第16話 推定Fカップ

「どうかな……これ?」


 水玉模様の水着を試着した桐葉が出てきた。

 清楚な桐葉によく似合っている。ほどよく布面積があって男が見てもドキドキしすぎない。

 

「似合ってるよ。すごくいいと思う」


 出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる身体。

 肌は陶器のように白くてなめらかそうだ。

 特にその豊かな胸に、目がどうしても吸い寄せられてしまう。

 たぶんあの大きさは、推定Fカップってところか。


 (おいおい。俺は何を考えて――)


 これはもう仕方ない。男とはそういう生き物だ。


「そう……よかったあ」


 と言いながら、顔を赤らめる桐葉。

 ……そんなに顔を赤くしないでほしい。

 かなり恥ずかしくなってしまう。


「……少し待ってて。着替えるから」

「おう。待ってる……」

 

 俺たちは気恥ずかしくなって、お互いに目線を外した。

 本当なら俊樹が桐葉の水着を選ぶはずなのに……

 なんだか俊樹から桐葉を取ってしまったようで罪悪感を抱く。

 

 (あくまで俺は親友キャラだ……よな?)


 桐葉は俺にとって推しキャラだ。

 ゲームの中で一番好きなキャラ、ということだ。

 しかしそれはあくまでも「キャラとして」好きだったわけで、生きた女の子として好きだったわけじゃない。


「待たせてごめん。この水着買うね」


 桐葉はカウンターへ向かう。

 水玉の水着が俊樹の好みだといいが……


「お客さんの彼女、とってもかわいいですね!」


 横から女性店員が話しかけてきた。

 あ、これ。店員がまだ付き合っていないヒロインを、彼女だと勘違いしてくるイベントか…… 

 エロゲでよくあるやつだ。

 まあ俺は親友キャラだから――


「別に俺の彼女じゃないですよ」

「え? でも、普通、水着を選ぶなんて彼氏さんでは……?」

「いや、まあ、そこは成り行きで……」

「そ、そうですか。なんかすみません」


 選択を間違えて気まずい雰囲気になってしまう。

 早くどこかへ行ってほしいです、店員さん。


「哲彦くん。買ったよ!」

「よし。じゃあ行こうか」


 海イベント。

 平和に終わればいいが……

 嫌な予感がいろいろする俺であった。

 

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