第2章:「すすきののジンギスカン」

 ゴールデンウィークも終わりに近づいたある夜、葵と瑠璃は新しい職場の歓迎会で、すすきののジンギスカン店を訪れていた。店内は活気に満ち、羊肉を焼く香ばしい匂いが漂っている。二人は少し緊張した面持ちで席に着いた。


「瑠璃さん、札幌の生活はどうですか?」同僚の佐藤さんが声をかけてきた。


「はい、少しずつ慣れてきました。でも、まだまだ分からないことばかりで…」瑠璃が少し照れくさそうに答える。


「大丈夫、みんなで教えてあげるから」隣に座った先輩の山田さんが優しく微笑んだ。


 会話が弾む中、葵は瑠璃の表情を気にかけていた。瑠璃が羊肉が苦手だということを思い出し、そっと野菜を多めに焼いてあげる。


「ありがとう、葵」瑠璃が小さな声で感謝を述べた。


 地元の人々との会話を通じて、二人は札幌の食文化や生活について多くのことを学んでいく。ジンギスカンの由来や、美味しい食べ方のコツなど、話題は尽きない。


「実は私も、最初は羊肉の匂いが苦手でした」ベテラン社員の鈴木さんが瑠璃に向かって話しかけた。「でも、この味付けと野菜との相性を知ってから、大好きになりましたよ」


 瑠璃は少し勇気づけられた様子で、おそるおそる羊肉を口に運んだ。


「あら、意外と美味しいわ」瑠璃の素直な感想に、周りから笑い声が上がった。


 歓迎会が進むにつれ、葵と瑠璃の緊張も徐々に解けていった。二人は同僚たちと笑顔で会話を交わし、札幌での仕事の話や、おすすめの観光スポットなどの情報を熱心に聞いていた。


 瑠璃は、最初は苦手だった羊肉も、野菜と一緒に食べることで美味しく感じられるようになっていった。葵はそんな瑠璃の様子を見て、安心したように微笑んだ。


 歓迎会が終わり、二人で帰り道を歩いていると、同僚たちが後ろから二人を見つめていた。


「あの二人、本当に仲がいいわね」


「そうだね。きっとこれからも素敵な札幌生活を送れるよ」


 肩を寄せ合って歩く葵と瑠璃の後ろ姿に、同僚たちは温かい視線を送っていた。夜風が心地よく二人の頬をなでる中、葵と瑠璃は互いの温もりを感じながら歩を進めた。


「ねえ、葵」瑠璃が少し上気した頬で葵を見上げた。「今日は楽しかったわ」


「うん、僕も」葵が優しく微笑む。「これからもっと札幌のことを知っていけるね」


 二人は手を繋ぎ、新しい仲間たちとの思い出を胸に、アパートへの帰路を急いだ。札幌の夜景が二人を優しく包み込む中、葵と瑠璃の心には、この街での生活への期待が大きく膨らんでいった。

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