第11話 アルテ・ランドという男11
「アルテ・ランド村長。何があってそれほど慕われるようになったか知らないが、統制なき崇拝はやがて狂信に繋がるのだよ?」
「はい」
「それにより狂信された者自身も思い上がって、暴走を興した在地領主などは多くいる」
「はい」
「そうならないように、時には厳しくだねぇ……」
「はい……」
こんにちは。注意され中のアルテくんです。好きな食べ物はハンバーグとからあげ。嫌いなものはピーマンです。
(はぁ~あ。村人たちに慕われすぎて監査官二号さんから注意されちゃったや。かなし~)
叱られるって概念、スローライフじゃないんだよねぇ~。
俺は余裕のある大人だから真面目に聞いてあげてますけど、もしあと10文字以上俺を叱ったら消そうかな。
赴任される直前に下剤めっちゃ盛るよ。監査官チェンジセカンドね。さてどうなる?
「それとだねぇ村長よ」
! 9文字! 消す!
「いや……まぁ、ここまでにしておきましょうか。村人らから慕われていること自体は、評価ポイントですからね」
「!?」
俺の余裕がピークなところで、ヒラムさんは言葉を切った。お~ギリギリセーフだね~。
「む、何か安心感を感じるような……?」
「気のせいっすよ」
俺はにこやかに笑った。セーフラインが本能でわかる賢い人、嫌いじゃないよ。
(んー、でもこのヒト頭よさそうだけどお堅いし、これからも注意されると嫌だなぁ。やっぱ出会いは『なかったこと』にしようかな。そんで理想の監査官が来るまでガチャしようかなぁ)
俺がそんなことを考えていた時だ。ふいに空がきらめくや、
『このゴミ野郎アルテ・ランドォオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーッッッ!!!』
(うわぁ)
成層圏から赤い尾を纏いながら、ナイフくんが隣領(カス男爵のいる街)に落ちてきた。
ドゴォンッという墜落音がここまでわずかに響く。ヒラム監査官がビクッとした。
「むっ、隕石ですかな!?」
「そっすね」
うわぁ~ナイフくん数週間前に宇宙に捨てたのに戻ってきたよ。あいつすげぇな。
『人間性の最底辺ッッッ! 貴様は存在しちゃいけないバケモノだぁあああああ~~~~~~~……ッ!』
(元魔獣のナイフくんに言われたくねーよ)
まさか人外に人間性を批判される日が来るとは。失礼じゃんね。
(ヘイトスピーチ……俺は傷付いたので道徳的優位に立ちました。お前をトイレに流しても許されます)
『死ね~~~~~!!!!!』
さぁて、うざナイフくんはほっといて接待接待と。
「出会った日に流れ星が起きるとは運命的ですね~。俺とヒラム監査官の出会いに乾杯でもします?」
それくらいのもてなしは受け入れてくれないと逆に失礼だから消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す消す。
「いや、もてなしは結構」
消す!!!
「と言おうと思いましたが……ふむ、貴殿とは少し話したいですからな。ここはお招きに応じましょう」
!?
「お、おぉよかった(ヒラムさんセーフ!)」
俺のスローライフ人生に存在できる資格を得たね!
俺は争いを嫌う優しい人間だから、俺と争いを起こさない人間だけで人生デッキ組みたいんだよねぇ~。
というわけで、
「村人たちよ、これより監査官殿らを村に招く! 決して失礼はないように!」
『はッッッッッ!』
一声かければ、老若男女全員が執事のようにザッと礼を取った。みんな慕ってくれてて嬉しいねー。
『ニンゲン共よ気付けぇえええええええーーーーーーッッッ! そいつはカスだぁあああああ~~~~~~! 内面はゴミだぁあああああああああああ!!!』
(ナイフくんうぜ~)
相変わらず意味わからん思念を飛ばしてくるナイフくんだ。
俺をゴミカス呼ばわりとかニンゲンを知らなさすぎるよねぇ。俺の周囲には俺を褒めてくれる人しかいないよ? つまり多数決でおかしいのはお前ってわけ。
やっぱ幼稚園も通ってない魔獣は駄目だわ~。
人生経験値、な・さ・す・ぎ。
せめてホイ卒になってから話しかけて、どうぞ。
(常識を身につけてくださぁ~い)
『貴様が身につけろクソニンゲンッッッ!!!』
と男爵領からギャーギャー言ってくるナイフくん。お前戻ってきたら覚えておけよ?
◆ ◇ ◆
「うぅむ。規模こそ小さいが、よく機能した村だ」
「でしょう?」
招いた道すがら、ヒラムさんに村のメインストリートを見せていく。
「俺の家まで続く道に、あらゆる店舗を縦列させました。散歩気分でラクに買い物をしたいので」
そしたら商店街的な形になった。それ以上の意図はない。経営とかよくわからんじゃんね。
「む、ラクがしたいからか。それは少々独善的では……」
お、俺を批判するか? 目の前から消える? 頭いいからって俺の都合に悪いとバイバイだぞ?
「いや――なるほど……。村長が散歩気分で店を見て回る位置となれば、あこぎな商売ができないわけか。ほどほどのプレッシャーを与えて公正化を図るのだね?」
えっ。
「村が大きくなればやがて店舗配置も雑多になるだろうが、メインストリートの店舗が平均価格だと周知できていれば、騙される旅の客もいなくなるだろう。新興の村だからこそ出来る第一歩だな。いい策だ」
えっ、何言ってんのこの人……!?
「そして、村長宅の裏手には『痛みの森』が広がっている。裏手から侵入した魔獣に真っ先に襲撃されるのは貴殿の家だ」
えっあっ、そうじゃん!? 立地危ないじゃん!? ひっこそ!
「ふふふふ……つまりこの配置は、『我が身を盾にしてでも村人らの生活を守る』という意志の表われか。なるほどな」
いやちげーーんだけど!? なにがなるほどだよ!?
「村長様、そんなことを考えてたんですか!?」
「村長様ぁーーーーーーーーーッ!」
「おおぉおぉぉぉぉおっ、やはりアルテ・ランド様は現人神……! これは宗教を作らないと失礼では……?」
ヒラムの謎考察を聞いて、聞き耳建てていた村人らが沸き立った。勝手に盛り上がるな!
「フッ、アルテ村長。貴殿が慕われる理由がわかったよ。監査官として、この件については重要な評価ポイントとして上奏しておこう」
「アッハイ……」
な、なんだこのジジイ~~~~!? 頭よすぎて変な勘違いしてくるんだけどぉーーーー!?
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次回『第一章:アルテ・ランドという男』編終了! 常識人キャラだとわかってもらえた気がします。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました!
↓『面白い』『更新止めるんじゃねぇぞ』『こんな展開が見たい!』『これどういうこと?』『こんなキャラ出せ!』『更新止めるな!』『カス』
と思って頂けた方は、ぜひコメント&フォローと、
最新話からの
『☆☆☆』評価をしていただけると、
「書籍化の誘いが来る確率」が上がります!
特に、まだしたことない方はぜひよろしくお願い致します!!!
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