第5話
睡眠がいらないなんて本当に便利な身体だよな。
装備を整えたあと、俺は各フロアごとの部屋の配置や隠れ場所を把握した。やはり侵入者を倒すには死角の多いトイレや、柱が有効になる。それに夜目が聞くため電気も不要、これで闇討ちも可能になった。
「さて、スキルの検証でもするか」
徘徊しているゾンビを引っ張り、そこら辺に落ちていたガムテープでグルグル巻きにして、固定する。これが生きている人間の女性なら変な気持ちにもなったが、中年のおじさんのゾンビ相手に特に何も思わなかった。
手のひらを向ける。ゾンビはぼんやりと虚空を見つめている。
「パラライズ」
闇に閃光が走る。一瞬だけ明るくなったと思うと、ゾンビは痙攣し始め崩れ落ちた。かなり強い力なのか、ガムテープが切れてしまった。陸に打ち上げられた魚の様に震えるゾンビ、10秒ほど経過したタイミングで震えは止まった。
「レベル1は10秒くらいか。熟練度をあげて、レベルがあがれば、もっと伸びたりするんだろうな。パラライズ」
再び、ゾンビが震える。ひとりを相手にし続けても効率悪いから、どっかに集めてまとめてスキルを使用した方が早いかもしれない。
俺は記憶をたどり、ナイロン製の紐を見つける。装備を探していたときに、関係ないものは足元に捨てていたため、見つけるのに少し時間がかかってしまった。
「あのおっさんゾンビ以外にもいたかな」
うめき声を辿り、ゾンビを見つけては首に紐を巻き付けていく。さすが大企業の物流倉庫なだけはあり、様々な年代の従業員がいた。なかには若い女の子のゾンビもいて、ちょっと興奮する。
この光景は、変なプレイをしている人に見えるかもしれない。首と両手を縛り歩かせている。ちょうど10人になるまで探していたため、片手ずつ5本の紐が伸びている。
「よし、あとは柱にいい感じに巻き付けて……おい、あんまり引っ付くな」
最初のおっさんゾンビと若い女の子のゾンビが至近距離にいたため少し離す。その拍子に身体に触ってしまった。かなり柔らかい。何処とは言わないが。
「ふぅ……。じゃ試すか。パラライズ、パラライズ、パラライズ……」
発動するたびにチカッと光るのが鬱陶しい。そこさえ慣れてしまえば作業のようなものだった。真っ暗なフロアにうめき声がこだまする。夜が明ける頃には、レベル1から2へと上がっていた。
名前:月城 薫
状態:ゾンビ
スキル
人化:Lv1
麻痺(パラライズ):Lv2
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