第5話「手口」

「今回の目的はあなたの保護です。ふみ出てきなさい。」

「…千鶴さん…。また悪い癖でてますよ。」


その合図と同時に、荒屋の入り口から、1人の青年が呆れた笑みを浮かべながら現れた。


「問題ありません。」

「いやいやっ!あるから言っているんでしょう⁉︎」

「文は相変わらず口うるさいですね。」

「そういう千鶴さんはまた生意気な口を…」

「あ、あの〜…。」

「あ、ごめんね。私は巽ヶ丘たつみがおかふみ。千鶴さんの部下だよ。」

「ブカ…?」


朔が見事なキョトン顔をしている。


「えーと、お手伝いをする友達?」

「なるほど!」


文と朔が需要のない会話を発展しようとしたところを、千鶴がコホンと一つ咳払いをした。


「まず、朔くんには月酔華げっすいかに所属してもらいます。」

「え……エ”⁉︎⁉︎⁉︎」


朔は目を丸く見開きながら、文と千鶴を交互に見る。


「げ、月酔華ってあの…?」

「どれを指しているかわかりませんが、そうです。」

「あの、道端に転がっている小石でも武器にしろとかいう…?」

「はい。」

「死ぬ時は必ず前に倒れて敵に一矢報いろっていうあの…?」

「はい。」

「隊員は衣食住に困らないけど、死ぬほど任務が厳しいっていうあの…?」

「はい。3食デザート付きです。」

「元国営警備隊一番隊隊長がリーダーの、あの…?」

「そうだよ。詳しいね。」

「そりゃァ有名ですよっ‼︎神無街の子供でも一度は憧れるぐらい‼︎‼︎ええええええええええええええええええええええええ…………。なんで俺なんかが…?」

「まあ理由は色々あるね。どうする千鶴さん?今話したほうが良いかな?」

「そうですね。では、とりあえず場所を変えましょう。」


あ、これ本部に連れてって返さない気だ、と文は察し苦笑いを浮かべた。

獰猛な肉食獣の瞳がきらりと怪しく光ったように見えた。

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