第41話 パンもチーズも切りましょう

ペーターが連れて来たお医者様はアンではなくて、ロッテンマイヤーさんを診察しました。


火傷はけっこう酷く、暫くは痛むだろう、もしかしたら熱も出るかもしれないから冷やしなさいと言われました。

火傷の跡が残らないように、毎日、朝と晩の2回は消毒して薬を塗ること、包帯を変えることを忘れないように、往診には時々きてくれるそうです。

お医者様は薬や包帯は後で取りにくるように 言われましたので、ペーターの役目になりました。

お医者様はまた他の家の病人のところへ行かなければならないと幌馬車に乗って行ってしまいました。


「あーびっくりしたな、もう。だってさ、アンの具合が悪いってさ、お医者様を連れてきたらロッテンマイヤーさんが火傷って言うんだもんな。どうなってんだ?ハイジ?」ペーター


「私もよくわかんないけど、アンは元気なの。

ロッテンマヤーさんはチーズを頭から垂らして踊ってたの。あのチーズはアツアツでトロリだったから頭に載せちゃいけないんだわ。

どうして?載せちゃたのかしら?

ね?どうしてなの?ロッテンマイヤーさん!」ハイジ


ハイジは天真爛漫な顔でロッテンマイヤーさんに詰め寄ります。


「アーデルハイド、、。」ロッテンマイヤーさんは、まさかこんな日が来るなんてと思いました。

ハイジに詰め寄られるなんて、、。


「そうね、ハイジの言う通りですわ。

一体全体、何が起こったのかくらいは

教えて頂きたいですわね。

今後の為にも。そうでしょう?ハンスさん?」

                 アン


「そうだね、これからの為にもロッテンマイヤーさんが辛くなければ話してもらえると

いいね。どうです?ロッテンマイヤーさん?」

                ハンス


「そうですわね、、。あたくしも良くわかりませんの。だから皆さんに聞いて頂いた方がいいと思いますわ。

朝の準備でお皿を並べて、黒パンを切ろうとしたら硬いのなんのって、、。

おじいさまみたいに片手でパンを持ち片手でナイフを滑らせようとしたら、挟まって動かないじゃありませんこと。

仕方ありませんから、テーブルにパンと刺さったナイフごとぶつけたら、、。

パンは空へ飛び去り、その振動でお皿やコップは落っこちるじゃありませんの。

パンは硬いせいで、変に割れてしまってるし。

これではいけないと焦りましたわ。

とにかくトロリチーズを載せれば何とかなると思いましたの。

おじいさまの作った丸いチーズの塊りの真ん中におじいさまのやってる通り長いフォークに刺しましたわ。

これも力が入りましたわね。

しかも重いことったらありませんのよ。

暖炉の火の中に入れたら、とろーーりとしてきたではありませんか!ぶくぶく泡も吹き出してきましたわ。

上出来ですわねと、長いフォークを天に向かって振り上げたら、ずるりとあたくしの頭に

落ちてくるじゃありませんの!

そこからは、覚えてませんわ。

熱すぎましたもの。」ロッテンマイヤー


皆んなは、なんてこった、いくら何でも

チーズを丸ごと火で溶かすなんて、、。

あれは、切ったチーズを炙るのに、、。


「あはははーー!

なーんて楽しい女性なんです!貴方は!

全く、ロッテンマイヤーさんと一緒にいると

ドキドキわくわくの連続ですね。」ハンス


アンはその高笑いに、ハンスさん!

あーた、昔の婚約者に似てるからって

受けてますけどね、笑えませんわよ!

と耳から湯気がピーと出るくらいに不機嫌でした。


さて、今回もやらかしたロッテンマイヤーさんですが、ハンスさんは何やら?

このふたりの運命はいかに。


それは次回のお話です。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る