第14幕 丸井コウダイ(2)
コウダイは、ふと気が付き、呼吸が出来ることに安堵する。自分は助かったのか?何故病院にいないのか、そんな事を考えているコウダイの目の前にヌルリと現れたピエロに、これが現実ではないんだという事を思い知らされる。
「…っ!はぁ、かっ!」
先程まで正常だった呼吸が乱れ、まるでもう一度火の中に突っ込まれたかのようになっているコウダイに、サヤカが近づき水を手渡した。
「これ、どうぞ。」
「っ!」
サヤカの手から掠め取るようにペットボトルを受け取ると、一息に飲み干してしまう。
彼女は思わず面食らってしまったが、火の中はきっと言葉に表せない程辛かったのだろうと、考え胸を痛めた。
「…ぷはっ!た、助かった…。ま、全く!なんなんだいここは!俺は火に巻かれて、それで…。どうやって助かったんだ!?」
「助かってなどおりませんよ。貴方は間違いなく死にました。」
お礼も言わずに捲し立てるコウダイにピエロは無情にも現実を突きつける。
「ハァ…?あんた何いってんだ?俺がここにこうしているのが何よりの証明じゃないか。」
その言葉を聞いてピエロは吹き出した。
「な、なんだよ!」
「生きてることを理由とするのに、やけどが無い事は理由にならないのですね?」
その言葉にコウダイは自分の身体を隅々までみるが、何処にも火傷らしい跡は見当たらなかった。
「ただでさえ、自業自得だと言うのに。実にくだらない。」
「自業自得…?」
サヤカはコウダイの最期は見届けたが、その真相については知らなかった為、純粋に質問を投げかける。
「まぁ、それは本人が一番わかっている事とは思いますがね。」
「な、何が言いたいんだよ!」
コウダイは思い当たる節があったのか、唾を撒き散らしながらピエロに迫る。
「お前に!俺の何がわかるんだよ!!」
「わかりますとも。くだらないストレス発散で大勢を殺した殺人鬼さん。」
「大勢を…殺した?」
その言葉に、コウダイは戸惑いを隠せない様子だった。
「えぇ。貴方がやった事が、どれほどの命を奪ったと思ってますか?」
「何いってんだよ…。俺は、誰もいない店にちょっと火を放っただけで—」
これには思わずピエロも面食らった。
これほどに先の読めない人間だとは、と。
「…貴方が亡くなった後の事も含めてアンコールして差し上げます。」
呆れたピエロはサヤカにパイプ椅子に座るよう促すと、指を鳴らした。
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