最終部 繰り返される歴史

 アダムとイブは禁断の恋に落ちてしまった。世界はその罪を赦さなかった。二人は罰として永遠の眠りに就くことになった。

 それから何度百年が巡っただろうか。ある時アダムは目覚めた。自らを眠らせ続けた装置から抜け出すと、そこは彼の知らない星だった。

 空気は澄んでいて、見渡す限り緑に覆われている。足元には色とりどりの花が咲き乱れていた。

 アダムはイブを探した。幸い、隣の装置の中でイブも眠っていた。恐らく装置を稼働させる電力が底をつきたのだろう。イブもじきに目を覚ますだろうと考えてアダムは待ったが、イブが一向に起きないのでアダムはイブに目覚めのキスをした。

「あなたは誰?」

 目覚めたイブがアダムに訊いた。アダムは暫く考えると首を横に振った。

「分からない」

「そうなの」

 残念そうな顔のイブを見てアダムは言った。

「でも、君の名前なら薄っすらと覚えている。ヘレーネ、イブ、アナスタシアの何れかだったはず」

アダムの話を聞くとイブは言った。

「私もあなたの名前なら少しだけ覚えているわ。アデル、アダム、それかルイスよ」

 結局二人はお互いの名前を思い出すことは出来なかった。私達は何者なのか。考えに考えた結果、二人はある結論に至った。

「君はたぶん、二人目なんだよ」

「きっとあなたも二人目よ」

 ううん。この世界そのものが二人目だったんだね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る