第4章:「札幌のビアガーデン」
7月上旬、札幌の街は夏の装いを纏っていた。葵と瑠璃は、仕事帰りに大通公園のビアガーデンを訪れることにした。夕暮れ時の公園は、多くの人々で賑わっている。
「ここが噂の札幌ビアガーデンか」葵が感心したように周りを見回す。
「雰囲気がいいわね」瑠璃も嬉しそうに頷いた。
二人は席に着き、生ビールとジンギスカンを注文した。周りのテーブルからは楽しげな会話と笑い声が聞こえてくる。夏の夕暮れ時の心地よい風が、二人の頬をそっと撫でていく。
「こんばんは、隣いいですか?」中年の夫婦が声をかけてきた。
「どうぞ」葵と瑠璃は快く応じる。
会話が弾み、二人は地元の人々と交流を深めていく。札幌での生活の楽しさや、おすすめの場所など、様々な話題で盛り上がる。
「若いうちは、いろんなところに行ってみるといいよ。札幌は四季折々の魅力があるからね」夫婦の男性が優しく助言してくれた。
ビールが進むにつれ、瑠璃の頬が少し赤くなってきた。彼女は自然と葵に寄りかかる。葵はそっと腕を回し、瑠璃を支える。
「大丈夫?」葵が優しく尋ねる。
「うん、ちょっと酔っただけ」瑠璃が小さく微笑む。
瑠璃の柔らかな髪が葵の頬に触れ、かすかな花の香りが漂う。葵は瑠璃の温もりを感じながら、心臓の鼓動が少し早くなるのを感じた。瑠璃も葵の強い腕に抱かれ、安心感と共に胸の高鳴りを覚える。
夜が更けるにつれ、ビアガーデンの雰囲気はより一層魅力的になっていく。葵と瑠璃は名残惜しそうに席を立った。
「楽しかったね」葵が言う。
「うん、また来たいわ」瑠璃が応える。
ふたりは人目を避けるように、そっと優しくキスを交わした。夏の夜風が二人の頬を撫でる中、その短い瞬間は甘美な永遠のように感じられた。
帰り道、二人は手をつないで歩き始めた。札幌の夜景が二人を優しく包み込む。葵と瑠璃は、この新しい街での生活に少しずつ馴染んでいくことを実感していた。
「ねえ、葵」瑠璃が歩みを緩めて言った。「私、本当に幸せよ」
葵は瑠璃の手をそっと握り締め、優しく微笑んだ。「僕もだよ。瑠璃と一緒にいられて本当に幸せだ」
二人の影が街灯に照らされ、一つに溶け合っていく。札幌の夏の夜は、葵と瑠璃の愛をそっと見守るように、静かに更けていった。
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