一日の中で、一番目にしているものは、おそらく自分の手ではないか。


それは、何気なく視界に入ってくる。

手は日常的に、常に目の前にあるのだから。


……でもそんなこともないかもしれない。



僕は自分の手が、普通だと思っていた。

いや、自分の手が、普通だと思い込んでいた。

いや、思い込んでもいないくらい、この手しか知らなかった。


他の人の手を見た時に、あまりに綺麗でびっくりした。

その手は、部活でバレーをやってきた人の手だった。

彼の手を見て、僕は「女性の手のようだ」と思った。


しかし、本物の女性の手は、もっと綺麗だった。

小さく、細く、繊細で、白く透けるように美しかった。


その美しさは思わず、握り潰してしまいたくなるほどだった。

それと同時に僕は、この手を守らなければならないと思った。



だが、そんなことより、自分の手のみにくさが否応いやおうなしに際立った。

B型の僕は、ゴリラの手のようだ、と思った。


しかし、本当にゴリラのようかと聞かれれば、人間寄りの手ではある。

毛を剃って、クリームを塗ってみたが、余計に惨めになるだけだった。



知らない方が幸せなことも、この世の中には多いのだろう。

そして、それは意外と身近にあった。

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