第2話
「お父さんもお母さんも居なくなっちゃった。いっぱい電話したけど友達も連絡つかないし、もしかしたら、死んでるかもしれない。それなら、私も、……もういいかなって。だから、置いていっていいよ。お兄さんの迷惑になりたくないし」
僕はそのとき正しく混乱していた。ゾンビが少しずつ近づいてきていて、早く逃げないといけないのに、いきなり座り込み始めるこの女の子の神経がわからない。最近の子はみんなこんな感じなのか。
「うーん、死ぬのは勝手なんだけど、いまここで死なれたらさ、ここまで頑張った僕が可哀想と思わない?だからさ、とりあえず一緒に逃げてくれる?君のためじゃなくて僕のためにさ。死ぬかどうかは助かってから考えてよ。それに、こんなゾンビになって、人様に迷惑をかけたいの?」
言いながら、少し後悔した。厳しすぎたかもしれない。でも寄り添ってあげられるほどの余裕はなかった。女の子は俯いている。小刻みに揺れている肩を見て、泣いているのかと思ったけど、僕を見上げる顔は笑っていた。赤く見えたのは夜空に燃える火のせいか、それともまた別の理由があったのか、あれから1年経った後に、この時のことを聞いても答えてもらえなかった。
『状態異常スキルを獲得しました。ゾンビ化進行中。対象仮死状態のため、肉体の再構成を実施』
聞き慣れない自動音声みたいな無機質な声が脳内に響いた。男性とも女性とも区別のつかない妙な声色をしている。
『対象の意識の有無を確認。ステータス表示位置の再調整。対象の覚醒まで残り3、2、1』
肺に空気が満たされていく。目を開いたと同時にむせてしまった。なにが起きたんだ。慌てて周りを見渡せば、すでに陽は落ちて暗闇が広がっている。
「俺は死んだはすじゃ」
身体を触ると痩せこけている。肋骨は浮き出て、まるで餓死寸前のようだった。それに手足は病的に細く、力をいれたら折れてしまいそうなほどだった。なんとか苦労しながらも、その場で立ちあがる。布切れが足元に落ちた。どうやら、ゾンビに食べられたのは間違いないらしい。でも起きる直前に聞いたあのステータスという言葉、あれはいったいどういう意味なのか。まさかアニメじゃあるまいし、スキルとか出てこないよな。いちおう、試してみるか。
「ステータスオープン」
名前:月城 薫
状態:ゾンビ
HP:100 MP:100
スキル
吸収
人化:Lv1
麻痺(パラライズ):Lv1
「なんだこれ。RPGゲームじゃあるまいし、って状態ゾンビって、俺いまゾンビってこと?」
確かにこの痩せこけた身体では、人間と言われるほうが違和感を覚える。どうやら、各項目の詳細を確認できるようになっているみたいで、俺は順番に押していった。
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