第9話

大・成・功。

スキル画面、ダンジョン一覧にセルバ家本家邸宅が追加されていることを確認。

さてじっくり検証するためにもベッドに戻らねば、椅子から手を離してもう一度おいっちにさんしっと。

ふーう、今日はよく運動したわね。


ベッドの上まで登らせてもらって、ひっくり返って寝転がって。さあ安心して設定とにらめっこしてみよう。

むむ?

ダンジョン名を選んで管理を選んでと進んで、そこでマップが見られるけれど、これこの階だけ?

これがたぶんわたしの部屋で、部屋の前の廊下で、そしてこっちに行くとこれがトイレで、うーん、わたしが見たことのないこの階全部がマップに載っているのって変な感じ。


『それでは解説いたします。

まず、今回ダンジョン化が実現したのは屋敷のうち2階部分のみとなります。最大で3x3メートルを1ブロックとした、20x20ブロックの範囲内にすべて収まりました。他の階をダンジョン化するためには追加のポイントが必要となります』


そうか、神様も言っていたね、範囲。範囲に収まらないくらい大きな家だったら追加ポイントが必要になったのか。


『そういうことですね。

さて、今回屋敷のダンジョン化を計ったのは、安全に、安定して、一定数のポイントを稼ぎ続けられる環境を整えるためでした。

この屋敷の2階部分には今そこにいらっしゃいます、マスターのお世話をされるメイド様、そしてご両親、お兄様、その他使用人の皆様が滞在されます。

1人につき滞在時間15分ごとに1ポイントです。

そちらのメイド様の滞在時間はいったい1日何時間になるでしょうね?

この階に寝室のおありのお兄様は、いったい何時間の滞在になるのでしょうね?』


え、お、おお?

あれ、みんなこの家の住人なんだけど、たぶんメイドさんたち皆住み込みなんだけど、え、皆侵入者判定になるの?


『ただいま、1ポイントが加算されました』


おや今の時間はメイドさん以外はこの階に不在なのね。ってうわー、侵入者判定だ。ていうことはほぼほぼ24時間滞在なメイドさん1人で1日に、えーと。


『96ポイントになります。そしてこの階にお部屋をお持ちのお兄様はお休みになられる際は当然そのお部屋をお使いになられます。1日辺り100ポイント以上が稼げるということがおわかりいただけましたでしょうか』


はい。

なんということでしょう。わたしがここで日常生活を送っている間にも、このダンジョンがバッチリ稼いでくれるということに。

む、ということは階層追加が1000ポイントだから。


『はい。この屋敷が何階建てかにもよりますが、4階建てだったとしても残り3000ポイントです。そしてこちらにマスター手持ちの3000ポイントがありますね。さ、ここでさらにこの3000ポイントを使用して、ダンジョンの拡張を行いましょう。

はい。拡張を確認。やはり想定通りですね。地上3階地下1階のダンジョン化を確認しました。今後さらに庭部分、敷地全体まで範囲に含めたとしても、1ヶ月かからずに完全に掌握することができますね』


そして常時滞在、出かけたとしても寝るために帰ってくることを考えると、


『ご家族、使用人全員、さらには出入りの人間等、かなりの収益が見込まれます。そしてこの屋敷のダンジョン化にはもう一つ狙いがあります』


何でしょう。

何だかここまでですにでもう随分と都合が良すぎてちょっと怖くなってくるんだけど、聞きましょう。


『情報収集です。

現在、私の知識はマスターの知識、記憶に依存しているため、こちらの世界の情報がまったく足りていません。そこでダンジョン化による、既存施設に元々設置されていた物品もコアの管理下に入るという仕様を利用します』


わー、わー、わかっちゃった。ずるっこだ!


『仕様です』


わー!


『これにより屋敷内に収蔵されている書籍、書類、その他資料等をすべてこちらで管理調査することが可能となります。歴史書や地図、領地の経営記録等があるでしょう。こちらの世界を把握するために貴重な情報源となります』


いやでも確かにそういうのは必要よね。

わたしはまだ2歳だから教育はまだまだ今後のことなのだけれど、そのことを考えても今のうちにコアちゃんに基本情報を押さえておいてもらうのは大事よね。


『スキルについては現状はこんなところでしょう。それとは別に新たに問題になるであろう事象を確認しました。

マスターがお休み中に交わされていたご両親の会話から確認されたことなのですが、こちらの世界には5歳になった時に宣誓式というものがあるそうです。

町の教会へ赴き、神の元に誓うのだそうです。神より授かった命を力をこの世界のために役立てるのだそうですよ。そしてその際に、ギフトやスキルの確認が行われるのだそうです。ギフトというものは神からの祝福で、これは皆にほぼ共通、まれに特殊なギフトがあるものの、それはおおよそ勇者や聖女といった特別な立場の方限定のもののようです。そして力というのがこのスキルなのでしょうね。

問題はここです。

以前にもお話しましたが、マスター自身の世界での使用言語は会話も表記も日本語を使用しています。当然スキルも日本語です。その宣誓式でのスキルの確認がどのように行われるのかはわかりませんが、マスターのスキルがこの世界でどのように表示されるのかということです。

神が設定を途中でやめてしまったため、まともな形でスキル名が登録されているのか、宣誓式での確認時にそれが表示されるのか、あるいは日本語表示が反映されて日本語で表示される、あるいは文字化けして表示されるのかもわかりません。

さらに世界間の非干渉の問題です。もしも鑑定に行われるものが、例えば使用者の魔力を使って動かすという形式だった場合、マスターは魔力を外へ向かって使えるのかということです。これは恐らく使えないのではないかと考えています。そしてその場合はスキルの鑑定自体ができずに失敗するか、あるいは項目が空白となるでしょう』


ああー、そういえば言っていたね。

可能性としてはどういうのが高いのかな。


『宣誓式で確認できるような形で登録されていなければ空白。登録されていれば、この国の人間が確認するのですから読める形でしたらイタリア語。そうなると文字化けするでしょうか』


文字化けするの?


『パソコンやスマートフォンで見たことがあるでしょう。文字コードの違いですね。日本語は特に文字化けしやすいので。

今までは特に気にすることもなく済ませていましたが、今後は気をつけなければならないかもしれません。ご希望であれば表示文字は変えることができますが』


なるほど!

しまったな。そんなこと気にしたことなかったぞ。これまでこの世界の文字をほとんど意識して見ていなかったからかな。

両親の会話を聞いてっていうことは、コアちゃんはこっちの言葉を聞き取れているのよね。私だって何となく理解できているんだから、こっちの言語もきちんと理解できているはずで、でも考えるときは日本語で、うおー、こんがらがる。これ聞いた言葉を頭の中では日本語に変換しているのかな?

はー、考えていると混乱するばかりね。

日本語だから文字化けするっていうことは、こちらの言語は半角英数でできているっていう認識でいいのかな。日本語は全角だからそれが文字化けの原因になるっていう。


『そのような認識でよろしいかと。会話はきちんと聞き取れていますし、あとはマスターが言葉を話すようになった際にも、きちんとこちらの世界の言語で発せられるのかは注意点ですが、それくらいでしょう。実際にパパママはご両親に伝わっていましたから』


そっか、なるほどね。わたしは生まれながらのバイリンガルなのね。

それじゃこれからはしっかり会話を意識して聞いたり、文字多めな本を読ませてもらったりして言葉を覚えていかないと。


『はい。今回で準備は整いましたし、今はまだマスターも2歳です。ご自身の成長のことを意識して過ごされるだけで十分です』


そうね。あとのことはコアちゃんと、ダンジョンちゃん、は違うな、うーん、まあ今後もあるだろうし1号ちゃんとでもしておこうかな、1号ちゃんに任せておいて、わたしは自分のことに集中するね。


『とにかく問題となるのは5歳の宣誓式です。こちらの世界では社会に一歩を踏み出す重要な儀式という扱いのようですし、特にマスターの場合はこのときにギフトはもちろん、スキルも無しという結果が出る可能性が高い。特別な力は持たないどころか神からの祝福も無しとなると、社会的にどのような扱いを受けることとなるのかが不安要素となります。それまでにできる限り家族との時間も持ち、触れ合っておくべきでしょう』


うんうん。家族関係が重要になりそうよね。

まあこれまでの様子から見てもわたしは愛されていると思うし、家族も使用人の人たちも皆いい人ばかりだから大丈夫じゃないかなって気はするけれど。

まあね、周囲の人たちの反応が心配ではあるものね、せめて家族との関係は作っておかないとね。


『はい。そのときまではスキルを使って大きく物事を動かすことは避け、宣誓式後の世間の反応を確認してから次の段階へ進みましょう。それまでにポイントの蓄積、情報の集積を進めていけばよろしいかと』


うん。そうしよう。なんといってもわたしはまだ2歳だ。これからが圧倒的に長い人生だ。慌てずしっかりと自分を成長させていこう。

それじゃコアちゃん、1号ちゃん、これから先はしばらくの間お任せ状態になるけれど、どうぞよろしくね。

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