第6章:真夏の手作りアイス

 猛暑日の日曜日、昼下がりの葵と瑠璃の部屋は、エアコンの冷気が充満していた。それでも、じっとりとした暑さが肌に纏わりつく。二人は居間のソファーでだらりと横になっていた。


「ねえ、葵」瑠璃が突然体を起こした。「何か冷たいものが食べたいわ」


 葵も身を乗り出し、「そうだね。アイスクリームでも買いに行こうか?」と提案した。


 瑠璃は首を横に振る。「違うの。私たちで作ってみない? 手作りアイス」


 葵の目が輝いた。「それ、面白そうだね! やってみよう」


 二人は急いでスマートフォンを取り出し、手作りアイスのレシピを検索し始めた。いくつかのレシピを比較検討した後、シンプルなバニラアイスクリームを作ることに決めた。


「材料を確認しよう」葵が言った。「生クリーム、牛乳、砂糖……あと何かな?」


「バニラエッセンスも必要みたい」瑠璃が付け加えた。


 幸い、必要な材料はほとんど冷蔵庫にあった。足りないものは近所のコンビニエンスストアで買い足すことにした。


 準備が整うと、二人は台所に立った。葵がボウルに生クリームを入れ、瑠璃が泡立て器を手に取る。


「よーし、頑張るわよ」瑠璃が意気込む。


 瑠璃が生クリームを泡立て始めると、葵は牛乳と砂糖を別のボウルで混ぜ合わせる。二人で協力しながら、材料を少しずつ混ぜていく。


「あ、固まってきたみたい」瑠璃が嬉しそうに言う。


 葵はバニラエッセンスを数滴垂らし、「香りもいい感じだね」と微笑んだ。


 完成した生地を容器に移し、冷凍庫に入れる。「さて、固まるまで3時間くらいかかるみたいだね」葵が言った。


「待ち遠しいわ」瑠璃がため息をつく。


 アイスが固まるのを待つ間、二人は扇子を使いながら涼んでいた。


「ねえ、葵」瑠璃が言い出した。「子供の頃の夏の思い出、聞かせて」


 葵は少し考え込んでから話し始めた。「そうだなぁ……毎年、祖父母の家に行って、縁側で西瓜を食べたのを覚えているよ。あと、近所の子たちと花火をしたり、虫取りに行ったり」


「素敵ね」瑠璃が目を細める。「私は、毎年海に行くのが楽しみだったわ。波の音を聞きながら砂浜で寝転がるの、最高だったな」


 思い出話に花を咲かせているうちに、アイスを冷凍庫に入れてから3時間が経過した。


「さあ、できたかな?」葵が冷凍庫を開ける。


 二人で覗き込むと、見事に固まったアイスクリームが現れた。


「わあ、できてる!」瑠璃が歓声を上げる。


 慎重にアイスをすくい、それぞれの器に盛り付ける。二人で顔を見合わせ、同時にスプーンを口に運んだ。


「美味しい!」二人の声が重なる。


 予想以上の美味しさに、葵と瑠璃は喜びに満ちた表情を交わした。


「次は何味にしようか」葵が次の挑戦を考え始める。


「そうね……抹茶はどう?」瑠璃が提案した。


 二人はアイデアを出し合いながら、次のアイス作りの計画を立て始めた。


 夕方になり、残ったアイスを近所の子供たちにおすそ分けすることにした。子供たちの喜ぶ顔を見て、二人はさらに幸せな気分になった。


 夜、葵と瑠璃は一緒にお風呂に入った。湯船に浸かりながら、今日一日を振り返る。


「楽しかったね、今日は」葵がつぶやいた。


「うん、とても」瑠璃が答える。「こういう日々が続くといいな」


 葵は瑠璃を優しく抱きしめた。「きっと続くよ。僕たちがそう望む限り」


 お風呂から上がった後、二人は寄り添いながらベッドに横たわった。夏の夜の静けさの中、二人の寝息だけが静かに響いていた。明日への期待と、今日の幸せな思い出を胸に、葵と瑠璃は深い眠りについた。

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