第14話 幕間 エロゲ主人公の日常 俊樹視点
【俊樹視点】
「現実にハーレムエンドはないか……」
打ち上げが終わり、俺は駅を降りた帰り道で、哲彦に言われたことを考えていた。
「哲彦のやつ、妙に勘がいいんだよな」
打ち上げでも全部先回して動いていたし、まるで未来の出来事を知っているみたいだ。
「急に人が変わったというか」
今までは哲彦がバカをやって俺がツッコムという関係だったのに、最近の哲彦はバカじゃなくなった。
「誰か別のヤツが憑依してるとか? はは……」
……と、俺は一人で笑いながら「ハーレム」について真面目に考える。
まず、ハーレムは男の夢だ。
どんな男だって複数の女の子に愛されたい。
女の子たちが自分をめぐって争う……男として承認欲求が満たされる。
「哲彦のヤツ、変なこと言うよな」
俺はハーレムを作ろうと思ったことはない。
なぜか知らないけど、自然と俺の周りが女の子ばっかりになるのだ。
しかも、みんなかわいい女の子ばっかりに……
「俺のせいじゃないのに、ハーレムは諦めろとか言われてもね」
たしかに俺の周りは、なぜか男は哲彦しかいない。
しかもこれは俺が子ども頃からそうで、いつも近くには女の子しかいなかった。
幼馴染の桐葉、アイドルのアイサ、後輩の夢見——他にもいろいろな女の子がいる。
「俺ってもしかして、おかしいのかな……?」
哲彦の言葉が俺の中で引っかかっている。
周りの男子たちはいつも「女の子と仲良くなれない」と言っていたが、俺には理解不能だった。
なぜかいつも俺は女の子と仲良くなってしまう。
男友達は哲彦ぐらいしかいない。
「自然に女の子が寄ってくる……それが普通じゃないなのか?」
歩きながら、ふと俺は立ち止まる。
俺って普通じゃないのかもしれない。
普通の男は、幼馴染の女の子が朝起こしに来てくれたり、生徒会長のお姉さんが「少年!」と声をかけてくれたりしないのか……?
俺にとって当たり前の日常なのだが——
「最近、桐葉は朝来ないな……」
少し前まで桐葉は俺の部屋に毎朝来て、俺を起こしてくれた。
だけど最近は全然来ない。
俺は最近、一人で起きるようになった。
「アイサも、抱きついて来なくなったな……」
外国暮らしをしていたアイサは、朝に教室へ行くと俺にハグをしてくれた。
昔、哲彦に「羨ましい」と言われたが、俺にとっては日常だから意味がわからなかった。
だけどアイサのハグもなくなると、少しだけ寂しく感じてしまう。
「そういえば、桐葉もアイサも哲彦の話ばかりするようになったような……?」
以前は俺が話の中心にいた……ような気がする。
俺は意識したことがなかったが、どうやら最近、俺は中心でなくなってきた、みたいだ。
桐葉もアイサもまず挨拶するのは俺じゃなくて哲彦。
今までと少しずつ「何か」が変わりつつある……
「ちょっと哲彦に話してみるか」
哲彦は俺の一番の親友だ。
ずっとそれは変わらない。
……変わらないよな?
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