第28話 ハンスさんの告白

ハンスさんは話出しました。


「私がね、大学生の頃にね、とても愛した人がいたんだ。

その頃の私は山登りと絵を描くのが好きでね

スイスのアルプスの山に登り、絵を描きたいとずっと思っていたんだ。

夏休暇にアンみたいにスイスに来たんだ。

フランクフルトとは違って、空が高くて

空気が澄んでいたんだ。

街のあちこちに出かけては絵を描いていたんだ。

ある風の強い日に帽子が舞って落ちてきたんだ。麦わらのつばが広くてピンク色のリボンが

ついていたっけ、、、。」

ハンスさんの両手は帽子を抱き抱えてるように

見えました。


「そこでエマに出会ったんだ。帽子の持ち主さ。長い黒髪を風になびかせて息を切らして

帽子を追いかけてきたエマを見て、私は

一瞬に恋をした。

エマはスイスに不案内な私にあちこちを見せてくれたり、パンとチーズとワインを持ってね。

川遊びをしたりしたんだ。

夏が終わる頃には、私達は将来を誓い合った。

大学を卒業して弁護士の資格もとり、エマの

ご両親にも許されて婚約する事になったんだ。」ハンス


ハンスさんは急に苦悩に満ちた表情を浮かべた。

「エマのご両親はね、婚約の日の為に

スイスの伝統の服を作ってくれたんだよ。

でもね、エマは病気になってね。それを着ることはできなかったんだ。」ハンス


アンは本当に驚きました。

ロッテンマイヤーさんの服を買ったお店のおばさんの話と同じだったからです。

ああ、ハンスさんがロッテんマンヤーさんを

見つめていたのは、そのせいだったのね。

アンは悲しくなりました。


「それからは、私は仕事にのめり込むことで

全てを忘れようと思ったんだ。

無理しすぎたのかな。倒れてね、お医者さまからフランクフルトを離れてゆっくり好きな事を

するように勧められたんだ。

どこに行こうか、、。

その時、私はちゃんとエマにさようならを

言えてない事に気がついたんだ。

今回の旅はね、エマにさようならを伝えたくて来たんだ。」ハンス


アンはハンスさんが、ちゃんと別れをして

今を生きて行こうとしているじゃないかと

思えました。


「ハンスさん、あのね、私がエマさんなら

やっぱり、ハンスさんに幸せになって欲しいって思うわ。忘れて欲しくはないけど。」アン


「そうだね、私もそう思うよ。

アン、話を聞いてくれてありがとう。

誰かにね、話てみたいと思っていたんだろうね。それが君でよかった。」ハンス


アンはそうよね、こう言う話はあんぽんなハイジや食い気しかないペーターや朴念仁のおじいさんじゃダメよ。

やっぱり、想像の翼を背中に付けてる私じゃなきゃ。

うん?

そうよ、無くした恋は新しい恋!

そう決まってるわ。

新しい恋、、、。

あーーーっ!いたぁーー!

うふふ、良い事思いついたわ。


アンは不敵な笑い顔をしました。


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