第27話 アン、ハンスさんに話す

ハンスさんは、アンの瞳を覗き込みました。

この子はどういう子なんだろう。

ただの噂好きの少女なら話したくは無い。

しかし、この澄んだ瞳には真っ直ぐな好奇心が

見えるようだ。


「ねぇ、私の自己紹介もするけど、アンの事も教えてくれないかな?

お互いを知るって言っただろう?ならアンの事も知る権利が私にはあるよね?」ハンス


アンは確かにそうだわと思いました。

私には何も隠す事なんてないもの。

アンはハンスさんの申し出を承諾しました。


スゥーと息を吸って吐くとアンは話始めました。

一歳の頃に母親が亡くなったこと、

父親のことはわからないこと。

そこから施設で暮らしたこと。

赤毛でそばかすだらけの痩せっぽちの子は養子の貰い手がなかったこと。

たまにあっても、それは下働きをする為とか子守をさせる為とかであって、そこの家の子供になると言うことではなかったこと。

おしゃべりと空想のせいで、結局は施設に返されたこと。

十一歳の時に、アボンリーのマシューとマリラの所へ行ったこと。

マシュー達が野良仕事の手伝いができる男の子が欲しかったのを知って、また施設に追い返されるのかと悲しかったこと。

でも、マリラが家に残してくれたこと。

マシューは優しくて、口癖は、ああ、そうじゃのうだと言う事。

マリラは厳しいけれど愛情を感じさせてくれること。

学校にも通わせてくれて、ダイアナと言う

心の友ができたこと。

ギルバートの事が気になる事。 

今の幸せがずっと続いて欲しいと願っていること。

一気に話しました。


ハンスさんは、何も言わずにその話を聞いてくれました。

「アン、君は他の人より色んな経験をしたんだね。辛いことも多かったんだろうね。

それはね、きっとアンを成長させてくれたと思うよ。それに、マリラさんやマシューさんは

君を離したりしないよ。

私はそう思うんだ。」ハンス


ハンスさんの言葉でアンは思わず涙を流しました。

ハンスさんは思いました。

きっと、アンは沢山の出来事を胸の中にしまっていたんだろう。

誰かに話してしまいたいと思っていたんだね。

だから、話したらほっとして涙が溢れたんだろうと。

私も同じだ。

あの時の事を誰かに話したい、ずっと

そう思いながら隠してきた。

今、アンに全てを話してみたい。


ハンスさんは目を閉じて、アンのように

深く息を吸って吐きました。




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