第5章:「さっぽろ夏まつり」

 7月下旬、札幌の街は夏まつりの熱気に包まれていた。葵と瑠璃は、すすきの会場を訪れることにした。通りは色とりどりの装飾で彩られ、祭りの賑わいが街中に広がっている。


「すごい人だね」葵が驚いた様子で周りを見回す。


「ええ、みんな楽しそう」瑠璃も目を輝かせながら答えた。


 二人が歩を進めると、よさこいソーラン祭りの踊りが目に飛び込んできた。力強いリズムと華やかな衣装に、二人は思わず足を止めた。


 太鼓の音が心臓を震わせるように鳴り響き、踊り手たちの足さばきが地面を揺るがす。色鮮やかな衣装が宙を舞い、汗ばんだ顔に浮かぶ笑顔が観客を魅了する。その迫力に、葵と瑠璃は息を呑んだ。


「迫力があるわね」瑠璃が感嘆の声を上げる。


 踊りが一段落すると、地元のチームのメンバーが二人に声をかけてきた。


「お二人も踊ってみませんか?」


 葵と瑠璃は少し戸惑いながらも、興味津々な様子で踊りの簡単な動きを教わり始めた。


「1、2、3、はい!」


 メンバーの掛け声に合わせて、二人も必死に体を動かす。最初は戸惑いがちだった動きも、次第にリズムに乗ってきた。


「瑠璃、楽しいね!」葵が笑顔で言う。


「ええ、思ったより難しいけど面白いわ」瑠璃も楽しそうに応える。


 踊りの熱気に包まれ、二人の距離も自然と縮まっていく。手を取り合い、互いの目を見つめ合いながら踊る姿に、周りの人々も温かい視線を向けていた。


 汗ばむ肌と高鳴る鼓動。葵と瑠璃は踊りを通じて、互いの体温をより強く感じていた。瑠璃の艶やかな髪が風に揺れ、葵の逞しい腕が瑠璃をリードする。二人の動きが次第に一体化していき、まるで長年の踊り手のように息が合っていく。


 踊りが終わると、二人は少し息を切らしながらも達成感に満ちた表情を浮かべていた。


「ありがとうございました」葵と瑠璃が揃って言うと、チームのメンバーたちも笑顔で応えてくれた。


 祭りの熱気に包まれながら、二人は手を強く握り合った。この瞬間、札幌での新生活が本当に始まったように感じられた。


「これからも一緒に、いろんなことに挑戦していこうね」葵がつぶやく。


「うん、楽しみだわ」瑠璃が優しく微笑んだ。


 人ごみに紛れるようにして、二人は優しくキスを交わした。短い一瞬だったが、二人の心に深く刻まれる、甘美な思い出となった。


 夏の夜風が二人の頬をなでる中、葵と瑠璃は祭りの余韻を楽しみながら、ゆっくりと帰路についた。札幌の夏の夜は、二人の愛をより一層深めていくようだった。

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