第11話

家全体、そして敷地まで含めたダンジョン化には案の定1ヶ月もかからなかった。

おかげでポイントは瞬く間に貯まって、コアちゃんと相談しながら要素の解放を進めていくことができた。


情報の収集や整理なんかはコアちゃんに丸投げしていたけれど、やっぱり家のダンジョン化はとても効率が良くて、今後もこの、領域のダンジョン化というアイデアが有効活用できそう。ポイント稼ぎ以外にも情報収集という点でとても有効で、ダンジョン内の設置物、持ち込まれる物、交わされる会話から領地経営や国家の情勢、社会の情勢と幅広く知識を蓄えることができた。


そんなこんなな日常も、5歳の勝負の時まで1年を切りました。

わたしもすっかり立派な子供に成長したことで、お母さんやメイドさんたちの監視も緩くなってきて、少しずつこの世界のことを勉強したり、スキルの確認を進めたりということに時間を使えているのだ。

なんと言ってもスキル検証の次の段階をどう設定するかを決めていかないとなのよ。


『ご家族にスキルの説明ができるのかどうか、どこかで本格的な実験を始めるべきではないかというのは重要な問題になりそうですね』


ね。

さて、そんなこんなな情報を整理しよう。


一人遊びが許されるようになったのを絶好の機会として、解放した要素がどんな影響をもたらすのか実験できたことは良かった。というか一人遊び風にしないとまずいような結果ばかりだった。わたし自身をダンジョンのボスに見立てることができたからね。いろいろ試してみましたよ。


うん、想像はしていたけれどダンジョンマスター、だいぶやばいです。

いろいろあるのだけれど、ひとまずわたしが自分の手元でこっそり確認できる範囲でもだいぶやばい。感想がやばいとかこれはダメとか、そんなのばっかり。

まず、ダンジョンそのものに当たり判定とダメージの有無が設定できる。

当たり判定をオフにすれば透過する。

ダンジョンに登録されている物品1個ずつ、どころか物品1個を分割しての詳細設定までできて、壁のレンガ1つずつとかにも設定ができて。要するに通り抜けられる壁とかの設定用なんだけど、それで設定ができるからって試しに自分の手を透過にしたら物が持てなくなって、うえってなった。少なくとも自分に対してはこれは全体でオン。やばい。


ダメージを無しにするとケガとかしても自分の体力が減らないことが確認できた。

まずダメージを視認できるように体力表示をオンにして、したら自分の体力がヒットポイントバーみたいな形で表示されて、その横に5って出た。

おーゲームっぽいってなったのだけれど、このバーの長さがパーセントで100だと思っておいてほしいとの説明。この長さで100なのね、なるほどって。それで5っていうのがわたしの現在のヒットポイントだっていう。5か、5なのね。少なくない?って思ったのだけれど、レベル1の4歳児と考えればこんなものというお話でした。

この体力表示がダンジョンの設置物にも対象を広げられたので、積み木1個1個の体力を表示。積み木の体力ってなんだよとも思うけれど、これが15だった。そこで積み木同士をぶつけてみた。ダメージ有り設定で相互にわずかにダメージがあったっぽくて、両方ともヒットポイントは14になって、バーの表示も1ミリくらい短くなった。

これ、子供の力でも連続15回以上ぶつければ壊れるらしいよ。そんな馬鹿なって思ったけれど、そういう仕様だそうな。

すべてのものに物理抵抗力とか自動回復とか設定したり、破壊不可能オブジェクトに設定したりとかっていうこともできるそうな。

そしてダメージ無し設定だと当然0ダメージっぽくてバーの長さとかまったく変化無しになる。ぶつけた場所は少し色が変わっていたし凹んだ?かも?という状態だったので、当たり判定は反映されるけれどダメージは無いって結果らしかった。

わたし自身のダメージ設定も変更可能だったので、これは無しにした。ケガをして体力が減っていくとかはなくなったはず。ボスが無敵ってどうなのとは思うけれど負けイベントということでよろしくお願いします。


それから申し訳ないのだけれど、部屋に飾ってあった花の葉っぱを1枚ちぎって準備。花の葉っぱの体力は1、ダメージ有りの設定でちぎってみたところバーが一瞬にして0に達して葉っぱが消滅した。ぱーっと、薄い黒っぽい霧状になって消えたの。これがたぶんダンジョンのオブジェクトを破壊した場合の結果。

で、恐ろしいのはここから。リスポン設定。待機時間が0から24時間とか36時間とか自由に、あるいはリスポン無しに。

0だと即時リスポン。葉をちぎった花に設定したら一瞬で葉が元通り。細かくちぎった葉は体力がなくなった瞬間にいったん消滅して、それから即、復活した。

もうこの時点でだいぶやばい。


ダンジョンの運営項目に罠、魔物が最初からあったのだけれど、そこへ宝箱を追加した。

なぜ宝箱が最初から無かったのかは謎。神様には宝箱っていう存在が想像できなかったのか?

そして宝箱に編集の項目を追加。デザイン変更で見た目を小さな箱にして、中身は銅貨を1枚にしてみた。銅貨、部屋に置いてあった小さい硬貨。たぶんわたしの貨幣のお勉強用。それを1枚箱にぽいっと。

そして箱そのものの設定、中身を出したら消滅するかをオフに、中身のリスポンの待機時間を0に変更。箱から銅貨を取り出して蓋を閉じて、もう一度開いて、はい銅貨が復活していましたよ。

えってなったのはわたしだけではないはず。コアちゃんはうんうんみたいな反応をしていたけれど、これは他人に見せたらやばいやつ。

だって取り出した銅貨は消えていないんだよ。開けて出して閉めて、また開けて出して、これでお金が増えるのよ。どう考えてもやばい。とりあえずリスポン設定はいったんすべてオフにして棚に上げた。

ちなみに宝箱の設置に必要なポイントは10だった。どうしてこんなことに。


ダンジョンマップの表示。これもだめだった。

まあ表示ができるのはわかる。視界の右下辺りに薄ーく小さく常時表示しておいて、意識すると全面表示になるような細かい設定もできた。表示位置の移動は指でつまんでちょいちょいするだけでできた。

そして侵入者の表示設定も有り。動き回る小さい丸で表して、それを選択すると何者かっていう説明が出る。うん、わかる。あるよねー、あるある。

表示内容の細かい設定ができた。名前、うん。種族、うん?。健康状態、ううん?。スキル、うううん?。体力、ううううん?。なんで?なんでそんなことがわかるの?。

わたしの知識を元に表示項目を細かく作ってみたっていうのだけれど、いわゆるステータス画面ね、あれが表示できてしまう。

試しにわたし自身のステータス画面ていうものを見せてもらったけれど、項目がありすぎて仰け反った。そして数字にして見せられるとわたしの能力値は低すぎた。それはまあ当然ではあるのだけれど。


そのマップ表示を見ていて面白かったこと。最終的な感想としては面白いか?というものだったけれども。

まず地下の貯蔵庫っぽいところの手前の通路にネズミがいて、体力が2だった。わたしが積み木を投げたら2発で倒せるくらい弱い。種族はヴェントヴェールクマネズミ。健康状態は普通、所持スキルは暗視だけ。地元出身かあ。

その手前の階段を上ったところにネコちゃんがいた。種属はアンリオハイイロネコってなっていた。アンリオっていう地方の出身てことかしら。体力は7でわたしよりもある。スキルは敏捷上昇、魅了上昇、ネズミ特攻を持っていた。素早くて、かわいくて、ネズミに強いのね。なるほど。っていやいやいや。まずっくない?わたし、このネコちゃん見たことないんだけど。いやネズミも見たことないけどさ、なんでわかるのよ。

百歩譲って1号ちゃんが把握している個体なのだとしても、でもそれをわたしが、見たこともない侵入者の詳細を把握できるのか。

そしてどうやらこれ、わたしのステータス画面と同じように詳細表示ができるわね。ちらっ‥‥はいダメー。レベル、ステータス、身体的特徴、人格的特徴、装備、呪文、あれやこれや。こういうものは必要があったらコアちゃんにちらっと確認してもらうだけにしよう。わたしがいつも見られる状態にしておくのは良くないと思う。

家族のものだって見えちゃう可能性があるからね、さすがにちょっと遠慮しておかないとだよ。


正直こんなの序の口よ。

神様が何も考えずに作ったせいで、こんな何でもできるスキルがわたしに備わっちゃったのよ。しかもわたしが気がついたあとに修正もなにもこないっていうことは、神様はこの状態をどうこうする気は無い、もしかしたら気がついてもいないし見てもいないし確認する気もないのではと。

これね、できればきちんとした実験をしたいのよね。

屋外の自然を既存施設としたダンジョンとか、地下に潜っていくタイプの一般的なダンジョンを作ってとか、やってみたいのよね。

そこがダンジョンであればわたしはかなりのことができてしまいそうなので、ゲームバランスがね、とても心配で。なにしろバランス調整するのはわたしなのよ。これ、慎重にならないといけないところよ。

実験するにも場所と時間が必要で、そしてそれを得るにはわたし一人ではどうしようもなくて、本当にまずいところは隠しながらでもわたしに協力して実験をしてくれるような人材の確保が必要で。難問よね。そしてそのための鍵となるであろう宣誓式。その結果に対しての周囲の反応を確かめなければ。

楽しみであり不安でもあり、わたしはもうまもなく5歳というこの世界での最初の節目を迎えようとしていた。

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