第11章:「さっぽろ雪まつり」

 2月上旬、札幌は一面の銀世界に包まれていた。葵と瑠璃は、待ちに待ったさっぽろ雪まつりを楽しむため、大通公園へと向かった。


「すごい人だね」葵が驚いた様子で言う。

「ええ、世界中から人が集まってるみたいよ」瑠璃も周りを見回しながら答えた。


 大通公園に一歩踏み入れると、巨大な雪像が二人を出迎えた。世界遺産や有名な建造物を模した雪像は、その精巧さに目を見張るものがあった。


「ねえ、葵。あそこで北海道の名物を売ってるわ。秋に食べたあの美味しいものも売ってるみたい」瑠璃が指さした。

「そうだね。寒い中で食べるアツアツの料理は格別だろうな」葵も興味深そうに見つめた。


「葵、あれ見て!」瑠璃が指さす先には、アニメキャラクターの雪像が。

「写真撮ろう」葵が提案し、二人で雪像の前に立った。


 シャッターを切ろうとした瞬間、近くにいた地元の人が声をかけてきた。


「お二人さん、撮りましょうか?」

「ありがとうございます」二人は感謝の言葉を述べた。


 写真を撮り終わると、その人は雪まつりの裏話を教えてくれた。


「この雪像、何日もかけて作るんですよ。みんなの努力の結晶なんです」


 葵と瑠璃は感心しながら話を聞いた。


 続いて、二人はつどーむ会場へ移動した。そこでは、様々な雪のアトラクションが楽しめるようになっていた。


「滑り台やってみない?」葵が瑠璃を誘う。

「え? でも……」瑠璃が少し躊躇する様子を見せた。

「大丈夫、一緒に滑ろう」


 葵は瑠璃の手を取り、二人で滑り台に向かった。最初は怖がっていた瑠璃も、滑り終わると大きな笑顔を見せた。


「楽しかった!」瑠璃が嬉しそうに叫ぶ。

「もう一回行こう」葵も童心に返ったように言う。


「ねえ、葵。この感覚、夏のよさこいソーラン祭りを思い出すわ。あの時も初めは怖かったけど、すぐに楽しくなったわね」瑠璃が懐かしそうに言った。

「そうだね。札幌での思い出が増えていくって素敵だな」葵も嬉しそうに答えた。


 雪遊びに夢中になる二人の姿は、まるで子供のようだった。寒さも忘れ、時間が経つのも気づかないほど楽しんでいた。


 夕方になり、二人は温かい甘酒を飲みながら、雪まつりの夜景を楽しんだ。ライトアップされた雪像は昼間とは違う幻想的な雰囲気を醸し出していた。


「ねえ、葵」瑠璃が突然言った。「私たち、本当に素敵な思い出をたくさん作れてるわね」

「うん、そうだね。札幌に来て良かった」葵が優しく微笑む。


 寒さの中、二人の手はしっかりと握られていた。その温もりが、心まで温かくしてくれるようだった。


「来年はもっと上手に雪像作りに挑戦しよう」葵が提案する。

「いいわね。私たちだけの雪像、作ってみたいわ。そういえば、家の菊の苗も順調に育ってるわ。来年の菊まつりが楽しみね」瑠璃が目を輝かせる。


 帰り道、二人は来年の雪まつりの計画を立てながら歩いた。札幌での冬の思い出は、二人の心に深く刻まれていくようだった。そして、これからも四季折々の新しい体験が、二人を待っているのだった。

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