第17話 海でいろいろやらかす

「うわ。人がいっぱいだねー」


 浜辺に密集る人々を見て、桐葉が声を上げる。

 俺、桐葉、アイサ、俊樹は、海へやって来た。

 夏休みシーズンだから、当然だが人がたくさんいた。

 

 (やっぱり背景の海は、湘南の海だったか……)


 前世で大学の時にサークルで一回来たな……

 まあその時は陽キャたちの手伝いをしていただけだが。

 

「おい。哲彦。桐葉とアイサの水着、めちゃくちゃいいよな」


 俊樹がボソっと俺に言ってくる。

 桐葉は白地に水玉模様の水着で、桐葉の清楚なイメージに合っている。

 一方、アイサは黒のビキニで布面積が少ない……

 アイサのギャルで大人な感じとよく似合っている。


「そうだな……二人ともよく似合っていると思うよ」

「だよな、だよな! すごくいいよな! すげえ幸せだ~~」


 実は桐葉の水着だけでなく、アイサの水着も俺が選んでしまった。

 桐葉と一緒に水着を買いに行ったあと、アイサからも連絡が来た。

 それでアイサとも一緒に水着を買いに行くことに……


 (主人公の好みに合っていてよかった)


 内心、俺はほっとする。

 桐葉の水着もアイサの水着も、どれが正解だったのか忘れていたし……

 ていうかアイサの水着を選ぶシーンは原作になかった。

 

 ★


「じゃあそろそろお昼にしよっか!」


 アイサが海の家を指さした。

 俺たちは何事もなく「海イベント」をこなしていく。

 ビーチバレーをしたり砂の城を作ったりした。

 桐葉もアイサも、何のアクションも起こさなかった。

 

 (ここまではシナリオ通りか……)


 問題は次だ。

 俺たちはこの後、海の家で焼きそばを食べる。

 そこで主人公の隣に座るほうが、このルートの「メインヒロイン」になる。

 つまり、桐葉ルートなら桐葉が俊樹の隣に座るし、アイサルートならアイサが俊樹の隣に座ることになる。

 ちなみに夢見ルートなら、この海イベントに夢見が着いてくることになった。


 (ここは俊樹の隣に、桐葉を座らせないとな……)


 海の家はひとつのテーブルに椅子が四つ置いてある。

 二人が隣同士で座るのタイプだ。

 俺は他の三人を先導するように店へ入る。


「お客さんいらっしゃい! 何名様?」

「四人です」

「じゃあ、そこを使って!」


 海の家のおばあちゃんが空いているテーブルを指さす。

 端っこの席だ。ここまでまったくゲームのシナリオと同じ。

 

「そうだな……。桐葉と俊樹はそっちに座って、アイサと俺はこっちに座るわ」


 俺は三人に座る場所を指示する。

 そう。こうやって複数で店に入る時、みんな座る場所に迷う。

 そんな時に、誰か座る場所を指示してくる人間がいれば楽だ。

 楽だということは、つまり自分で考えずに済むということで、指示に従うということになる。

 

 (これで無事に桐葉ルートの席になる……!)


 ……と、俺は思ったのだが、


「えっ? 哲彦くん、一緒に座ろうよ?」

「桐ちゃんズルい! あたしが哲くんの隣がいい」

「え……?」

 


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