第3話

 はたから見ればおかしなゾンビと思われてもおかしくないだろう。虚空に向かってなにかを操作しているように両腕を動かしているからだ。


 まず気になっていた、状態:ゾンビを押してみる。


『現在の状態はゾンビです』


 ありがたいことに、フルボイスだ。あの中性的な声が聞こえる。ただし、詳細の割には見ればわかることしか教えてもらえなかった。


「ゾンビってことは、ほかのゾンビには襲われないってことだよな。近くにゾンビはいるのに、こっちに向かってこないってことはそういうことなんだろう」


 そのまま、HPとMPに触れてみるが、どちらもよくあるものだった。HPが0になれば、今度は本当に死んでしまい、MPが0になればスキルが使えなくなる。MPについては、時間の経過に伴い、自動的に回復するとのこと。


『吸収:ゾンビ状態の場合、人間を捕食することにより経験値を取得。人間状態の場合は、ゾンビを殺害することにより経験値を取得。HP、MPの回復効果、一定の経験値の上昇に伴い、最大値も上昇』


『各スキルのレベル上昇については熟練度が影響されます。スキルの使用にはMPを使用します。』


「人間を捕食する?食べるってことか、ここにきて急にカニバリズムかよ」


『人化:MP不要で一定期間、人間に戻ることが可能。レベル1は1時間のみ。再使用には24時間のクールタイムが発生』


「時間に制限はあるものの人に戻れるのか、かなり有用なスキルだな。ただタイミングを間違えたらゾンビに食い殺される可能性があるってところかな。で、最後に、麻痺か」


『麻痺(パラライズ):対象に30秒間、麻痺の効果を与える。レベルの上昇に伴い、対象範囲、効果時間が変動する」


「これチートじゃね。ま、ゾンビになっても生きてることがすでにチートか。とりあえず、倉庫にいくか、ここに突っ立っててもしょうがないし」


 僕は持ってきていたリュックを探す。ゾンビたちに踏み付けにされて、倉庫の入り口近くに落ちていた。中から懐中電灯を取り出しリュックを背負い直す。倉庫内は電気が消えているため外と変わらず真っ暗になっていた。ただ、月明かりもないためより一層、暗くなっている。


 1Fは出荷場所になっているらしい。小型から大型までのトラックが並んでいる。轢かれたのかトラックの下敷きになったままのゾンビもいた。とりあえず照明のスイッチを探すために歩く。この建物自体が環境に配慮してあって、太陽光発電や地熱発電を駆使し、自家発電のみで運用されているとテレビCMで見たことがあった。



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