第23話 彼氏って言ってしまった…… アイサ視点

「あたし、やらしちゃった……」


 あたしは海の家のトイレにいた。

 「哲くんはあたしの彼氏です!」と大噓を叫んだ後、あたしはトイレに駆け込んだのだ。あまりにも恥ずかしすぎて……


「何やってんだろう……あたし」


 ナンパしてきたお姉さんはあたしの剣幕に、ビビって逃げていった。

 まあそれはよかったけど……


「哲くん、きっと引いていたよね……」


 いくらナンパを撃退するためとは言え、付き合ってもいない女の子から「彼氏」宣言をされたら気持ち悪いって思うかも……

 うん。きっとそう思っているよね。

 

「はあ……すっごく恥ずかしい」


 あたしの顔、今すごく赤くなっているだろうな……

 なんであんなこと言ってしまったんだ。


「あたしが好きなのは、俊樹のはずなのに……」


 今日、あたしは俊樹との距離を縮めるために海へ来た。

 哲くんに俊樹とのことをずっと相談して……


「ああ~~っ! あたしのバカ……っ!」


 あたしは俊樹の彼女になりたいのに……

 いったい何をしているんだろう?

 ……これってもしかして、あたしの心の中では――


「無意識に哲くんの彼女になろうとしている……?」


 それは違う。

 違う……はずなのよね?

 もうあたしは、自分の気持ちがわからなくなっている。


「本当は哲くんが彼氏ならいいな、って思ってるの?」


 あたしは自分自身に問いかける。

 本当のあたしの気持ちを知りたい。

 知らないといけない。


「哲くんは、あくまであたしの軍師さん。だから、ダメだ……」


 あたしはなんとか自分に言い聞かせた。

 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る