第23話 ハンスさん登場

店主のおばさんはアンの腕を引っ張ると

ロッテンマイヤーさんには聞こえないように

話出しました。


「あれはね、スイスの大金持ちのお嬢さんの為に父親が一流の仕立て屋と刺繍職人に作らせた物なんだよ。

お嬢さんが18歳になった時にさ、幼馴染の男の人と婚約する事になったのらしいよ。

それで、一年も前から布やら刺繍糸やらを色んな国から取り寄せて準備したそうだよ。

ところが、そのお嬢さんは病気になっちまったんだ。そしてね、あの服が出来上がる少し前に亡くなったんだとさ。

父親は嘆き悲しみ、もう見たくないと言って売りに出したのさ。

ところがあの服を着ると、不幸になるんだそうさね。それで、あたしのところへ流れ流れてやってきたのさ。

いやさ、これは噂話だよ。あたしゃそんな事は起きないと思ってるのさ。

あ、そうそう。これをおまけにあげようね。

黒水晶のペンダントだよ。厄災から身を守ってくれるから。あたしからのプレゼントだよ。」店主


「ねぇ、おばさん、そのペンダントもあの服について来てたんでしょう?

ふふふ、何だか神秘的ね。

ああ、ゾクゾクしちゃうわ、、、。」アン


と言うことで、アンは黒水晶のペンダントもロッテンマイヤーさんに付けてあげました。


帰ろうと歩いていると、一人の旅の人が声を掛けてきました。


「お嬢さん方、私は絵を描きたくてやって来たんですが、山の上で泊まれるところはありませんか?」旅の人


「私達も知り合いのところでご厄介になっているんですのよ。

山には宿などは無いと思いますわ。」アン


「そうですか。

テントを持っているから、それを張れる場所はありませんか?」旅の人


アンは考えました。

ハイジの家の前ならテントくらいは張れるわ。

きっとおじいさんもハイジも歓迎してくださるわ。なんたってハイジは困った人を見過ごしておける子じゃないもの。


「あのう、私達がお世話になっている

ところの家の辺りならテントが張れますわ。

きっと。」アン


三人は山へ歩きだしました。

「自己紹介もしてませんでしたね。

僕はハンスと言います。普段は貿易の仕事をしています。絵は趣味なんですよ。

あのう、、、。そちらのお嬢さん、とても

服、似合ってますね。」ハンス


「ああ、この方はフランクフルトから来てる

ロッテンマイヤーさんなんですよ。

さっき、私が選んで、髪も整えましたの。

ね、似合ってますよね?」アン


「ええ、とてもお似合いですよ、、。」ハンス


「まあ、お恥ずかしいですわ。

あたくし、いい歳をしてと思ったりしましたの。ですが、アンさんのお陰で普段の自分を

捨ててみようと決めましたの。」ロッテンマイヤー


アンはハンスさんがロッテンマイヤーさんを

見つめる瞳が少し翳りがあるのを感じました。

なに?

ハンスさん、何かありそうだわ。

これは、何がなんでも解き明かさないと

私に与えられた使命に違いないもの。

と、またしても悪い癖が出てしまいました。


こりぁ、てぇへんです。





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