第6話

「あれ、こいつら、ピクリともしなくなったぞ」


 無心でスキルを使用していたため気づけなかった。見れば、半数のゾンビは床に倒れたまま、うめき声さえあげなくなっている。どうやら、死んでしまったらしい。ゾンビに対して死んでしまったという表現が正しいのかわからないが、動かなくなったことは確かだった。


 レベルが上昇してから、効果時間が倍に増えた。いまでは20秒ほど震えっぱなしになっている。この効果時間の間に重ねても熟練度が上がるのかどうか、いまいちわからなかったため、一応終わるのを待っていたが、これでは効率があまりに悪い。


「はぁ……また連れてくるか」


 倒れているゾンビを邪魔にならない場所に運ぶ。紐は十分にあるため、今度は別のフロアからも引っ張ってくることにした。


「階段があることをすっかり忘れてた」


 集めたゾンビを蹴り落とす。打ち所が悪かったのか、歩けなくなったものや、動かなくなってしまったのもあり、3分の1はそこで捨てていくしかなかった。


「ま、まだまだ在庫はあるしな」


 感覚がマヒしてきたのかもしれない。いや、もう物としか思えない。女の子のゾンビには優しくしようと思う気持ちは少しはあるけれど、それでも多少の差でしかなかった。


「さて、お友達を一杯連れてきたよっと」


 同じ要領で柱に繋いでいく。もともといたゾンビ達が俺を見て少し恐れているような、ビクビクしているような気がした。


「気のせいか。ゾンビに感情なんてあるわけないしね。麻痺しすぎて、なにもされてないのに震える身体に調教されてしまったのかもしれないし。では、気を取り直して、やりますか。今度は全員動かなくなるまで、みっちりやり続けるぞ。パラライズ……」


 時間の感覚も忘れ、機械の様にパラライズと言いながら、スキルを使用し続けたところ、意識を失っていた。どうやら、使用回数の制限があるのか、それとも脳の処理の問題なのか、立ったまま眠っていたらしい。周りを見渡せば、どのゾンビも倒れて動かなくなっている。スキルのレベル自体は上がっていなかったが、どうやら別のスキルを覚えたようだった。


『眠り(スリープ):Lv1 対象に、眠りの効果を与える。レベルの上昇に伴い、対象範囲が変動する。ゾンビには使用不可』


 ゾンビには使用できないということは生きている人間を相手に熟練度を稼ぐしかない。となると、やることは変わらないな。


名前:月城 薫

状態:ゾンビ

スキル

人化:Lv1

麻痺(パラライズ):Lv2

眠り(スリープ):Lv1

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