おいしい

僕は、自分の感情がよく分からないことが多い。


なので、みんなの言うことが、信じられなかった。

あれが好きだ。あれが嫌いだ。あれが食べたい。


本当にそう思っているのだろうか。

僕はまだ、そんな気持ちになったことがない。



僕は日頃、コーヒーを飲まないが、個人社長のお手伝いに行くと毎回コンビニコーヒーを奢ってくれた。


コンビニは各社、力を入れているらしく、どれも安くておいしいことに驚いた。


その中で一社だけ断トツで、くさいコーヒーがあった。

くさいの表現が正しいか分からないが、どう?と聞かれたら僕は、くさいと答える。

そういう香りと味だった。


このくさいコーヒーは飲み比べなくても、どこのコンビニのものか、僕でも当てられる。


では、自分のお金でコーヒーを買うとなった時、僕はどこのコンビニでコーヒーを買うのか?


飲みやすいコーヒーがあるコンビニか、それとも、後味すっきりのコーヒーがあるコンビニか。


答えは、くさいコーヒーがあるコンビニだ。


僕は、このコーヒーが好きだということなのだろうか。



回転寿司に初めて行った時、何を食べればいいか決められず、全皿違う種類のものを食べていた。


あるとき、他にはない海老の個性に気がついた。

それは、シッポが残るということだ。


迷いは、なくなった。


その日から回転寿司に行ったら海老ばかりを食べるようになった。

僕の小皿には、海老のシッポが積み重なった。


他者から見たら、僕はよほどの海老好きと映るだろう。

しかし、実体はそうではない……と思っているが、真相はどうだろう。


僕は、海老が好きだということなのだろうか。



僕はまだ、自分の好きな食べ物が分からない。

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