれど、人形の中に物体としてのコアがあるわけではないから見つかったりはしないのよね。

「わからないでしょう?コアを設置といいましたが、人形の中に溶けて入っていった感じでしたね」

叔母様が人形を元に戻して席に着いたところで次の段階へ。

「ここはダンジョンと言ったところで信じられはしないでしょうし、証拠をお見せしますね」

わたしは立ち上がると窓辺に置かれた鉢植えのところへ。

「この鉢植えはキアラさんが持ってきてくれてわたしも毎日水やりとかしていますけれど、この葉を一枚摘みます。普通に取れましたよね。ここからです。この葉をちぎってダメージを与えます。はい、真っ二つ。そうすると葉はその耐久値を使い果たし、消滅してしまいます」

ほうら、ご覧ください。意味わかんないわよね。

鉢植えから葉っぱを取る。普通。

葉っぱをちぎる。普通。

葉っぱはヒットポイントが0になって死亡する。は?

ダンジョンに登録されているものはヒットポイントが0になった瞬間に消滅する。は??

「そして、葉っぱが消滅した段階で、鉢植えの元々この葉っぱがあった場所に葉っぱが再生されます」

鉢植えの摘んだはずの葉っぱが復活。

死亡した生命体がリスポイーンしたわけですね。なんてゲーム的な処理なんでしょう。

これ、葉っぱは分離するように設定してあったからこの処理だけど、分離せずに葉っぱをアイテム化させて、鉢植えに即時復元の処理をしておけば摘まんだ端から葉っぱが元通りになるのよね。

どうでしょう、と葉っぱの復活した鉢植えを紹介してみたけれど、みなさん唖然呆然と言ったところですか。

さてここでさらに畳み掛けます。

「もう一つご紹介しますね。ダンジョンといえば魔物の存在がつきものですが、当然わたしのスキルでも魔物の配置ができました」

先ほどまで座っていた人を駄目にするクッションのところへ。

わたしを包み込めるくらい大きいのよね、これ。なかなか衝撃的な絵だと思うんだ。

クッションにかけていた布に手を掛け、バサっと一気に払いのける。

「このダンジョンに存在する現在唯一の魔物になりますね。スライムさんです。当たり判定は有り、ダメージ判定は無し。敵性反応も無し。少し体温を下げてもらっていますから寄りかかるととても快適ですよ」

どうでしょう。

人を駄目にするクッション、もとい、人を駄目にするスライムさんです。

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