第1部:異能戦争

第1章:入隊試験

第4話「尋問」


 朔は物心つく前から神無街で育った少年である。

彼の様なひ弱な少年が幼い頃から神無街ここで生き残ってきた理由は、生まれつき持っていた 異常に鋭い直感ともう一つ。


創造つくる異能力があったからだ。


想像つくる異能__それは、かつてこの世界を創造つくった創造神と同等にして、世界に一つだけの異能。


彼は幼い頃に、この異能力に目覚めて以来、ほぼ毎日、1日の食事のためにこの権能を使っていた。


「すみません、少しよろしいですか?」


襲撃の直後、緊張の残る荒屋に腹の傷を抑えながら千鶴が顔を出した。


「?大丈夫ですよ。もう刺客はいないです。私は強いので。」


尋常ではない量の汗と青白い顔をした朔は貧民街の出ということをも相まってミイラのように見えた。


「ッはい、大丈夫ッス。」


言葉とは裏腹に必死に作った笑顔は引き攣っている。


明らかに襲撃前とは様子が違う朔に千鶴は違和感を覚えつつも、彼女が彼に出会った時から気になっていたことを問うた。


「…朔くんは異能力者ですよね?」

「……え、なん、で?」

「瞳が、赫いです。」

「ッ!!」


瞳、眸、睛。異能力者がその能力を使用しているときは瞳が赫く輝く。

創造神の落とし子の瞳は今まさにその能力を示していた。


「そ、そうッスね。確かに、俺は、異能があります。」

「そうですか。では話してください。」

「へ…?何を…?」

「あなたの異能についてです。」


まっすぐと朔を見据える少女の瞳は、明らかにそれまでの微睡の中にいるような溢れるような黄金色の瞳ではなく、獲物を見据えた野獣ケモノの眸だった。


創造。最も単純にして特異的な異能。朔は自身の能力の危険さにどこまで気がついているのだろうか。


心の中で千鶴は思う。


彼女が神無街ここに来た理由は一つ。それは刺客と同じく創造るつく子供を捕らえる保護するためだ。


「お、俺の異能ッスか…?」

「はい。」

「なんで、そんなことを。」

「いえ、ただの興味本位です。」

「そ、そういえば、あなたは何ていう名前なんスか⁉︎」

「…飯塚千鶴いいづかちづるです。」

「へ、へぇ〜…。そういえば、俺の名前は朔って言ってぇ〜…。あ、腹の傷はもうッ大丈夫なんスか?あはは〜」

「問題ありません。異能について語りにくいのなら私が当てて差し上げましょうか?」

「え…?」

「貴方の異能力は創造でしょう?」


__飯塚千鶴はせっかちな少女である。


「ッ⁉︎」

「な、んで…。」

「今回の目的はあなたの保護です。ふみ出てきなさい。」


その合図と同時に、荒屋の入り口から、1人の龍人が呆れた笑みを浮かべながら現れた。

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