第36話 アン、コソ泥になる

アンは蝋燭の灯のなかで、ハンスさんのリュックをわくわくしながら開けてみる。

良い子のみんなはダメよー。


「これは着替えね、おう!、くさい。洗ってあげなきゃ。靴下が出てーっオエッ、、、。

ハンスさん足が臭い人だったのね。

だめだわ、口で息をしなきゃ。

はーはー。

こっちはスケッチブック、鉛筆とかね。

絵を描くんだから当然ね。

歯ブラシ、石鹸、櫛、髭剃り、あららコロンまであるわ。

怪しいわね、マリラが言ってたわ、男がコロンなんて振りまいてるなんてロクなモンじゃねぇーって。

これは、証拠品として採用。

次は分厚い手帳。黒革の使い込まれた手帳だわ。ここに秘密が詰まっていそう。

ふふん。ハンスさん、油断したわね。」アン


アンは黒革の手帳のバンドを外しました。

そこには押し花のメッセージカードが

あちこちのページに挟んであった。

手帳の内容はほぼ仕事なんだろうと思う

予定が書き込まれていた。


「このメッセージカード、、。

愛するハンスへ。

今日はねサナトリウムに雪が舞い降りたの。雪の妖精がね、私に踊って見せてくれたの。貴方と見たいな。   エマより


愛するハンスへ。

あまり食欲が無かったの。でもね、ジャガイモのポタージュは美味しかったわ。

春のジャガイモは新鮮で若い味がしたの。

ハンス、貴方と一緒に食べたいと思ったわ。

         エマより


愛するハンスへ。

サナトリウムにも初夏がやってくるわね。

今日は体調もいいの。散歩をしたらね

日焼けしたわ。貴方がここに来る頃は

小麦色になっているかしら?

貴方と一緒に木々の中を歩きたい。

         エマより

これ、、、。

ハンスさんの恋人からのカードなんだわ。

サナトリウムで療養していたのね。ふたりは離れていたということね。」アン


アンは少し、後悔の気持ちが出てきたのでした。

ハンスさんをロマンス詐欺師と疑って、大切な思い出の品を勝手に読んでいる自分に。

しかし、アンはこんなロマンチックなメッセージカードを読む好奇心に蓋なんかできません。


「ハンスさんの恋人のエマさんは想像するに病弱だから色白で髪はこう横に束ねて肩から降ろしていて。白いネグリジェとガウンが似合う女性なんじゃないかしら。

季節のお花を押し花にしてメッセージカードを作るくらいの繊細な美少女。

あ〜、羨ましい、、。」アン

アンはため息まじりに呟きました。

手帳からぽろりと何かがおちました。


「あ、メッセージカードを落としてしまったわ。え、写真みたい。待って、暗いからよく見えないわ。きっとハンスさんの恋人に違いないわ。蝋燭の近くでよく見なきゃ。」アン


アンは写真を一旦胸に抱きしめてからゆっくりと蝋燭の光にあてました。

「、、、。

そんな事って、、、。

嘘だと言って下さい、おお、神よ。

私の信仰心を試されているのですかぁーっ!」 アン


さてと皆さん、アンは写真を見た訳ですよね?

何故にあんなに驚いたと思いますか?


ふふふ、それは、次のお話で。


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