第13話 あたしは変態なのかな? 桐葉視点

【桐葉視点】


「あたし、どうしちゃったんだろ……」


 あたしは家に帰ってシャワーを浴びていた。

 顔に強くシャワーを当てて、なんとか今日の恥ずかしい出来事を忘れようとしている。


 (本当にあり得ない……)


 あたしが好きなのは俊樹だ。

 子どもの頃からずっと好きだった。

 あたしの一番好きなのは、俊樹——


「最近、おかしいかも……」


 頭をわしゃわしゃ洗いながら、冷静になろうとする。

 さっき、電車の中で哲彦くんの肩に顔を埋めて、小動物みたいに匂いを嗅いだ。

 

「哲彦くん、すっごくいい匂いだったなあ——変態じゃん、あたし。あああああああああっ!」


 シャワーに向かって叫んでしまう。

 幼馴染の俊樹にだってあんなことしたことないのに……

 

 (あんな姿を俊樹に見られたら——)


 俊樹の幼馴染のあたしが、俊樹の親友の哲彦くんと密着している。

 これって俊樹的には、あたしが哲彦くんに寝取られたことになるのかな……?

 ていうかそもそも、俊樹は「幼馴染が寝取られた」って思ってくれるだろうか?


「そんなこと俊樹が思うわけないよね……」


 だってあたしと俊樹はまだ、付き合っていない。

 そして哲彦くんは、あたしと俊樹をくっつけるために助けてくれている。

 だからあたしは、俊樹と結ばれないといけない。

 哲彦くんの期待に応えるために……


「本当にそれでいいのかな……? 教えて。哲彦くん」

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